見出し画像

ZAIM 2022年06月号

社外CFO業務 (PL分析表)5  ~ PLからキャッシュフローが見えるか? 2 ~
  
 前回の 「償却前営業利益」 の説明で、売上も仕入も経費の支払もすべて 「現金」 で行われると仮定しました。でも現実には、例えば日々の売上がほとんど現金と想定できる駄菓子屋さんでも、仕入は 「ツケ」 によることが多いのではないでしょうか。
下図のCF(キャッシュフロー計算書)でケース1はすべて現金(または当月清算)の場合、
ケース2、ケース3はそうではない場合のイメージ図です(※)。
※ わかりやすいように、営業利益ではなく、販管費を引く前の売上総利益(粗利益)の例にしています。
  また 「現金」 とは売上も仕入も取引時に清算するということです。ここでは月締めで見ていますので、取引月に清算されるのも現金同様と仮定しています。

PL上では粗利益が30出ているのですが、ケース2の 「翌月」 を見るとキャッシュの残がマイナスになっています。当月から見れば、翌月清算分は売掛債権や支払債務ということになります。つまり売掛債権や買入債務のバランスによって、キャッシュフローも変化するのです。
ケース2では翌々月のキャッシュフローまで足すと、3カ月トータルではプラスですが、当月と翌月の2カ月の合計だとキャッシュフローがマイナスになっています。これはなにかでカバーしないといけないわけです・
 言いかえると、利益は同じでも取引内容でCFは変化するということです。会社にとっては、「入金は早く、支払は遅く」 するほどCFは良くなります。
 
※   非資金費用と売掛債権・買入債務の違いについて
 月々のキャッシュフローは、決済条件の違いで変化しますが、継続して見ていくとほぼPLの推移に近いものになってくるとも考えられます。 これが減価償却費などの非資金費用との違いで、「すべて現金取引」 と想定しても、ある程度キャッシュフローが見えるとした理由です。継続して見た時にPLとCFが大きく乖離する場合は、ほかに原因があると思われます。
 
 以上、簡素化して粗利益に限定してキャッシュフローを見ましたが、実際には経費その他の要因についても同様に見ていくことになります。 なお、売掛金、受取手形、買掛金、支払手形などはPLではなくBSに表示されることに注目してください。
 
 中小企業では、資金繰り表やキャッシュフロー計算書を日常的に作成して、資金繰りに役立てている会社はそう多くはありません。そういったものを整備して、日々のキャッシュフローをきちんと見ていくことが望ましいのですが、それがないから何もしない、ということではなく、PLやBSからキャッシュフローの概観をつかめるようにセンスを磨くことも重要だと言えるでしょう。

<POINT>
・ 売上と仕入、売掛と買掛の違いをキャッシュフローから見る。
・ 前後の月の分が継続して実現していくことに注意。
・ 売掛金、買掛金、手形などはPLではなくBSにあらわれる。