![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81491107/rectangle_large_type_2_cd5c65ffb1c8651fa67ab47e9cba4858.png?width=800)
Photo by
shiekasai
涙鉛筆(#毎週ショートショートnote)
ママ友の洋子さんに断捨離を勧められた。
「いいわよぉ、捨てるって」
溜め込んでいた紙袋から始めて、衣類、食器、子どものおもちゃからカラーボックスに至るまで、意を決してバッサリと処分したらしい。
「快感なのよ、とにかく。仕訳するたびに気持ち、軽くなるわよ。私これだけの過去に捕らわれてたんだーって気づくわよ。あなたもやったら?」
新しい恋人ができた洋子さんは、ネイルをキラキラさせて笑った。
彼女は仲の良い娘を持つシングルマザーだけれど、私は違う。
恋人時代のときめきなど、とうに失くした夫と思春期真っ盛りの息子からは、完全に家政婦扱いだ。
私は半ばヤケ気味に、断捨離を始めることにした。
先ずは押入から。
どうせ家族皆、不要な物ばかりのはずだしー
「あ…」
息子の使っていた筆箱が出てきた。
ちびた鉛筆が、5本。
小さな傷が幾つも刻まれた鉛筆を、そっと撫でた。
幼い息子の歯形が笑いかけてきて、涙がとまらなくなった。
私の断捨離は、そこで止まっている。
❬411字❭
しばらくお休みしてました。1000本記念のお題で復帰の予定が、遅れてしまいました。
時間許す限り、また楽しんでいきたいです(^-^)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?