A定食と処刑台
配達中にドライブスルーを利用するのはやめましょうというお達しがあったので珍しく社食を利用したら600円で満足な定食が食えるので理由がなければ昼は社食を使うことにする。野菜も摂れるしね。ドライブスルーの件だけど、誰がそんなことをやってるのか知らんが業務中にそんなことするやつがいるとは驚いた。おれの業務中に行くのは牛丼屋や愛しのなか卯や中華料理屋や丸亀製麺やラーメン屋だけだし、ドライブスルーなんて使ったことがない。全く常識のない奴ばかりだ。仕事なんだからそこは切り替えようや。
職場のはなくそじじいが事故を起こした件の続き。
配達に勤しむ最中、事故を起こすとかなりまずい。他所はわからないがうちは会社としての処理に加えて本社からなんか偉そうなことだけ言って具体性の全くない変なジジイが来たり指導員とかいう人間の屑ポケモンが来たり事故を起こした人は事故事例研究会と銘打った晒し台で死のダンスを踊らなければならない。ちなみに直近でもう2回死のダンスを観たのでうんざりしていた。一応今では馘首はタブーなのでおちんぎんの低い業務に回されたりってこともある。当然だ、物損とはいえ死亡事故なんて起こしたらガチシャレにならない。
昼過ぎから死のダンス開演と聞いたので666666本の触手を器用に使い重油まみれの巨体を引き摺り着席した。
今回の主役、めっっっっっちゃ嫌われてるおじさんの登場だ。ニタニタ笑いを浮かべ、身体をグラグラ揺らせ、断頭台を登る。ものすごい小さい声で、「ホンジツハオイソガシイナカ……」と結婚式のテンプレを話し始めた。シンプルに聴こえねー。ボソボソ声のまま事故当時の状況を説明する。突如、
「声が小さくて聞こえません」
我が師匠、刺す。師匠は最初この事故ジジイに仕事を教えていたがあまりのポンコツ、あまりの愚鈍、あまりの文句、あまりの口答えに業を煮やして教育を課長にぶん投げたのだ。実際その頃の師匠はバチくそ不機嫌だったのでおれの心臓にも悪かった。師匠は「あいつは必ず問題を起こす」と言ってたが、その通りだ。そもそもこの事故の前にも頻繁にミスりまくってたし、今回も物損事故でまだよかったのだ。
「ア、スイマセ……」とボソッたのち、状況説明を始める。配達先に車を停める。車は路肩に寄せず何故か道路のど真ん中。配達を終えて車に乗り込む。事務作業と称して3分微動だにせず。どんつきではないのにその道をどんつきと勘違いしたじじいはルームミラーのみを確認してバック開始。後ろで追い越すに追い越せずルームミラーに映らない位置で立ち往生していた車にばちこーん☆
「……トイウコトデス」
一瞬、空調の音しか聞こえなくなった。その場のじじい以外全員がドン引きしたのだ。ツッコミどころが多すぎてどこから処理したらいいのか分からない。
「ナニカシツモンハアリマスカ……」
「何故路肩に停めなかったんですか?そもそも3分も何してたんですか?地図があるのに何故どんつきだと勘違いしたんですか?何故ルームミラーだけしか確認してないのに安全だと判断してバックできたんですか?」
師匠がデビル蝶のように舞いデモン蜂のように刺す。半角カナが面倒なので代わりにおれ(かわいい)が説明すると、左側に寄せて停めなかったのは左のスライドドアから荷物を取り出したかったかららしい。運転席が右なので配達する荷物は普通右に寄せる。重たいのは後ろ、とかそんな感じだ。1番遠い左スライドドアから荷物を取り出すという、もうこの時点でセンスがない。3分も何をしてたかというと配達証を数えたり仕舞ったり次の配達先を確認してたらしい。3分も。どんつきだと勘違いしたのはよく見てなかったかららしい。3分はなんだったのか。ルームミラーしか確認しなかったのは不手際らしい。サイドミラーすら確認しないのは新しい。人ならどうなっていたか。
その後、どっかから来た偉い人がクソの役にも立たないご高説を垂れてきた。この人はまだ勤続3ヶ月で……とか言ってたが、勤続3ヶ月であることとバック時の基本確認動作を疎かにすることにはなんの関連性もない。その後みんなで支え合ってとか言ってたがこんなやばいじじいを一方的に支えてた結果がこれなのである。
この日、職場の雰囲気を4文字で表すなら「うんざり」であった。おれが考えてたのは「きんたま」だった。
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