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クニカリームケロッコ


豚バラチャーハン

高校時代の旧友らと中華屋でやりたい放題やった。メンバーはグ(フリーの酪農家、インテリマッチョ、ク○ニとべろちゅーが大好き)、童貞(童貞、今回は彼の召集により集まった)、おれ(超古代民族グロンギの首領)。グとおれは割と家が近いので時々飯を食いに行ってたが童貞は童貞で家が童貞にあるので童貞でなかなか会えなかった。久しぶりなのは彼だけだ。

おれはバイクで、彼らは軽自動車でやってきた。ヘルメットを脱ぐとおれのえげつない刈り上げに驚いていた。残った髪は束ねているので本当にガラが悪く見える。グは相変わらず坊主で、童貞も変わらず童貞ヘアだった。

グ「オメーらおれのお土産使ってくれてんじゃんおー↑↑↑!?!!?(hiA)なあ……」

おれはグのベトナム土産のドッグタグを、童貞はベトナム人民軍のシャツを着ていた。もらったアクセサリーなんかをつけていくとくれた人は喜ぶっていう当たり前のことを実感した。おれは「普段からつけてるぜ?バイクに乗る時は常に、な……」と囁くと、大喜んでいた。童貞はアルカイックスマイルを浮かべていた。ちなみにグはそのベトナム旅行で1週間、9回風俗を利用し一度も射精せずひたすらにク○ニとべろちゅーに明け暮れていた。咽頭癌で4ぬのに334万賭けている。よく本を読むし知見も智惠も体力もあるので尊敬しているが、その……舌絡みのわいせつ行為関係は本当にドン引きする。舌が本体なのだろうか?バイオ5のボスみたいに口に手榴弾を投げ込んだら楽に倒せる敵なのかも。

「実は……」

実はと童貞が口を開いた。高校の頃、通い慣れた道路の脇で。おれは彼による招集であること自体を訝しんでいた。だいたい集まろうと言うのはおれかグであったからだ。もう1人の旧友、カの結婚式さえ欠席した彼の呼び寄せはただ事ではないと察していたのだ。

おれは口角にわずかな力みを感じた。それは不愉快な、ある予想をしていたためだ。彼がわざわざ我らを呼び寄せてまでしたい発表。童貞の、彼が。

彼女ができたのではないか。万年童貞、激烈オタクの彼に。かたや独り身の我々。グは別れて3年、おれは別れて1年、不倫がどうやら空中分解して3ヶ月。童貞に彼女ができたとなれば青天の霹靂だ。いや、そうでなければと思えば思うほどこのぐずついた曇天がおれの予感を映す鏡のように思えて仕方なかった。

童貞が言葉を吐くためにすっと息を吸った。おれはなにか断頭台を登るような心持ちでいた。

童貞「31歳の誕生日に実家へ帰ったんだよ。両親と妹と弟が祝ってくれてさ。31歳ってことでサーティワンのケーキ……ピカチュウのやつを買って楽しく過ごしてたんだ。夜中に寝ようとしたら妹が来てさ、言ったんだよ」

「お母さんたち離婚するって……」

おれの中にあった杞憂と疑念がすっかり吹き飛び、彼の境遇の悲惨さによるカタルシスを伴って強烈な快感ばかりが脳内を走り抜けた。つまり下品な大笑いを上げた。杞憂、杞憂。愉快、愉快。ああ、痛快じゃ。

聞くところによれば両親の関係が悪く、実家にいた妹と弟は離婚も時間の問題だと思っていたようだ。いわゆる熟年離婚というやつだ。わざわざこれだけ連れ添ってきて今更別れたいなら余程のことなのだろう。仕方が無いが、童貞の危惧してるのはダウン症を抱える弟のことだ。近くにデイサービスがなければ生きていくのが難しい彼を慮(おもんぱか)っていたのだ。とても優しいと感心する、だから童貞なのだ。

開店時間を迎えて、カラカラと扉を開けるとカタコトの日本語が聞こえた。

豚バラチャーハン、トマトの卵炒め、チンジャオロース、酢豚。昔話に花を咲かせて、これからのことを話し合ったり、仕事のことを語った。彼女関係は全く話題に皆無だった。一抜けさたカがここにはいなかった。

相も変わらず童貞は童貞街道まっしぐらだ。少し驚いたのは仕事や人間関係に揉まれてコミュニケーション能力が向上していたことだ。自分の好きなアニメや漫画のことを話しすぎないということを覚えていたのもよかった。グはまあ、別にいいか。グとおれは次男で、童貞だけが長男だからどうにも理解できない立場の葛藤が見て取れた。友であればこそそのどれも分かち合いたいと思っていたが、そいつの痛みはそいつのもので、分けてもらう手段がわからなかった。だからせめて知りたがった。知る手段さえわからない。

おれは複数人と話してる時に自分のことを話すのが苦手だったので思い切って最近廃道や隧道や廃墟のたぐいを好んでるのを告白した。童貞にもそういう儚さを重んじる心があったようで同意してくれた。グはなぜかそういうのが苦手だと言った。

クンニリングス愛好家「昔から廃墟とかって場所が怖いんだよ。端島、軍艦島なんか絶対無理」

自分なりに彼の言うことを分析した結果、それは人の携えた無機質な無機物が、暖かな人の活用、活動によって活用されるのにそれを忘れて見捨てられ打ちひしがれてる姿が痛ましいんじゃないかと言った。おれにもそれはわかる。そこに抱く悲壮感ばかりではなく、なにか物悲しさとともに押し寄せる快感が名状しがたい破壊欲によるものだと思い知った。

誰も彼もがそうだとは思わないが、こと自分については廃墟なんかの人の造った無機物が誰にも見向きもされず朽ちていってることに抱く悦楽とは破壊欲にあるのだと感じる。自分を、人を、人の観念を、ぶっ壊してやりたいという欲望。だからそれらが雨に晒されて風に吹かれて虫に喰われて腐食していってるのが愉快でたまらないのだ。自罰的な理念はやはり刑罰に処されるのを見て初めて満たされる。炎上?懲役?失脚?還元され満たされる器とは極めてマゾヒスティックな醜い器だ。我を罰したまえ、しかし痛みは伴いたくはない、彼ぞ苦しみたまえ、終ぞ我は罪に飲まれん。そんな呪言が聞こえてきた。

つまり、グには自罰的な心が薄い。なにかを求む心には加算法であるか減算法であるかという差異がある。マゾヒスティックに、サディスティックに欲望を満たすかという違いだ。満たせば、満たされれば器は朽ちて錆びていく。錆びを磨き、瀉血するとは自傷行為だ。膿は流れる、その肌から。

行きで雨が止むって予報なのに帰りも雨が降っててめちゃくちゃムカついた。おれがこの惑星を排気ガスでぶっ56してやる。


Forget-me-not

水道料金を払ってたら先輩が配達してたので立ち会った。ちょっと自分にしてはないくらい丁寧に接客していた。おれはこの自分の見た目は若く見られがちだから割とフランクな敬語で話している。やっぱ被写体は話す言葉に倣う姿であるべきだと思う。接客の基本だけど。


伝丸

実家近くにもあった伝丸のラーメンを食べた。注文に関わるシステムを見てわかったがすき家やなか卯と同じゼンショーグループの傘下らしい。味の方は可もなく不可もなく……。24時間やってるのは魅力か。


突然の中華

外食が多すぎる。朝食以外全部外食なので出費はだいたい食費とガソリン代くらいのものだ。ただ、食事もバイクも人間の三大欲求を満たすのだからここをケチると確実に幸福度が下がる。

飲み物代もバカにならない。先日気温が34度を記録した日には午前、午後、夜の配達でペッドボトル4本分の水を飲み干した。常にシャワー後くらい汗が出てるので仕方ないが、そう考えると夏はエアコンなんかの電気代も相まって出費がかさむ。なんもよくない季節。カス!

嘘喰いを読んでたら休日が終わりました……。

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