『タッチっぽい話』

コントっぽいやつ書きました。
男女コンビの方、良かったらネタ見せで使ってください。




「タッチっぽい話」


校門から入り、
三階建ての校舎の中道を抜けた先にある
階段を降りる。
そこには、運動部のための校庭があった。
左側は、サッカー部のためのコート。
右側は野球部のグラウンド。
それらを囲むように、
陸上部のためのトラックが置かれている。

ヒロキは、3階校舎のベランダから、
その校庭の光景を眺めていた。
ふと時計を見る。
まだ明るいのに、
時計の針は18時を指していて驚いた。
カバンを持って、急いで校舎を駆け降りる。

中道を校庭の方へ抜けると、
部活終わりで帰宅しようとする人たちが
かなり増えていた。

ヒロキ「あ、ミナミちゃん!
    部活終わったの?」

左肩に細長い筒を、
右肩に大きいエナメルバックを背負い、
日焼けで顔が真っ赤の少女に話しかけた。

ミナミ「うん。今終わったとこ。」

ヒロキ「よかったら一緒に帰らない?」

ミナミ「いいけど。
    トンボ公園で素振りしていくから
    途中までになるよ。」

ヒロキ「今日も自主練するの?」

ミナミ「大会近いからね。」

ヒロキ「すごいなぁ。
    あ、良かったらこれ食べて!
    練習で疲れてるだろうから。」

ヒロキはカバンからタッパーを取り出す。
2人は、話しながら校門を出て、帰り始めた

ミナミ「あ、はちみつのレモン漬けだ。
    ありがとう。」

ヒロキ「いやいや、
    ミナミちゃんには頑張ってほしいし。
    それに、約束したじゃん。」

ミナミ「約束ね。」

ヒロキ「僕を全国大会に連れていってって。」

ミナミ「前から言おうと思ってたんだけどさ」

ヒロキ「なに?」

ミナミ「逆じゃない?」

ヒロキ「どういうこと?」

ミナミ「ヒロキが、野球やってて、
    ウチが、甲子園に連れて行ってって
    言うのが普通じゃない?」

ヒロキ「いや僕、運動苦手だし。」

ミナミ「それはわかってるけど。
    なんかモヤモヤするわぁ。」

ヒロキ「ミナミちゃんが、
    真剣に打ち込んでるのを見て、
    僕、本当に思ったんだ。
    全国大会に連れて行ってほしいって」

ミナミ「ウチ、ソフトボール部よ?」

ヒロキ「知ってるよ。」

ミナミ「別に連れて行ってほしくなくない?」

ヒロキ「なんてこというんだよ!
    ミナミちゃんの夢じゃないか!
    夏の大会で、全国に行くって!」

ミナミ「いや、私の目標はそうだよ。
    そのために、毎日自主練もしてるし」

ヒロキ「その夢を、そんな風に言うなよ!」

ミナミ「連れてかれる側のモチベは、
    そんなになくない?」

ヒロキ「何言ってんだよ!
    僕は連れて行って欲しいよ!」

ミナミ「男なのに女子ソフトに
    興味あるのはめちゃくちゃ嬉しいし、
    本当にありがたいと思ってるけど、
    なんか、なんて言うかね。」

ヒロキ「なに?」

ミナミ「もう言っちゃうけど、
    女子だけで盛り上がりたいのよ。
    ソフトボールは。
    私個人の意見だけどね。
    ソフトボールは、
    女子だけで
    盛り上がりたいスポーツなのよ。」

ヒロキ「全然わかんないよ。」

ミナミ「勝っても負けても、
    ウチらだけで喜んだり、
    悲しんだりしたいのよ。
    そこに男の子が居られると、
    なんか一気に違くなるのよ。」

ヒロキ「僕はいない方がいいってこと?」

ミナミ「いや、ヒロキって言うより、
    男の人全員に言えることなのよね。」

ヒロキ「ソフトボールってそうなの?」

ミナミ「ソフトボールってそうなのよね。」

ヒロキ「ミナミちゃんのお父さんは?
    お父さんもいない方がいいの?」

ミナミ「まあ五分五分よね。」

ヒロキ「五分五分」

ミナミ「でも、それこそ男友達とか、彼氏とか
    そういうのはまじで違うのよ。
    だから、お願い。
    この約束は、
    なかったことにしてくれない?」

ヒロキ「わかったよ。
    ただし一つだけ言わせて。」

ミナミ「なに?」

ヒロキ「僕と付き合ってほしい。」

ミナミ「すごい度胸でありタイミングだわ。」

ヒロキ「本当は全国大会に行った時に、
    告白しようと思ってたけど、
    それは違うんでしょ?」

ミナミ「ソフトボールの全国大会は違うかな。
    うん。」

ヒロキ「だから今言ったんだよ。」

ミナミ「なるほどね。
    でもごめん、私彼氏いるから。」

ヒロキ「ええーーーーー!?」

ミナミ「27歳で駅前のケータイショップで
    働いてるの。」

ヒロキ「彼氏いたんだ。年上の。」

ミナミ「でも、勘違いしないでね。
    ウチはたとえ彼氏でも、全国大会に
    来てほしいとは思わないから。 
    あ、トンボ公園着いたね。
    それじゃ。」

ミナミは公園に入って行った。
ヒロキは独り、また歩き始めた。

ヒロキ「ウチ、か。」

気づけば太陽が沈もうとしている。

〜終わり〜


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