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【仕組みから考える】HKS EVC-Sのブースト圧設定方法

HKSから販売されているEVC-SはEVCシリーズの中で最もシンプルで安価なブーストコントローラーです。
私も愛用していますが、取り扱い説明書がイマイチわかりづらく、使い方を紹介しているネットの記事も間違っていることが多いので、ブーストを制御するEVCの仕組みと合わせて設定方法をご紹介します。

【ブーストコントローラーの仕組み】
ブーストコントローラーは、ブースト圧を直接制御することはできません。
タービンの動作を制御しているアクチュエータという部品があり、このアクチュエータの開閉を電子ソレノイドバルブEV(Electric Valve)で制御C(Control)することでブースト圧を設定しています。
EVC本体をアクチュエータに接続するのはそのためです。
アクチュエータにつながるEVCが開いている状態(ホースが抜けているような状態)では、ブースト圧をかけようとします。
アクチュエータにつながるEVCが閉じている状態(ホースが詰まっているような状態)では、タービンが仕事をしなくなるため、ブースト圧が掛からなくなります。

【EVCで設定できる項目とEVCの動作】
①オフセット値
ブースト圧がオーバーブースト値に達した時に、オフセット値で設定したバルブ開度になります。
例:
0%に設定すれば全閉
50%に設定すれば半開き
100%に設定すれば全開

②レスポンス値
ブースト圧がオーバーブースト値に達した時に、バルブ開度をどのくらいの速度でオフセット値に近づけるかをレスポンス値で設定します。

③オーバーブースト値
ブースト圧がいくつになったら制御を開始するかを設定するのがオーバーブースト値です。
オーバーブースト値に達するまでEVCは仕事をしませんので、オフセット値、レスポンス値はオーバーブースト値に至るまでのブースト圧の立ち上がりには影響しません。

④ワーニング値
ブースト圧がワーニング値に達すると、ドロップ値で設定したバルブ開度になります。

⑤ドロップ値
ブースト圧がワーニング値に達したときに、オフセット値の何%までバルブを閉じるか決めます。
例:
オフセット値を50%に設定してドロップ値を80%に設定すると、ブースト圧がワーニング値に達したときにバルブは40%の開度になります。

【ブースト圧の設定方法】
まずは、ブーストコントローラーで達成したい目標を決めましょう。
たとえば、目標ブースト圧を110kPaにして、オーバーシュートを120kPaまで許容するとしましょう。
目標ブースト圧が決まったら、次はブーストの立ち上がりを考えます。ここでは80kPaまでタービンの最大能力で立ち上がってほしいとします。
上記の条件で、仮に設定値を決めるとすると以下になります。

①オフセット値:0%
②レスポンス値:0%
③オーバーブースト値:80kPa
④ワーニング値:125kPa
⑤ドロップ値:100%

この状態でブーストをかけてみましょう。
そこで、出た不満を以下の要領で解決してセッティングを出していきます。

【理想のブーストに近づける設定】
①ブースト圧が目標より低い
目標としているブースト圧に達しない場合は、オフセット値を上げて、バルブが完全に閉じなくなるように設定します。または、レスポンス値を上げてバルブがゆっくりを閉じるようにしましょう。
オーバーブースト値の変更でもブースト圧を上げることができますが、次項で説明するハンチングの制御の幅が狭まってしまうためオススメしません。

②ハンチングしてしまい動きがギクシャクする場合
ハンチングが起こっている原因は、オフセット値が低すぎるまたは、レスポンス値が低すぎるためです。
オフセット値、レスポンス値が低すぎるとオーバーブースト値に達した瞬間ブースト圧をかけるのをやめるような制御となっているため、ハンチングが起こります。
オフセット値を上げてバルブの開閉を少し制限するか、レスポンス値を上げてバルブの開閉を遅くしてやる必要があります。

③オーバーシュートが大きすぎる
オーバーシュートがひどく、エンジンに負荷をかけてしまいそうな場合は、レスポンス値を下げましょう。
バルブの閉じる速度が速くなるので、オーバーブースト値に達した後にすぐブーストが抜けるような制御に近づきます。
それでもダメな場合は、オーバーブースト値を下げて調整を試みてください。

④ブースト圧が高すぎる
そもそもブースト圧が高くなりすぎてしまう場合は、オーバーブースト値を下げましょう。オフセット値とレスポンス値が0%でも、車両特性によってはオーバーシュートが大きく、すぐにブースト圧が抜けない場合があります。
また、強化アクチュエータを使用している場合、ブーストコントローラーで制御するのであれば強化アクチュエータは不要ですので、純正に戻すことをオススメします。

⑤ある一定からブースト圧が上がらない
配管のミスがなければ、多くの場合ブローオフバルブ(リサーキュレーションバルブ)からブースト圧が逃げている事が多いです。
あまり知られていませんが、ブローオブバルブは消耗品で、内部のバネがへたってブースト圧に負けてしまっている場合があります。
純正の新品に変えるだけでも改善する場合がありますが、コトスポーツの純正強化ブローオフバルブに交換したり、その他強化品に交換するのも良いでしょう。

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