#90 東京都の財政その4(都債・基金)(2016/7/22)

東京都の財政を語るにあたって大切な財源として都債と基金があります。今日のざっくりは都債と基金についてです。

昨日のざっくりで触れたように都の財政は税収の増減に大きく影響し、税収は景気に大きく左右します。それでも安定的な都の運営ができるようにするために大きな役割を果たすのがこの都債と基金になります。

【都債】

都債は地方債の一種で原則として投資的経費(建設事業関係の経費)の一部に当てられます。2015年度の都債発行額は4495億円、都債残高は5兆1858億円(2014年)となっています。

・都債発行額 ざっくり4500億円(一般会計の6.5%)

・都債残高  5兆2000億円

発行額は鈴木都政時代の1993年度には1兆585億円と過去最高になり青島都政に変わってもそのトレンドは大きく変わらず、1999年までは9000億〜5000億円程度と大量に発行されていました。石原都政に変わり、「財政再建推進プラン」に従い管理と抑制が進められ、12年以降は1300億〜4000億程度の発行となっています。

都債の残高も1990年には2兆円ほどだったものが以後2014年まで右肩上がりで7兆円ほどまで増加。2016年時点では6兆円を少し切った水準に落ち着いています。財政赤字が解消し実質収支がバランスしている2008年以降は税収の増減に連動して発行額が変動していましたが、舛添知事に代わった2015年以降は税収が増えているにもかかわらず発行額が増加しています(オリンピックを想定しているのかもしれません。。。)

ちなみに現在の発行体としての東京都のスタンダード&プアーズの格付けはA+(安定的)です。

【基金】

基金は特定の目的のために資金を積み立てまたは運用される資金のことです。税収の増減が大きい東京都は財政の安定化を図るために財政に余裕がある時に積み立てその目的のために取り崩されています。2015年度末時点で38の基金あります。

基金の分類として「財源として活用可能な基金」というものがあります。財源が不足した際に該当する基金から補填します。(どの基金を財源として活用可能な基金に含めるか、その定義が自治体により異なりかなり曖昧なのですが。。。)

東京都の場合には財政調整基金、社会資本等整備基金、福祉先進都市実現基金など含め4基金がこれに当たります。(2013年までは「東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金」もその一つだったのですが、実施が決定し財源として活用可能な基金から外れました)。2016年の財源として活用可能な基金の残高は1兆1587億円となっています。

・財源として活用可能な基金残高 ざっくり1兆1600億円

財源として活用可能な基金残高はバブル期の平成元年には9575億円ほどありましたが、財政の悪化とともに減少し財政再建団体転落の危機に直面した1999年には869億円まで減少します。中でも財源不足に直接充てられる財政調整基金残高は10億円まで減少しました。(2015年時点で財政調整基金残高は6249億円。)

財政再建のめどがたった2005年には財源として活用可能な基金残高は4000億円を超え、2008年には1兆5743億まで増加(オリンピック・パラリンピック開催準備基金含む)、以後税収の増減に応じて積立・取り崩しが安定的に行われ現在に至っています。

2016年の東京都の財政規模は13兆円(一般会計7兆円、特別会計4.5兆円。公営企業2兆円ほど)。税収の増減が大きい時には1兆円規模で変動するので、都債や基金は大切な財源であることには間違いありません。

Source:

平成28年度(2016年度)東京都予算案 計数表

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/02/DATA/70q2a213.pdf

東京都の財政 平成28年4月

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/2804tozaisei.pdf

東京都の財政状況と都債(資料編) 平成28年5月 東京都財務局

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/bond/tosai_ir/ir/28irspring_date.pdf


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?