報道の自由度ランキングに関する違和感。。

報道の自由度ランキングは、国境なき記者団(Reporters Without Borders、RSF)が発表している指標だ。政治的内容・経済的内容・法的枠組み・社会文化・安全性の評価項目で、各国の報道の自由度をランキング化している。

2023年のランキング上位国は以下の通り、
1位ノルウェー95.18
2位アイルランド89.91
3位デンマーク89.48
4位スウェーデン88.15
5位フィンランド87.94
6位オランダ87.00
7位リトアニア86.79
8位エストニア85.31
9位ポルトガル84.60
10位東ティモール84.49

ヨーロッパ諸国とくに北欧諸国がほぼ独占状態ですね。日本は68位で、評価は「議会制民主主義国である日本は、報道の自由と多元主義の原則を守っています。 しかし、伝統、経済的利益、政治的圧力、男女不平等の重みにより、ジャーナリストは政府に責任を追及するという役割を十分に発揮することができていない。」とのことでした。より詳細な日本の評価は本ブログ下部をご覧ください。

とここで、ヨーロッパ諸国のスコアが高いことに疑問がありまります。なぜなら、ウクライナ紛争以降EUではロシアのメディアが排除されており、EUは法的・政治的にに言論統制下にあるからだ。

ロシア国営放送下のSputinikのツイッターアカウント
ロシア国営放送のRTのツイッターアカウント


EUにおける言論統制

ツイッターに加え、他にも、欧州で政府系メディアによる動画共有サービス、ユーチューブの利用を制限しており、NATO(米国・欧州)対ロシアという構図での政治的敵対国のメディアをシャットダウンしているのだ。

言論統制の理由は「ロシアをめぐっては政府系メディアがSNSなどを利用して偽情報を拡散させ、社会の不安を高める懸念が広がっている。」などとされている。

ロシアメディアの排除は紛争状態における局地的で一時的な措置だが、EUでは言論の自由を奪う法律が成立している。Digital Services Act(デジタルサービス法、DSA)と呼ばれる法律だ。「ディスインフォメーション(虚偽情報)への対抗」や「危機的状況への対応」などの概念を用いて、欧州委員会がSNSや検索エンジンなどに対し、規制強化の”強権”が発動できるようになっている。

これは治安維持目的の立法だが、戦前の日本で治安維持法が言論弾圧に用いられたように、このDSA法も言論弾圧に用いられる可能性を孕んだ問題法だ。

報道の自由度ランキングの公平性に関する問題

下記別添に記載したようにランキング上位の国々の評価には軒並みこのEUにおける報道規制・言論統制は考慮されていない。

ランキングの作成については「質問表(87項目)への回答結果(回答者は、RSFが選んだ各対象国・地域のメディア専門家・弁護士・社会学者)と、130カ国の特派員が評価した「ジャーナリストに対する暴力の威嚇・行使」のデータを組み合わせたものを、独自の評価基準と数式に当てはめて評価値が作成される」そうだ。

専門家・への質問と統計という方法を用いてランキングを作っているようだが、「EUの規制は正義!」なんて能天気な考えを持った人々が選ばれているのだろうか。

評価する人々の政治的・民族的立場には公平性があるのだろうか。また、一旦評価された質問表は別の立場の人間によってチェックされているのだろうか。

報道の自由度ランキングがどうやって公平性・中立性・客観性を保っているのかは不明だが、ヨーロッパ中心主義的な人たちによって構成されていることは間違いなさそうだ。




別添(国境なき記者団より翻訳)

ノルウェーの評価(抜粋)・1位

政治的背景

ノルウェーのメディアは有利な政治環境の中で活動しています。 概してノルウェーの政治家は、不利な報道を「フェイクニュース」と決め付けたり、その著者を軽蔑したりすることを控えている。 国会議員や政府閣僚は、公的機関から補助金が出ている出版物の編集委員会に近づくことを避けている。

法的枠組み

憲法は表現の自由と公開情報への権利の両方を保証しており、他のいくつかの法律でも保護されています。 メディア業界は共通の倫理規定に基づいて活動しています。 政府による広範な通信データの収集は、ジャーナリズム情報源の保護にリスクをもたらします。

アイルランドの評価・2位

政治的背景

2020年10月にアイルランド議会であるダイル・エイリアンによって設置された「メディアの未来委員会」は、2022年に待望の報告書を発表した。政府は、新たなメディア基金や地方民主主義への支援など、委員会の50の勧告のうち49を受け入れた。 報告。 しかし、公共放送RTÉへの資金調達を巡る重要な問題は未解決のままだ。

法的枠組み

アイルランドの2009年名誉毀損法に関する長い間待ち望まれていた見直しが、ついに2022年に公表された。この見直しは、公益ジャーナリズムに対するより明確な保護を提供し、反SLAPP(公衆参加に対する戦略的訴訟)メカニズムの導入を推奨するもので、名誉毀損事件における陪審の廃止についてなど、いくつかの懸念はあったものの、おおむね歓迎された。

デンマークの評価(抜粋)・3位

政治的背景

政治家や機関は全般的に報道の自由を尊重しています。 2021年後半、警察と国防情報機関は、大逆罪に関連する法的条項に言及しながら、ジャーナリストを脅迫し、情報源の秘密を脅かすという異例の試みに着手したが、これらは平時には決して適用されない。 具体的な情報や決定理由は明らかにしなかったが、政府機関はメディアに対し、国家安全保障に関連する機密情報を懲役刑の脅しの下で公開しないよう警告した。

法的枠組み

報道の自由とジャーナリストの保護に強固な基盤を提供する一方で、法的枠組みは最近発展しておらず、2014年に採択された情報公開法は、知る権利を妨げるものとしてメディアから批判され続けている。 この法律により、各機関はより制限的になり、公開情報を差し控えることができるようになりました。

オランダの評価(抜粋)・6位

政治的背景

報道の自由は、国や政府によって積極的に保護されていますが、オランダ本土では海外領土よりもより効果的に保護されています。 メディアは政治的スペクトルの極右および極左のポピュリスト政党から攻撃を受けています。 オランダのジャーナリストの大多数は、安全な労働条件と公正な賃金を求めて闘う活発な労働組合であるオランダジャーナリスト連盟(NVJ)の会員です。

法的枠組み

強固な法的枠組みが報道の自由を効果的に保護しているにもかかわらず、政府はここ数年、法的に義務付けられている公式文書へのアクセスを提供していません。 ほとんどの場合、ジャーナリストが要求した文書は到着が遅れたり、不正確または不完全でした。 通信ネットワークの暗号化を解除したり、電話やインターネット通信システムを盗聴したりする権限がセキュリティ サービスに付与されているため、情報源の機密性が侵害されるリスクがあります。

日本の評価

メディアの状況

日本では依然としてニュースサイトよりも伝統的なメディアの影響力が大きい。 主流の新聞と放送局は、読売、朝日、日本経済、毎日、フジサンケイという国の5大メディア複合企業体によって所有されている。 読売と朝日は世界で最も多くの新聞発行部数を誇り、それぞれ 1 日あたり 680 万部と 400 万部です。 同時に、日本放送協会 (NHK) は世界第 2 位の規模の公共放送です。

政治的背景

2012 年と国家主義右派の台頭以来、多くのジャーナリストが彼らに対する不信感、さらには敵意さえ漂う風潮について不満を述べてきた。 「記者クラブ」(「記者クラブ」)の制度は、既存の報道機関のみが政府のイベントにアクセスし、当局者にインタビューすることを許可しており、ジャーナリストを自己検閲に誘導し、フリーランサーや外国人記者に対するあからさまな差別を表している。

法的枠組み

2021年に制定され、2023年に初めて適用された曖昧な文言の規制は、福島原発など「国家安全保障上の利益」とみなされる防衛施設やインフラ近くの58地域への一般(ジャーナリストを含む)の立ち入りを懲役2年の刑で制限している。 および/または最高 200 万円 (約 18,240 米ドル) の罰金。 政府はまた、「違法」に入手した情報の公開を最高懲役10年に処する特定秘密保護法の改正も拒否している。

経済的背景

世界で最も高齢化が進んだこの国では、依然として紙中心モデルが主要な経済モデルであるが、読者の減少によりその将来は不透明である。 日本には新聞と放送局の相互所有に対する規制がないため、極度のメディア集中と、時には2,000人を超える記者を擁するかなりの規模のメディアグループの成長につながっている。

社会文化的背景

日本政府と企業は日常的に主流メディアの経営に圧力をかけており、その結果、汚職、セクシャルハラスメント、健康問題(新型コロナウイルス感染症、放射線)、環境汚染など、デリケートとみなされる可能性のあるテーマについては厳しい自主検閲が行われている。 2020年、政府は新型コロナウイルス感染症の健康対策を口実に記者会見に招待するジャーナリストの数を大幅に減らし、重大事件の際にその「指示」に従うべき組織のリストに公共放送NHKを加えた。 国家の危機。

安全性

日本のジャーナリストは比較的安全な労働環境を享受しているが、中には「名誉毀損」とみなされるコンテンツをリツイートしただけで政治家から訴えられた人もいる。 国家主義団体はまた、ソーシャルネットワーク上で、政府を批判したり、福島事故による健康問題などの「非愛国的」主題を報道したりするジャーナリストに対して日常的に嫌がらせをしている。 2022年12月に発生した個別の事件では、日本外国特派員協会に、クラブを爆破し、ジャーナリスト2名を殺害すると脅迫する不穏な電話が数件かかってきた。

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