つまり、そういうことだ⑱
人生における「最初の気付き」を私は憶えている。
これは「最初の記憶」より後である。
記憶というものを意識しはじめて、どれくらいが経過した頃かは分からない。
ある日、ショックを受けた。
自分が存在していることに気付いた瞬間だ。
「あっ、しまった」と思った。
どうしよう、自分がどこから来たのか分からない。気付いたら、生まれていた。ちゃんと憶えておこうと思っていたはずなのに。
気付いたときには、両親と一緒に食卓を囲んでいたのだ。
「僕、いつからここにおったん?」
母は笑顔で答える。