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小説「泥沼の花」(12)

 江戸川の運河出張所というところに配属された。
河川巡視員と言う仕事は、なにごともなければ退屈な仕事だった。運転手つきのパトロールカーの助手席に乗って、河川を見回るだけ。
 
 当初ゴミの不法投棄があって、燃やして処理していたが、それもなくなった。
桟橋を作ろうとしていた人も中止してくれた。
 
 ぎゃあぎゃあとうるさくしたことはないが、運河出張所の巡視員はきびしいという噂が流れたんだろうか。隣の管轄の住民からゴミを捨てられない方法のアドバイスを受けたこともあった。
 
 勤務時間は9時から5時まで、残業なし、土日休みだったので、自分の時間は十分あった。その余暇時間に友二は、一級土木施工管理技士の勉強をした。結果は合格だった。これで、中堅会社に中途入社もできると思っていた。
 
 平和な日常の中に、突然阪神淡路大震災は起こった。テレビで高速道路が倒れていたのを見てびっくりした。未曾有の大地震で、道路も建物も壊れただろうと思われた。これは土木屋の出番だと思った。
 
 会社の社長に「神戸に行きたいんですけど」と言ったら「なんでだ、旅行でか」といわれて、この会社はダメだな、辞めようと思った。
 
 人材派遣会社から、神戸に行かれそうな会社を紹介してもらって移ることにした。

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