ライブしたら退職に追い込まれた話-1-

ある日の仕事中、僕は別室に呼び出された。
今年に入ってからというものの、働いていた部署の人員の入れ替わりが激しく、業務整理が追いつくか追いつくまいかといった状況だったのでその類の話だろうかと思った。もしくは、3月の頭から晴れて社員になった僕に何かしらの書類を渡しそびれていたのか、などの考えがよぎった。この日は3月3日だった。「(もしくはあの話だろうか…)」僕には思い当たる節があった。

-3月2日も僕は黙々と仕事をこなしていた。(いや、後輩の笑顔を誘いながら着々と仕事をこなしていたのだが)
その最中一本の電話が鳴り響いた。「コウジさん、社長からお電話です。」

僕の業務は社長からの進捗確認や、ましてや助言をいただくことなどもさしてない内容だったので、出張先から僕に向けての電話はいささか不自然であった。

恐る恐る電話に出た。

「お電話代わりましたコウジです。」

「アンタ、ライブとか直近決まってんの?」

「えっ?いや、まぁ何本か…」

「いや今な、出張先で聞いてんけど、周りにライブハウスで例のコロナに感染した子がおるらしくってな、アンタもライブとかやってるやん?大阪のライブハウスでもああやって何人か出てるし。ほんっまに気つけて欲しいねんか、わかってると思うねんけど。アンタ1人がどうこうの問題じゃなくってサァ……」

「(いよいよ僕の所にまで影響が出始めたなぁ…)はい、はぁ、なるほど、そうですね。わかります。うんうん、考えています。」

「プライベートのことやから強制はできひんねんけどな、まあ、な!わかってくれるよね?」

「いやぁ、こちらも僕1人の問題ではなくって、関係者も……」

「まあそういうことやから、気つけてな!頼んだで!」ガチャッ…

-こうした、到底腑に落ちないやり取りをした翌日だということもあり、この呼び出しは僕にとって歓迎できない話があるものだ という確証めいたものがあった。

僕は録音モードのiPhoneを片手に上司と、先輩バンドマンの居なくなった部屋を出た。

続く

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