変愛教室 8

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竹田さんが扉を開けて、入る。

入るといっても、もしかしたら中ではなくて外かもしれない。

わたしも続いて、入るもしくは出る。

とにかく、扉の向こうに行く。
扉の向こう側は、和室だった。

「入る」が正解だったようである。

天井の中央、つまり普通は蛍光灯がある位置に、半透明の、白いプラスチックケースが、蓋のように被さっている。

ニトリで売っている衣装ケースに似た見た目だが、おそらくネジのようにくるくる回して設置できる構造で、上部が円錐形をしていて、うっすらナットのような線が浮かび上がっている。

和室は、右手に障子がある。閉まっていて、外は見えない。
右手正面に、私の腰の高さくらいの、茶色い4段の引き出しがあり、取っ手に黒い金具がついている。

古ぼけていて、おそらく開け閉めのたびに、ガタガタと引っかかってしまいそうだ。

左正面が出入口で、部屋は和室だが、取っ手のついた、濃い茶色のドアだ。引き出しに比べると、新しそうに見えた。

部屋には、先の引き出ししか置かれていない。

それにしても、ここはどこなのだろうか。

私の家に、こんな部屋はなかったはずである。

竹田さんは、
「金魚」
と言った。

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