紀行記 モロッコ編(1)

あの映画の町カサブランカ

カサブランカという響きに魅せられて、ようやく行ってみたかったモロッコに降り立ったのは、カサブランカを見てから10年以上はたっていた。それほど、モロッコは日本から遠い。カサブランカの空港に着いてすぐに戸惑ってしまった。空港からは電車が出ており、早速電車の乗り方がわからない。窓口に聞きながら、ようやく市内に行く電車に乗り込んだ。さて、私の目的地はどこにしようか。

普段、順序立てて置かないと物事が進められない性格をしているため、旅行では思いっきりいきあたりばったりの旅をする。次の予定を何も決めずにその時の気分で東西南北どちらに行くのか決める。時々運に身を任せてみる冒険ができるのが自分の旅の醍醐味で、密かな楽しみである。

さて、と思っていると電車の中で話しかけられた。とても日本語が流暢なモロッコ人で、何でも日本に行ったことがないのに独学で日本語検定1級を取ったという。海外では時々とんでもない能力を持った人に出会う。彼は一度聞いた言葉をすべて覚えてしまうのだそうだ。漢字で論評を書くこともできる。市内に着くまで、日本語への思いや、朝市の場所、カサブランカの町についてなど、たくさんの事を教えてくれた。この旅の後に胡蝶の夢を読んでいるときなど、島倉伊之助もきっとこういう人間だったのだろうと彼を思い出した。市内に着き、電車を降りてそれぞれ目的地へと別れた。

ホテルに到着すると、早速荷物をおいて、ハッサン2世モスクやメディナ旧市街を散策した。旧市街の外れにはグランドモスクがあり、その周辺にいたおじいさんにここは最も古いモスクのミナレットがあるよと教えてもらった。調べてみるとおよそ1000年ほど前に建てられたそうで旧市街でも古い建築物の一つだそうだ。暗くなってくると、街灯が少ない旧市街は独り歩きに適さないということで、暗くなる前に旧市街近くのibisホテルに戻った。

結局、映画のロケ地カサブランカのレストランに行きたかったのだが、たくさん歩いたのでもう満足してしまって、その日はそのままホテルで休むことにした。


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