穴の中の君に贈る (#毎週ショートショートnote)
「ーロバート?」
私の声はふわんと反響し、瞬く間に闇へ吸い込まれていく。
耳をすますと彼の静かな息づかいが聞こえた。
「ロバート、もう一度顔を見せてくれる?」
さっきより少し大きな声で叫ぶ。
暫くして、彼が歩いて来た。
「引きこもりっていうんでしょ?こういう暮らし」
「まあ、そうも言えるかもね」
私は彼の肩にのったゴミを払いながら答えた。
眼が合う。穏やかな、秋の森みたいなブラウンの瞳。
彼の半生を想う時、決まって泣いてしまう。
ロバートはクレバーで優しい青年だ