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大人になって読む「ズッコケ三人組」

#読書の秋2021の課題図書一覧の中に懐かしい本を見つけた。
ズッコケ三人組だ。
ズッコケ三人組シリーズとは、主人公であるハチベエ、ハカセ、モーちゃんの3人の小学6年生を中心に物語が展開される、那須正幹氏原作の児童文学。
そのシリーズの中でも一番私の印象に残っているのがうわさのズッコケ株式会社だ。

キャンペーンを機に久しぶりに棚の奥から引っ張り出して読むことにした。
いい大人が子ども向けの児童書を読むなんていかがなものか、という気持ちもないわけではなかったが…

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この本は。小学生にでもできる株式会社のつくりかた、資金のあつめかた、上手な経営のしかた、ガッポガッポともうけるやりかたなどを、わかりやすく、そしておもしろく書いたものである。
この一さつがあれば、きみも社長になれる!
引用…うわさのズッコケ株式会社:那須正幹先生からきみたちへのメッセージ

この一さつがあれば、きみも社長になれる!
魅力的なワードだ。当時はこの言葉に心躍ったことを今でも覚えている。
悲しいかな、大人になった今では「悪質な情報商材の宣伝か?」という感想しか出てこないが…
とにかく、メッセージの通りズッコケ三人組が資金集めに経営に奔走しながらガッポガッポと儲けていく、というのがこの物語の本筋である。

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小学生が株式会社の経営なんて…と思われるかもしれないが、ズッコケ三人組は子どもならではの行動力で問題を解決していく。
資金集めはクラスメイトから。株式の最小単位は100円。商品はスーパーの特売品のインスタントラーメンを仕入れ、近所の釣り場で売る。
資金集め→仕入れ→販売、プロセスの全てが子どもでもできそうなスケールではあるが、単なる遊びではない。
投資してくれた株主にはちゃんと100円の株券を(自宅のプリンタで)刷る。配当金も支払われるし、譲渡用の裏書まである本格的な株券だ。
クラスメイトを集めて株主総会も開催し、売上を株主に還元するか事業の拡大に投資するかの激論…立派な株式会社である。
読者層である子どもを置いてけぼりにしないスケールで大人でも唸らされる世界を描いてくれるのがズッコケ三人組シリーズの魅力だ。

もちろん、企業経営である以上常に順風満帆とはいかない。
釣りのシーズンが終わりこれまで主要顧客としてきた釣り人が激減。
捌ききれない在庫を大量に抱えてしまうズッコケ三人組。
当然株主総会では株主から厳しい追及が相次ぐ。
三人組は売掛金を回収するために走り回ることに…
厳しい追及をする株主はクラスメイト、売掛金は1,280円とやはりスケールは子どもだが、トラブルの内容は大人でも顔が青くなるものだ。
需要を読み間違えさばききれない大量の在庫を抱え倒産…なんて話は大人の世界でもあることだろう。
子ども向けではあるが子どもだましではない企業と経営のイロハが詰まっていて、改めてこの物語の完成度の高さに驚かされた。

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読み終わるころには「悪質な情報商材の宣伝か?」という感想は「確かに小学生でもできるかも」という感想に変わっていた。
大人の私がこれなのだから、当時の私や同じくこれを読んだ子どもたちは起業に胸を躍らされたはず。
そして大人になって改めて読んで気付いたのが、児童文学には子どものための大人の工夫が詰まっているということだ。
本作で言えば…
大人でも難しい起業と経営の基本。
大人も他人事ではない会社のトラブル。
そして大人でもよく分かっていないお金を稼ぐことの大変さ…
株式会社を子どものスケールに落とし込むことで、会社経営の苦労が子どもでも分かりやすくなっている。
大人でも難しいことを子どもに伝えられるような工夫が随所に凝らされているからこそ、大人に向けて背伸びをしたくなる子どもの胸を打つのだろう。
皆さんも、子どものころに読んだ本を改めて読みなおしてはいかがだろうか?
いい大人が子ども向けの児童書を読むなんていかがなものか…なんてつまらない心配は不要である。
当時のように胸を躍らされることはもちろん、大人になった今だからこそ気付けるその本に込められた工夫や思い、面白さがあるはずだ。

#読書の秋2021  #それいけズッコケ三人組

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