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街を見るオタクに映った金沢と蓮ノ空【蓮ノ空舞台巡礼】

こんにちは。
4月末に蓮ノ空のスタンプラリーを通して初めて舞台巡礼を満喫してきました。観光を通して記憶に残ったことをトピックで振り返ってみます。


遠さがトキメキを思い出させてくれた

都内在住のため、幸か不幸かこれまでラブライブ!シリーズ主人公グループの舞台を訪れる苦労がありませんでした。その点において、蓮ノ空の舞台である金沢は物理的な距離と費用が発生します。

舞台巡礼にもってこいの名称ですよね、「かがやき」。

ただ、これを前向きに捉えるならば、東京から金沢への距離感が久しぶりに作品舞台へ行く時の心持ちを思い出させてくれました。すでに沼津駅が品川の隣駅にあるようなバグった感覚を持つ身としては、東京駅のプラットホームで新幹線が入線してくる瞬間、「舞台へ訪れようとするこの感じ、久しぶりだなぁ…」と感慨深くなるのでした。

かがやきにトキメキ。

バーチャルとリアルが交錯する蓮ノ空の世界へ近づいていく、そんな旅の始まりでした。沼津で有名な「内浦へ来たって感じがするスポット」の金沢版が欲しくなります。

トンネルを抜けた海辺の景色に内浦と勘違いする人が多い「口野放水路」

蓮ノ空の舞台巡礼と"今"が意味すること

μ'sを思って訪れる秋葉原は彼女たちが残したスクールアイドルの世界を辿っている。
Aqoursであれば彼女達が生きる街を巡っている。
虹ヶ咲なら"あなた"として同好会と肩を並べて歩いている。

個人的にはそんな風に思いながらそれぞれの舞台を歩いています。
では9人と今を共有する蓮ノ空の舞台を巡るって、どういうことなんだろう?
同行者達のリアクションを見ていてふたつの見解が浮かびました。

ひとつは物語の時限性がとても高いこと。
私が初めて訪れた日は、既に103期生だけがいる世界ではありません。

「いつまでも あると思うな 親と聖地」と冗談めかして言われますが、こと蓮ノ空に関して言えば過去一のスピード感で作品側が変化していきます。舞台側の変化で言えば、ここ数年はお台場なんでしょうけどね。

解体中の観覧車


私は新作公開など作品が変化する前(つまり不可逆的な変化を迎える前)には舞台を訪れるようにしています。同じ舞台でも見える世界が変わってしまい、時には閉じ込めたくても閉じ込められない景色があることを知っているからです。蓮ノ空のファンは、過去シリーズのなかでもとりわけ変化に対して機敏で貪欲に向き合っていることを感じました。

もうひとつは、配信プラットフォームらしい向き合い方をしていること。

蓮ノ空が配信という性質上、思考プロセスとしてはアニメやゲームで登場した場所を後追いするよりは、インフルエンサーに感化され現地へ赴いている感覚が近いのかもしれない心地を抱きました。

表出されるのは、推しが食べていたもの・訪れていた場所・物語が動いた場所 etc…と他の作品と変わりません。しかし、表出されるまでのプロセスにはこれまでのシリーズとの違いを感じました。

「焼き工房 土九」の鯛焼き (おいしい)。お店には寝そべりがありました。

個人的に金沢のお菓子は甘さ控えめなものが多くてとても好きになりました。

金沢市街地の歩きやすさとオブジェ

ゲーマーズでスタンプ台帳を入手したら、いよいよスタンプラリーが始まります。

金沢ゲーマーズ

道中気づいたことは、金沢市街地は観光導線が明確で道案内の標識も多いことです。道案内でスマホを見る位なら俺たち(街)を見ろと言わんばかりです。

駅を出たら交通専用の案内所まである驚き
至る所に見やすい案内が設置されていて便利

なんなら街の照明や色温度を統一されていて、夜歩くときも変な違和感を覚えることがありません。そうした丁寧で意識的な町作りが景観作りと居心地の良さを支えていると感じました。

スマホで撮ったら全然伝わらない…

そして様々なところに変わったベンチやオブジェが設置されています。
歩いていると謎のオブジェに出くわすお台場と似ています。


ただ、ふたつの街には大きな違いがあります。
お台場は計画都市で民俗・文化的な文脈が薄くパブリックアートで括られて設けられているのに対して、金沢は歴史的に積み重ねた文脈を表現する一端として設けられているのです。

QRコードを読み取ると紹介HPに飛べるギミック付き

臨海副都心の歴史やオブジェを調べる身としては、時折お台場に感じる空疎な感情が呼び覚まされて羨ましくなるのでした。オブジェが街に溶け込んでいる…と。

とはいえ、そうしたオブジェのラブライブ!内の扱われ方を考えた場合、少なくとも悲観する話でもないと感じてます。例えばアニガサキではお台場のオブジェが多数登場しますが、コンテクストがないからこそ制作陣が自由にニジガクと掛け合わせられてるように見えます

ここで「実はこの公園の装飾は宇宙をモチーフにしていて、このベンチはそのひとつなんです」という前提説明は不要です。「虹の形をしたベンチって虹ヶ咲っぽくて良いな」ってだけで受容できてしまいます。伝統を重んじる蓮ノ空と自由を標榜する虹ヶ咲の対照的な部分は、今後市街地の表現でも可視化されるのではないかと期待しているポイントです。

美しさの背景まで伝えようとする文化の気迫


スタンプラリーには金沢城公園、金沢蓄音機館、加賀友禅会館が含まれます。

金沢城公園

これらに共通していたとは、古いものや美しいものをただ展示するだけではなく、生まれた経緯や背景を説明あるいは実演まで含めているところでした。
金沢蓄音機館では実際にレコードの演奏を実演して下さりましたし、カメラ好きなガイドさんとその話題で盛り上がる時間を過ごすこともできました。

実際に演奏を聴ける金沢蓄音機館

金沢城公園では石垣が展示され、時代ごとの違いが解るようになっています。パネルだけ設置されている東京・お台場とは大違いです…。

ついつい品川台場を思い出します

単に見せるだけではなく背景まで説明する姿勢には、伝統を重んじ引き継ぐ蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの姿勢と共通する部分を見出すことができ、街と作品のシンクロを通して彼女達の実在性を高めてくれます。

特に加賀友禅会館のコラボ展示では衣装の企画書まで展示されています。
おそらく物語外の情報まで見せる必然性はないはずですが、作り手の情熱を伝えることで蓮ノ空もまた、美しい物語を見せるだけではなく経緯や背景までも伝えてファンに楽しんでもらう意気込みを感じます。

そういう意味で加賀友禅と蓮ノ空のコラボレーションは、同じ舞台で同じ想いを共有出来るコラボだと観じましたし、結びつくべくして結びついているように見えました。この街には、文化は背景も含めて伝えたいという一種の気迫があるように受けとめました。

(蓮ノ空の情報を発信しないアカウントにも関わらず、このトピックでは多大な反応を頂き感謝)

さて、先に述べたような歴史や伝統に触れておくと、今度は現代的な芸術と向き合う際の気持ち的なハードルが下がり、好奇心を駆り立てられます。
滞在中、金沢21世紀美術館の展示が見たくて立ち寄りました。

残念ながら震災の影響により無料展示しか鑑賞出来ませんでしたが、文化の背景を伝えることに情熱を持つ街だからこそ、現代的なアートと接した時もいつも以上に対話したくなるのが金沢かもしれないと感じました。

町並みと写真

蓮ノ空の文脈で金沢を訪れる前は、金沢と言えばのどかな農村と海辺のイメージが強かったです。今回のスタンプラリーのおかげで市街地を知れたことは収穫でした。

歴史ある佇まい
金沢21世紀美術館
夜の兼六園
尾山神社菊桜

終わりに

まとめ方に悩んだ結果、普段書いているライブの感想と同じくトピック形式にしてみました。他の方の感想とはだいぶ趣が異なってしまったかもしれません。

ターバンカレー美味しかった

蓮ノ空は、何より舞台巡礼体験のトキメキを思い出させてくれました。
そしてラブライブ!シリーズを街から捉える姿勢でいる自分にとって、金沢の街はこれまでのシリーズと似通った部分と異なる部分が混在する街でとても面白かったです。蓮ノ空以上に金沢の街と文化に馴染んでもらう趣が強いスタンプラリーは良く練られていました。

改めて金沢観光を振り返ると、歴史・伝統といった文化が展示から街中まで色濃く反映されており、ある種対極的なお台場を探求する身として、「文化」が作品に与えうる力を理解する良い機会になりました。

今回の舞台巡礼はカメラを手に金沢を掘り下げている知人らのおかげで満喫出来ました。写真を撮っていると、作品に登場する場所以外にも街に詳しくなっていくんですよね。そのおかげもあって金沢を多角的に楽しむことができました。個人的には作品を知りたければ解釈の積み重ねよりも街を知ること(急がば回れ)だと考えています。作品理解を深めるために、敢えて作品から離れて街や文化と向き合ってみるのもいかがでしょうか。

夜の金沢駅

今回その目的は十分に達成できましたが、一方であまりキャラクターの実在性を高める観光が出来なかったのが反省点です。次回はもう少し人物に寄り添った舞台巡礼をしたいと思います。

次に蓮ノ空の地元 金沢とその文化に触れられる機会が楽しみです。

ではでは。

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