#95 東京都・石原都政の財政再建(2016/7/29)

今日のざっくりは都政を振り返り、ちょっと古いですが、石原都政の財政再建についてのざっくりです。

(とりあえず東京都ネタはこれが最後です。。。)

【財政再建団体転落の危機】

前年度決算の赤字比率(=実質収支赤字÷標準財政規模)が5%以上となると財政再建団体として地方財政再建促進特別措置法(再建法・現在は自治体財政健全化法が完全施行されたことにより再建法は廃止され、かつての財政再建団体は財政再生団体と呼ばれています。)に基づき財政再建計画を策定し総務大臣の同意を得る必要があります。

財政再建団体になると予算の調整や緊急時の予算対応なども国との調整が必要になり主体的な地方自治ができなくなるほか、投資的経費(公共事業など)の抑制や自治体独自の事業や手当などの廃止や各種団体への補助金などは削減せざるを得なくなります。

1960年ぐらいまでは割と多く288の自治体が財政再建団体になりましたが、近年は殆どなく、福岡県の赤池町(1992年度認定、2001年再建完了)と北海道の夕張市(2007年認定)の2例のみとなっています。

平成10年度(1998年)の実質赤字は1068億円ほど。昭和56年以来の18年ぶりに大きな赤字を出す見込で、実質収支比率は1998年▲3.1%になり、財政再建団体転落の危機に直面します。

平成10年度決算の状況

・税収    11年度には4兆500億円

      (ピークの平成3年度より8000億程度減少)

・都債依存度 ざっくり17%

・都債残高  ざっくり7兆円(平成3年ごろまでは1兆円台)

・都債償還  3000億円程度→平成15年度8600億円→その後も7000億円台で推移する見込み

・基金残高*  869億円  (平成元年には1兆円ほど)

 中でも財政不足に対応する目的の財政調整基金は10億円まで減少(現在は6249億円)

・高齢者の増加により福祉関係経費の増加が見込まれる

(*基金残高:財源として活用可能な基金の総額)

更に、一般会計の財源不足を補うために特別会計である中央卸売市場会計から神田市場用地の売却益2000億円を一般会計の財源にあてるという会計間の借金もしていました。

なかなか厳しい状況です。

【財政再建推進プラン】

平成11年度に青島知事から石原知事に変わり、財政再建推進プラン(2012年〜2015年)を策定します。(青島都知事時代にも財政再建計画が策定されていますが、十分な効果を発揮できずに終わっています)

大まかな再建プランの概要は

・給与関係費の削減    職員定数を5,000人程度削減

・管理事務費等の削減   一般財源の11年度予算額の30%削減

・団体への財政支出見直し 財政支出額を30%削減

・経常経費の見直し    平成11年度予算額の20%削減

・投資的経費の見直し   平成11年度予算額の30%削減

・徴税努力        徴収率を95%に引き上げ

・受益者負担の適正化   使用料等適正化、減免措置の整理・見直し

・税源の移譲等       消費税や所得税の移譲の実現

・財源調整措置の廃止    財源調整措置を直ちに廃止

また、給与関係で定数削減以外にも給与の削減を実行しています。

2000年-2002年

・職員給与(本給)の4%削減 

・期末・勤勉手当の0.45月分(8.6%)をカット。

・期末手当の引き下げや管理職手当のカット

→トータル(一般会計ベース)で1600億円の削減

2002年8月-12月

・職員給与の4%削減 

・期末・勤勉手当の0.45月分(8.6%)をカット。

2003年1月-2004年3月

・職員給与2%、期末手当の0.05月引下げ

・給与改定によりマイナス1.64%のベースダウン。実質的には4%程度の給与削減

→800億円の削減

この2つの政策により(一般会計ベース)2400億円の削減を実現しています。

【複式簿記の採用】

これに合わせて、他の地方自治体に先駆けて複式簿記の採用を決めています。それまでは自治体は自治体法・会計法とも単式簿記を行うことが決められていました。単式簿記は現金主体の会計方式で基本的に入金・出金を管理するのみで(小遣い帳の感じです)、貸借対照表(バランスシート)の考え方がありませんでした。負債や資産をきちんと把握していなかったということになります。

現在では総務省も地方自治体での複式簿記・固定資産台帳作成を推進していますが、きちんと複式仕分をしている自治体は4都道府県220市区町村の合計224(全体の12.5%)。まだまだ定着しているとは言えない状況です

【成果】

これらの推進プランにより平成12年〜15年の4年間の一般財源確保額の目標額6300億に対し、5904億円(達成率93.7%)を確保。未達ではありましたが、それなりの成果を上げたといえます。そして第二次財政再建推進プラン(2004-2006年)につながります。

実質財政収支が黒字化するのは第二次財政再建推進プラン終了の翌年の2007年。赤字転落から7年かかったことになります。

いろいろ言われる石原都政ですが、財政再建については成果を上げたと言えると思います。


Source:

「財政再建推進プラン」今後の取組の方向 の発行について H13.7.27

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/zaiseisaiken.PDF

東京都 財政・予算 更新履歴(平成11年度~平成16年9月)

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/kousinrireki.htm

東京都の財政 H18年4月

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/1804tozaisei.pdf

危機に直面した東京の財政(H11年6月)

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/kikitoukyou.htm

財政再建推進プラン

http://210.136.153.187/policy/zaisei/index.html

制度改革を迫る地方財政の危機(東京都の1998年〜2000年の実質収支比率)

http://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/group/fri/report/research/2003/report163.pdf

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