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明日へ行く高咲侑と紡ぐ"あなた" 〜2つの虹ヶ咲と2つの主人公から〜

ステージに立つアイドルのイメージが強いラブライブ!。その横で、作品が増えるにつれファンも明示的に物語へ組み込まれるようになりました。恐らくその始まりはスクフェスの主人公と考えられ、AqoursのNo.10を経て"あなた"や高咲侑として物語の中心にまで据えられるようになっています。

今回はテレビアニメ2期に向けて、プレイヤーの分身だったあなたちゃんが高咲侑としてビジュアル化されたことで虹ヶ咲の物語と活動にどういう変化が生じたか、スクスタとアニガサキを行き来して紐解いてみた話です。仰々しい前振りですが、突き詰めれば割と自分の「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」における主人公観になってます。

ようこそ怪文書へ。

分身としてのあなたちゃん

初めてニジガクが登場したスクスタにおいて、「あなたと叶える物語」の主人公あなたちゃんは声とビジュアルがありません。意思こそありますが、誕生日はプレイヤーですし、RPGの主人公として一人称視点で楽しめる分身を意識して作られています。(もちろん客観的な物語として読み進めることはできます)。読んでいるあなたも書いた私も等しく歩夢ちゃんの幼馴染みである"あなた"です。やったね。

スクスタリリース当時から侑ちゃんのビジュアルが登場するまでは各々のあなたちゃんのイラストが沢山登場していました。

象徴としての高咲侑

高咲侑とは、「みんなで叶える物語」となったニジガクの一員として容姿・声・名前を獲得したあなたちゃんです。

その為にスクスタをベースとしたライブでは侑ちゃんがいません。ですが横田さんが4th Live!で描かれたイラストや久保田さんの挨拶が示すように、彼女はきっと会場から応援している…そんな風に今やニジガクを応援する象徴的存在(アイコン)になっています。

侑が可能にした景色

身も蓋もない話ですが、"あなた"がリアルでニジガクに会って直接応援することは殆どの場合叶いません。演出を除けば、ライブであってもステージ上と観客席で隔てられています。ですが高咲侑と演じる矢野さんはそれが可能なポジションにいます。様々な媒体を通したキャストとのやりとりやピアノ演奏を通してライブに参加していること自体、いわばあなたちゃんでは成し得なかった光景です。(たまに高咲侑にジェラシーを覚えるのもやはりあなたには出来なくて侑にしかできないことの裏返しですね)

侑の登場とニジガクを推す構造の変化

以前ニジガクの推しより侑を選ぶようになった話をnoteで書いたところ、多くの方に響いたようです。

もちろん侑自体にたくさんの魅力があります。それはそれとして、スクスタでの"あなた"として直接ニジガクを応援する構造から、"あなた"が高咲侑の取った行動を通してニジガクを応援していくフィルターやハブのような役目を侑が帯び始めたように感じています。そうすると、元来スクールアイドルを応援する側にいる高咲侑自身も頑張れと応援される側の存在としても際立っていきます。ある種の階層構造ですね。

この辺りの認識はアニガサキからラブライブ!シリーズに入ってきた人たちの方が無意識的にやっているように感じます。シリーズを跨いでいると、最初はステージ上で歌い踊る子達の方を主として捉えがちですからね。

分身から客体化していくアニガサキの物語

「みんなで叶える物語」と高咲侑の独自性

アニガサキは、侑が自らの意思で前進するほどあなたの分身から高咲侑その人の物語として変化していきます。それを決定づけたのは同好会をきっかけに夢を見つけ、ピアノに触れ音楽科への転科を決めたことでしょう。名前のように"あなた"が決めたのではなく、彼女自身が道を選んだからです。現在の高咲侑にはニジガクを応援するあなたとしての普遍性と、みんなで叶える物語のあなたである高咲侑その人の独自性が共存しています。今後も後者が深化することで物語が広がっていくことでしょう。

高咲侑を形作ることになるピアノ

まだ埋まらないピース

高咲侑の物語として深化していく一方で、現在も高咲侑の誕生日は公表されていません。自己紹介の情報量でも他の子とは差が付けられていますね。誕生日はその人固有のイベントのため、侑の輪郭を定めきらない線引きのようにも感じられます。

一方で高咲侑の人気が明らかになり現在もファンが初登場の日や名前決定の日を祝う様子が見られます。そうすると侑の扱われ方にも変化が生じるのか気になるところです。最近関係者のツイートから高咲侑は製作サイドでスクールアイドルと扱いが異なっているという話もあったので未知数ですけどね。

競争が予想されるメガジャンボ寝そべり

スクスタ終了時に懸念される虹ヶ咲の物語の固定化

高咲侑の自立や人気を含めアニガサキが躍進を遂げた中、スクスタではデペロッパー・パブリッシャーに変更がありました。汲んで考えるべき点がある故に短絡的にサービス終了と結びつけられませんが、そうは言っても虹ヶ咲の物語から捉えた時、私もスクスタにサービス終了してほしくない理由が少なくとも2つあります。

1つめは、虹ヶ咲の物語が失われるからです。基本的にソシャゲは終われば読み返せなくなります。その点において、テレビアニメ化は虹ヶ咲の物語がアプリと一蓮托生することから脱出させた功績も含んでいると考えています。

2つめは、"あなた"と"みんな"の異なるコンセプトの物語が後者の高咲侑中心の物語に固定化されるからです。ソロをコンセプトにした強みはそれぞれのプレイヤーとスクールアイドルの距離を近づけられる点にあると考えているため、侑がいるとどうしても間接的にならざるを得ないからです。(もちろん侑とシンクロして楽しむ方もいるため、そこは捉え方の違いです)

侑が立ち会わない物語と侑しか知らない物語

スクスタがなくなれば物語が虹ヶ咲の物語が固定化されると書きましたが、そうは言いつつ、アニガサキにもスクスタで言うところのメインストーリーに加えて、キズナエピソードを思わせる部分があります。

侑がいない場所で進むメインストーリー

例えば「La Bella Patria」が披露される下りはほぼエマと果林で話が進みましたし、悩みを抱えたしずくを救ったのは璃奈とかすみでした。

私たちは、侑がニジガクから伝聞や撮影した映像でしか知らないものをスクールアイドル同好会の物語として目撃できる立場にいます。スクスタのメインストーリーの"あなた"にも同じことが言えます。

侑しか知らない場所で進むキズナエピソード

一方で侑だけが知る物語も存在します。それが第13話の夢ここで挿入されるカットであり、しずくのステージに向けて侑がアクセサリを準備するカットやエマに添い寝しているカットがそうです。

その場を目撃していない私たちには想像しかできず、侑から"こんなこともあった"と聞かされるかもしれない話です。いわば高咲侑にとってのキズナエピソードとそのスチルです。

スクスタのキズナエピソードは多くがあなたとスクールアイドルの1:1で進行します。そこがアルバム曲のルーツを描く場になっているのも"あなた"とスクールアイドルが直接対話していく部分に虹ヶ咲が持つ本質があるからと考えられます。

あなたの数だけ存在するキズナエピソード


ところで一般論として、侑に留まらず自分しか知らない虹ヶ咲との思い出や体験ってのはたくさんあります。それは"あなた"としてのニジガクの物語に接した感想もそうですし、ニジガクの活動に背中を押された話かもしれませんし、ファンとの交流かもしれないし、何か表現を試みたりしたことかもしれません。

好きだからクッキーで表現してみたって、良いよね

そうした体験は伝えなければ分かりませんが、伝える必然性もありません。それでもSNSを通して共感やコミュニケーションとしてかなり一般化したと言えます。重要なことは、伝えるか伝えないかよりも、まずは虹ヶ咲のライブへ行ったり聖地巡礼をして何かを感じ取ったこと自体それが作品やキャラクターと対話しているのであって、そうした体験はあなただけの固有のキズナエピソードと呼べるのでしょう。

ピアノ演奏と大阪に架かる虹から見る主人公の関わり方

あなたちゃんから高咲侑を紐解いて再びあなたへ。少し余談になりますが、振り返れば2つの虹ヶ咲の物語における主人公の違いはライブステージにも反映されています。

3rd Live!において、矢野さんは「夢がここからはじまるよ」のピアノ演奏を通してステージを彩りました。4th Live!では沢山の"あなた"の応援メッセージが「L!L!L!」のバックスクリーンに映し出されて虹が架かりました。

"あなたを叶える物語"としての虹ヶ咲と、"みんなで叶える物語"としての虹ヶ咲。異なる軸のライブが交互に楽しめるのは最高に贅沢です。

最後に、印象的な話としてランジュ役の法元さんが自身のラジオで語っていた話を挙げておきます。長らくあなた目線で見ていたニジガクからステージの一員になっていく話は、その話自体がとても引き込まれる話であり、キャストにとっての"あなた"についても示唆に富んでいます。(59分頃)

終わりに:夢を託す部分と自分で紡ぐ部分

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の物語において、高咲侑の登場で実現したことと変化していったことについて書きました。画面外の"あなた"だから侑の代わりに目撃できているものもあれば、侑しか知らないエピソードもあるし、応援するあなただけが持っているキズナエピソードも存在します。

アニガサキ2期前夜祭的な (撮ったのは前夜ではない)

映像も記録もないかもしれないけど、虹ヶ咲を通して"あなた"が感じて思ったこと自体が固有のキズナエピソードであり、あなたを"あなた"たらしめているのだと思います。その点において、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の物語はファンの数だけ存在します。(高咲侑は"あなた"を象徴する存在ですが、無数のファンの中から選ばれた1人の物語と捉え直すこともできます。)

"あなた"では叶えられない景色を高咲侑に託しつつ、自分は自分で"あなた"として虹ヶ咲に背中を押されながら自分の物語を紡いでいく。明日から始まるアニガサキ2期は未知さ故に不安な部分もありますが、自分はそんな感じで楽しんでいこうと思いました。侑ちゃん頑張って👍

謝辞:

今回のnoteを書くにあたってはお台場を中心にお会いした様々な方との話を参考にしました。とりわけ高咲侑とあなたちゃんについてぎぬまさん(@NEXT_Ginuma)とのやりとりを通してイメージが固まりました。島寿司うめぇしながら話してなかったら、多分ここまで書けなかったと思います🙏


「面白かった」「役に立った」など琴線に触れる部分があれば、スキなどのリアクションを頂けると今後書くモチベとテーマの参考になります🙏