『夜景とかが見えるレストラン』

「30階でございます。」
エレベーターのドアがやっと開いた。
まず、待合室にある大きなシャンデリアが目に入った。
次にウェイターさん、
高そうなスーツを着こなしている。
言われた通り、ドレスを着てよかった。
そして、そのウェイターさんに
予約した名前と時間を告げる彼を見た。
かなり緊張している。
彼もこんなレストランは初めてみたいだ。

彼 「今、予約の確認してくるって。」

私 「すごいね。
   高級レストランって、
   お金大丈夫かな。」

彼 「大丈夫、コース料理だし。
   俺が払うよ。」

私 「でもさ、」

彼 「せっかくの記念日なんだから。
   もうきちゃったわけだし。」

私「そうだね。
  予約してくれてありがとう。」

ウェイター「お待たせしました。
      ご予約の確認が取れましたので、
     展望テラスへご案内いたします。」

私 「展望テラス?」
ウェイターさんが、私たちを誘導してくれた。
店内ではお金持ちそうな人たちがいっぱいいた。
目立たないようにひそひそと会話した。

彼 「そう、展望テラスにした。」

私 「なにそれ?」

彼 「ここ30階だけど、外があるんだよ。」

私 「え、すごい!」

彼 「夜景とかがきれいに見えるんだって」

私 「私、夜景大好き!」

彼 「よかった。喜んでもらえて。
   俺も、夜景とかが大好きだから。」

ウェイター「展望テラス席でございます。」

ガラス製のドアを開くと、
開放的な空間が広がっていた。
高層ビルから飛び出した、
大きすぎるベランダのような
そのテラスは、
庭園のような雰囲気もあり、
床は人工芝で噴水もある。
ふちにはは50センチほどの、
控えめな柵があった。
その先には、
何千何万もの都会を照らす
輝きが目に入った。

私 「綺麗・・・」

ウェイター「百万ドルの夜景とかです。
      お席はこちらです。」

そのテラスには、
テーブルは一つしかなかった。

彼 「展望テラスは一日一組限定なんだ。」

私たちは席に着いた。
コース料理が続々とくる。
美しい夜景を見ながら、
私たちは食事を楽しんだ。

私 「夢みたい。
   私、こんな素敵なところ、
   初めて来た。」
心からでた一言だった。

彼も嬉しそうに答えた。
彼 「喜んでくれてよかった。
   でも、おかしいな。」

私 「なにが?」

彼 「夜景とかが見えないな。」

私 「え?見えてるじゃない。
   こんなに綺麗な夜景が。」

彼 「いや夜景は見えてるけど。
   夜景とかが見えてないなぁ。
   店員さん呼ぶか。」

私 「夜景、とか?」

彼がテーブルで持っていたベルを鳴らす。
すぐにウェイターがかけつけた?

ウェイター「どうされましたか?」

彼 「いや夜景とかが見えないんだけど。」

私 「ちょっと、何言ってるの?
   こんな良い店で、恥ずかしい。」

ウェイター「さようでございますか。
      それは申し訳ありません。
   すぐに夜景とかをご用意いたします。」

彼 「お願いします。」

私 「なに?夜景とかってなに?」
困惑する私を置き去りにして、
ウェイターさんがすばやく移動して、
受付まで戻っていった。
ガラス張り越しに、
紙を見ながら誰かと
話しあっている様子が見えた。

数分後、
すぐにウェイターさんが戻ってきた。

ウェイター「失礼しました。
    新人が、時間を間違えていたようで。
    もうまもなく夜景とかが見えます。」

彼 「そうですか。」

ウェイター「お詫びにドリンクのサービスは    
      いかがですか?
      夜景とかにあうとっておきを用意 
      いたします。」

彼 「え、いいんですか!やったね!」

私 「あぁ、うん。」

ウェイター「夜景とかをお楽しみください。」
ウェイターは出ていった。

彼 「いやー、新人さんならね、
   そういうこともあるよね。」

私 「あのさ、夜景とかってなに?
   夜景以外も見えるってこと?」

彼 「うん。」

私 「何が見えるの?」

彼 「それを言っちゃったら!!
   もうそれ言ったらだめでしょー。」

私 「どういうこと?
   高級レストラン、高層階、
   私、夜景以外はとくに見たくない・・
   え、ウソウソウソ!!!」

柵の向こう側、
百万ドルの夜景の空中に、
白い服を着た、
透けた女が現れ始めた。

私 「ユーレイよ!
   あれ完全にユーレイよ!」


彼 「お、やっと出た。」

私 「いやいやいや、何その反応!? 
   ユーレイだよ!女の!」

彼 「そんな驚かないでよ。
   UFOが出たんじゃないんだから。」

私 「驚きレベルとしては一緒じゃない?」

彼 「これが、夜景とかだよ。」

私 「夜景とか、ユーレイとか?」

彼 「そう。2人の記念日だから。」

私 「台無し。」

彼 「まあね、新人の霊媒師が、
   ちょっと時間を間違えたのは...」

私 「違うそこじゃない。
   新人って、霊媒師のことだったんだ。
   じゃない。」

彼 「え、じゃあなに?」

私 「だからユーレイ!
   記念日に、高級レストランに、
   1組限定の展望テラスに、
   100万ドルの夜景、完璧。
   ユーレイのせいで台無し!
   なに、あいつ、なに透けてんの!
   むかつく!」

彼 「この夜景とかより、
   君のほうが綺麗だよ。」

私 「ユーレイ込みで比べないでよ。」

ウェイター「お待たせしました。
      赤ワインです。」

私 「夜景だけに合うものじゃないこれ。
   ユーレイ見ながら赤ワイン
   全然飲みたくないわよ。」

彼 「君、夜景とかホラー好きだし、
   喜ぶと思ったのに。
   すごい怒ってるね。」

私 「時と場合による!
   ロマンティックとホラー、
   どっちかにしてほしかったな!」

彼 「それは無理だよ。」

私 「なんでよ。
   ユーレイのいない展望テラス、
   これだけがのぞみなのよ!」

彼 「だって、
   ユーレイでも出るようなとこじゃないと
   高くて来れないもん。」

私 「え、事故展望テラス?」

彼 「まあ、だいたいそんな感じ。」

私 「霊媒師さん!
   除霊してもらえばいいじゃん!」

彼 「うーん、なんて言うかなあ。
   僕たちは、金持ち達の見せ物なんだよ」

私 「はあ?」

彼 「ユーレイが出る展望テラスに、
   勇気を持って踏み入るカップル。
   それを安全なとこから見物する
   金持ちたち。
   だから安く本物のコース料理が
   食べれるんだよ。」

私 「何その世界観。」

彼 「この展望テラスも、本当はないんだよ」

私 「え、え、え、なに?」

彼 「なんか霊的な力で、
   本当はないのに、目に見えるし、
   触ることも立つことも出来るっていう」

私 「え、やだ、ここの話よね?」

彼 「うん。不思議だよねーー。」

私 「あ、こわっ。やだっ。」

彼 「こんな違法建築、
   国が許すわけないだろ?」

私 「なんでそんな平然としてるの?」

彼 「全部知ってたから。」

私 「言えよ!」

彼 「あっ、UFOだ!
   うそっ!信じられない!
   UFOが来た!こっち来た。
   え、真上にきたよ。
   ユーレイが、
   不思議な光に吸い込まれていく!」

私 「もう帰る。」

彼 「すごい光景が起きてるよ!」

私 「もうこれ以上はついていけない。」

彼 「気をつけてね。」

私 「はいはい。」

彼 「次のユーレイがまだ決まってないから」

おわり

あとがき
ラスト怖っ。
びっくり。
ネタのタネにならないかなぁ。
書き殴っただけだもんなぁ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?