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34.税制優遇積立商品の効果と欠点

⬜︎「税制優遇積立商品」の効果と欠点
 
 いつの時代も「節税」という言葉に弱い私たち生活者。納税は必要ですが、必要以上に払いたくないと考えるのが心情です。
しかし、その心情をつくことこそがセールス・テクニックなのですから、「社会保険料控除」「全額損金」「税額控除の対象」など、さほど税金に詳しいわけでもないのに飛びついてしまいます。
 
実は、これらの多くは、掛け金や積立金を財布から出すときの税制優遇措置なのです。

手段を選ぶときは、入口・途中・出口の3点から確認が必要だと以前述べました。
 
ここではiDeCo(個人型確定拠出年金)を例にとって考えてみましょう。
 
 
⬜︎iDeCoはお得?
 
iDeCoは、平成13年に施行された確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度です。

平成29年1月から、基本的に20歳以上60歳未満の全ての方が加入できるようになり、多くの国民に、より豊かな老後の生活を送ってもらうための資産形成方法の一つとして位置づけられています。
 
 
⬜︎「入口」:「iDeCoは月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます。資金に余裕のない方でも、ご自身のライフ・スタイルに合わせた無理のない負担で老後に備えることができます」
とありますが、少額で老後に備えられますという表現は聞こえこそはいいのですが、「とりあえず積立すれば老後に備えている気になります」とも取れます。
 
 
⬜︎「途中」:「利益が課税されずにそのまま再投資することができるので、複利で運用することができ、その効果は大きくなります」
とありますが、複利の効果は、利回りが一定もしくは右肩上がりで発揮できるため、その効果だけを鵜呑みにすると老後に必要資金の確保ができなかったと泣き寝入りすることにもなりかねません。
 
 
⬜︎「出口」:「一時金での受け取りは退職所得とみなされますので、『退職金控除』の対象となり、大きな税制優遇があります」
とありますが、分割受け取りした際には雑所得となり、以降毎年所得税の対象となります。
さらに、「iDeCoの年金資産は、老齢給付金として原則、60歳から受け取ることが出来ます」
とありますが、逆に60歳まで使うことはできません。
 
過去にもマル優制度・厚生年基金・税制適格適格年金など様々な「国民の資産形成や老後資金支援策」を講じてきましたが、今やその制度はありません。
 
民間企業が努力を重ね、何百年も経営を維持している中で、こうした公的支援制度の継続性の悪さは、もっと問題視されるべきだと思います。次々に新たな支援制度を作ることよりも、私たちは一貫性と継続性を望んでいるのです。
長期的視野で生活設計をする国民には支援制度ならぬ不安要素になりかねませんから。

 
 
⬜︎「金融教育の欠落」:「運営管理機関は運用商品の説明は行いますが、特定の運用商品をお勧めすることは行いません。
とありますが、自分で決めた運用方針に沿って運用商品を選択し、掛金でどの運用商品をどれだけ購入するかの配分(掛金の何パーセントをどの商品に振り分けるかの比率)を決める必要があります。
 
「自分で決めた配分比率に基づいて、運用商品が購入されます」
とありますが、国が厚生年金も、国民年金も、更にはその基金も運用の責任を果たすことができないので、国民一人一人が自己責任という、学校でも習うことのなかった資産運用やお金や金融のことを、説明はしないけど、自分でやりなさいということです。
 
 
⬜︎「制度の欠点」:「iDeCoの年金資産は、転職・離職した際にも、移換の手続きをとることで、持ち運び(ポータビリティ)することができます」
とありますが、本来退職金という労働分配は、勤めた会社に長くいてほしいという最大の目的があるにもかかわらず、持ち運びをされることは会社側にとっては親身になれない状況を作っています。
 
 
⬜︎「余分な手数料」:「iDeCoの実施者である国民年金基金連合会は、その事務費用に充てるために、個人型年金規約に基づいて、加入者の方や企業型確定拠出年金からの移換者の方(加入者及び運用指図者)に手数料をご負担いただいています」
とありますが、iDeCoを使わなければ、民間の証券会社が「投資信託」という形で手数料を獲得できるのですが、iDeCoは税制優遇分を手数料で回収しているようにも見えます。
 
 ちなみに、手数料は次の通りです。
①加入・移換時手数料(初回1回のみ):2,777円
②加入者手数料(掛金納付の都度):国民年金基金連合会103円/月。事務委託先金融機関64円/月。
運営管理機関0~数百円/月。
③還付手数料(その都度):1,029円(国民年金の未納月が判明した場合等、当該月のiDeCoの掛金を加入者に還付する必要が生じた場合)
 
 
⬜︎「表現次第」でメリットのように見える:
自分の責任で運用ができる = 運用の良し悪しは自分次第。
一括受取する場合退職金所得控除 = 年金受取すると雑所得として毎年課税の対象。
60歳まで引き出せないので貯めることができる。 = 支出の変化に対応しにくい、長期の財産凍結。
 
 なにより、数十年という「超長期の資産運用」において途中引き出しができないことは、支出の変化に対応しにくいため最大のデメリットと言えます。
積立額に応じて、低金利の加入者貸付制度などを導入されれば、私も活用するかもしれませんが…。

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