ドイツ行政の闇。労働ビザ発給をめぐる事件をもとに。

ドイツの行政は官僚的で不効率かつ、担当官による対応の差異が大きいことが知られています。ドイツに移住しても数年後には去ってしまうことが多い移住者(Expats)の間でも、「ドイツ行政に対する不満」はドイツを去る理由に挙げらられています。

友人のベトナム人女性から聞いた彼女の体験談の話です。

彼女はドイツの大学を卒業後、ドイツで内定をもらい移民局に労働ビザを申請しました。

面談の日に移民局担当官の部屋に行くと、「あなたの学歴と仕事内容では労働ビザは発給できない」と申請が却下されたそうです。大学の学部と仕事の間に関連性がないことが原因でした。いろいろ関連性を説明しようとしたそうですが、「英語では話しません。ドイツ語で言ってください」の一点ばり。

ドイツでは大学で修めた学問と仕事が直結していないとなかなか仕事が見つからないという状況があります。産業社会における労働者を生産する装置としての近代国民国家の公教育という性格を考えると当たり前のことですが、日本よりも大学の学問と仕事の関係性は重要です。

労働ビザが降りないと、それに紐ずく滞在許可も剥奪されベトナムに帰国することになります。そこで不服に思った彼女は再度移民局で予約をとり、今度はドイツ人の彼氏を連れで面談に行きます。

と、担当官の態度が一変。前回は英語不可とドイツ語が拙い彼女にとって不利な状況で面談したそうですが、急に英語がペラペラになる担当官。「この仕事と給料だったら労働ビザを発給します」とのこと。

彼女の資格、仕事、給料、大学には何の変化もありません。前回と違いがるのは、ドイツ人の彼氏が後ろに立ってプレッシャーをかけているだけ。。。

完全なダブルスタンダード「二重基準」です。

日本から見るとヨーロッパ、ドイツの行政は日本よりうまく機能しているように見えますが、内情は別の話。欧米への羨望の眼差し、人種差別的な偏見の目がアジアの国である日本に向けられていることは、当事者である日本人も含め、否定したくても否定できない事実です。

ドイツで人種差別を受ける際は、ドイツ人、他の人がいる状況では受けることが少ないです。一人で夜道を歩いているとなど、「立場的に劣勢」にいるときに受けます。

ドイツ人がその場にいるかどうかで対応を変える移民局担当官。ご都合主義の担当官の気まぐれ、ひいては欧米社会の闇が見えた気がしました。

国会の委員会における議論も非公開のドイツ。説明責任、透明性なんて概念を導入したら崩壊しそうなドイツ行政です。ビザが発行やセンシティブなイシューは秘密主義を貫き、批判されるような綻びが出ないように努めています。

ちなみに、日本の役所のようにフラーと立ち寄って各種申請をするなんてこともできません。早朝のフリー枠を除いては、役所における各種申請はアポイントメントをとってから行きます。

筆者は移民局で写真を撮ったことがありますが、局員の方に激昂されて写真を消すように言われました。「何が問題た?」と聞いても、「とにかく消せ」と言われ、最終的には「写っている人のプライバシーの侵害」という理由で消すことになりました。

人口が不足しているドイツは不足を補うために、外国人人材の獲得に奔走しています。しかしこのドイツの「官僚主義」・「秘密主義」・「二重基準」・「人種差別」はドイツへ移住した人材のがドイツに長く住み続ける移住者定着の足枷になるでしょう。

ドイツやヨーロッパ社会に憧れを持って移住する日本人の方も、理想と現実の落差には心してください。

ていうか、言語も教えてくれて、生活の問題も解決してくれる「現地人の恋人最強!」と思った。


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