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資金調達 「借りる」その8 ~ 危機時の借入 ~

金融機関から融資を受けるときの借入額はいくらぐらいが最適か、という質問を受けることがあります。通常であれば月商の何か月分とか、運転資金の何か月分とかを、既存の借入金や返済状況を加味して検討することになるでしょう。 しかしこれはあくまで 「通常時」 の考え方となります。今回は、たとえばコロナ感染症や経済的な環境の激変といった 「危機時」 にはいくらぐらい借りればいいかについて述べてみます。
 
 結論から言えば、 「借りられるだけ借りる」 というのが正解であると考えます。 なぜなら、危機時というのは 「今後どうなるか予測がつかない(※)」 状態だからです。いくら過去の経験から予測を立てても、それを上回る危機が発生するやもしれません。
 
 危機管理の初動時の原則に 「大きく構えて小さく収める」 というのがあります。まずは十分な資金を調達して、予測不能な事態にも対応し、会社のダメージを最小限に抑えることが大切です。
 
 これとは逆に、 「あまり借りすぎても返済が大変だから」 というような腰の引けた取り組みでは、モグラたたきのように次々と発生する不測の事態に追われてしまうことになり、どうしようもなくなる場合があります。こういうことにならないように、危機時にはさまざまな特別対応の制度が実施されています(※※)。 これらの制度を活用して、 「借りられるだけ借りる」 ことをやってみるのが重要でしょう。
 
 
※ 「予測がつかない」 のと 「予測をしない」 のとは意味が違います。 通常時ではつねにキャッシュフローの予測を立てておくことが必要です。
 
※※ 危機時の特別対応の制度は恒常的に継続されるものではありません。タイミングを逃さずに活用することが重要です。
 
 代表的な危機対応制度には以下のようなものがあります。
 
 
新型コロナウィルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
 
 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している事業者であって、売上減少の要件に該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方が対象となります。
 
 
伴走支援型特別保証制度(信用保証協会)
 
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業・小規模事業者の資金繰り円滑化を図るとともに、金融機関が継続的な伴走型支援を実施することにより、当該事業者の経営の安定や生産性等の向上を図ることを目的として創設された制度です。

※本コラムの記事はご理解いただきやすいように省略や簡略化していますので、すべての事例に対して正確性を担保しているものではありません。個別の事例や詳細な内容については他の解説記事等も参照してください。