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差し出がましくも問わず語りに 〜メイウェザーvs朝倉未来 ぎりぎりの勝負はすでに始まっている

ボクシング世界5階級制覇、10年連続PFPのフロイド・メイウェザーと日本の総合格闘家・朝倉未来のエキシビション・マッチがRIZIN主催『超RIZIN+RIZIN38』と題して9月25日さいたまスーパーアリーナで行われる。当初は3分3Rのボクシング・ルール、8オンス・グローブ、契約体重70kgと発表されたが、8月31日ハワイでの記者会見時に那須川天心戦と同じく適用されるであろう「蹴り一発5億円」はどうなったのか、5億円払えば蹴っていいのかに対する回答を非公表のまま(朝倉は「蹴っちゃだめだって」と榊原氏経由で聞いたそうだ)、9月6日になって体重契約なし、グローブが10オンスに変更された。勝敗に直結するかもしれないルール変更が事も無げに行われていく。今回の変更は朝倉側の言い分に譲歩したようで喜ぶ向きもあるけれど、メイウェザーは甘くない。対戦告知から現在に至る、表に出したすべての言動に意味がある。

朝倉がボクシング・ルールを完全に守り、反則を考えず全力で向かってきてくれ、天心戦のように自分の所から連れてきたレフリーが裁けば面白い格闘ショーが作れる。朝倉の強さと頑張り、相手をしてやるメイウェザー様の技術、凄さ、余裕、そしてボクシングの素晴らしさを堪能させてやる…ところだ。しかし、朝倉は信用できない。俺を倒す気でいる。

ボクシングは厳しいレギュレーションの下、健康管理や公平性、安全面に配慮して行われる真のスポーツであり、試合にはスポーツマンシップの素晴らしさを伝える公益性、紳士然として振舞う選手、残虐さを排除した闘いを見せる教育的な意味がある。プロボクシングは興行であり、従ってKO決着を期待される格闘技と看做され、選手にとっても生活が懸かっていて綺麗事を言ってられない所もあるが、ボクシングを名乗るかぎり、スポーツでなければならない。
本人は引退し、この試合はエキシだとはいえ、自他共に史上最高と呼ばれたボクサーがボクシング・ルールの試合に出る訳だから、これがボクシングだと誤解されてはならない。天心戦のときJBC(日本ボクシング・コミッション)は申し入れをしたが、RIZIN側は「限りなくボクシングに近い立ち技系の異種格闘技ルール」と答えている。

5億円ルールは試合後、榊原氏や天心が暴露したもの。試合直前になってメイウェザー側が言い出し、蹴る素振りや足が触れただけでもアウトだとルール・ミーティングで要求、呑まなければ出場辞退、帰国すると脅されたそうだ。密約を明かしても守秘義務違反に問われなかった。蹴りを一切出さなければ、ボクシング・ルールを守った普通の試合になるからだ。

メイウェザー戦対策に朝倉は錚々たる現役、レジェンド・ボクサーにボクシングの指導アドバイスを受け、秘策を立てているが、当初ボクシング・グローブの使い勝手の違いに驚いていた。そのときは8オンス、今度は10オンスだ。微調整を余儀なくされるだろうし、「微」で済むかどうか。練習を続けてきた秘策の一撃が実践で決定打となるか有効打で終わるか、少なくとも自信を揺らがす意味はあった。

問題は天心戦のときと同様、直前の要求だ。密約は非公式に公表されていたから、これ以上の要求はあるか。メイウェザーの要求は滅茶苦茶に見えて、必ず一理を残しているのが特徴だ。そして、その一理に榊原氏は弱い。

フリーウェイトではエキシとも言えない。契約通り70kg、8オンス・グローブで行くべきだ。直前になって言われる可能性がある。計量結果を見せなくても密約できる。朝倉側が最も危惧すべきは、減量スケジュールを急遽変更したことによる水抜きの失敗だ。本来の「4〜5kgまでの水抜きをして70kg、計量までに77kgに戻す」が良く、せめて無理のない水抜きで体重を合わせられるようご警戒を。
メイウェザー側は微細な反則も取らせる必要があり、絶対、自分が用意したレフリーを採用する(これだけはRIZIN側が譲歩してほしくない。健闘しても勝ち目はなくなる)と言われたら、RIZINは突っぱねることができるだろうか。
正規のボクシング・ルールなら「反則とされる素振りを見せただけでも」反則、レフリーの裁量次第だが、軽度なら注意、悪質でなく当てないなら初回は警告ぐらいか。5億円ルールの場合、中立の立場で考えれば実害のないキックのフェイントが少しは使えるはずだ。

(つづく)

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