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ZAIM 2022年05月号

社外CFO業務 (PL分析表)4  ~ PLからキャッシュフローが見えるか? ~
 
 PL(損益計算書)は年間の業績を数字で示しているわけですが、実際のキャッシュ(お金)の動きとの関連性を知ることによって、CF(キャッシュフロー計算書)が整備されていなくても、ある程度キャッシュの流れをつかむことができます。
 
 まず、前提として売上、仕入等の売上原価、経費の支払がキャッシュで行われると仮定します(減価償却費を除く)。
 
 減価償却費については、設備投資などを行った場合、それをPL上で経費として一括計上せずに、所定の期間にわけて一部を償却していきますので、キャッシュは取得時にすでに支払われている(投資資金)ものとして扱います。

左の図で、営業利益はマイナスとなっていますが、右の図のように減価償却費を除くと、プラスになっています。
 これは減価償却費が、たとえば機械購入などの設備投資をした際に、すでに購入資金が支払われているため、その後の資金支出が発生しないことから、営業資金のキャッシュの流れから除いているためです。
 
 つまり、PL上では経費として計算される減価償却費ですが、営業資金のキャッシュフローでは資金支出とはならないのです。こういった性質の経費を 「非資金費用」 といいます。(売上原価に減価償却費が含まれる場合も同じです)
 
 償却前営業利益は 「営業利益+減価償却費」 で算出できます。この償却前営業利益の額がプラスであれば、仮に営業利益がマイナスであっても、本業でお金が残っていると推測されることになります。またその額が借入金の返済額(これもPLには出てきません)を上回ると、本業における返済能力があると推定できるのです。
 
 ただし気を付けなければいけないのは、あくまで売上や仕入、経費の支払がキャッシュで行われていると仮定して上でのことだということです。現実はほとんどの会社が、売掛金や買掛金の存在、経費支払のずれなどで、キャッシュの動きとは一致していないでしょう。 ただこれらについては、継続的な運営の中では、ほぼキャッシュに沿った動きをする性質のものですので、連続してみていくと大きく乖離することはないと考えるわけです。
(これが当てはまらない場合は、別個の課題があると考えられるので、対処が必要です)

<POINT>
・ 償却前営業利益は本業でお金が残るかどうかの目安。
・ 償却前営業利益が借入金返済額を上回るとなおよい。
・ 償却前営業利益はあくまで「目安」、信じすぎないこと。