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コロナ対策は「無症状で感染を広めている人を見つけて止める」べきでは?

【おねがい】
本文中の新型コロナウィルスに関する記載は筆者の個人的見解です。日本国内の検査規定や指針については厚生労働省のサイトに記載されている内容を確認してください。なお、本文中の抗原検査キットは抗原定性検査を指しております。

新型コロナウィルスの感染抑止のためには「酒類を提供する飲食店を止めろ」と繰り返されております。専門家の方々が集まって多くのデータを分析しているのですから的が外れているとは思っていませんが、芯は捉えていないように思います。今回は僭越ながら、コロナ対策に関する私案と、自分が少し調べたことを書かせて下さい。

芯を捉えていないと思う理由

日本は資本主義の国なので、国民はお金を稼いで、経済を回さないといけないです。コロナに感染している人にだけは経済に参加してもらいたくないですが、それ以外の人は、可能な限り全員、経済に参加してもらわなくてはなりません。

現状の「酒類を提供する飲食店への営業時短要請」はコロナに感染していない膨大な数の人の経済活動を止めてしまって、コロナ感染を拡大している人の活動は一部しか止められていません。加えて、酒類を提供する飲食店は国内の経済活動から独立している訳ではないので、その仕入れ先や生産者、サプライチェーン、店舗や事務所の不動産会社、その地主、厨房機器メーカーなど影響範囲は広大です。それで、その膨大な数の人と広大な影響範囲を国家の判断で止めるとなれば、保証が求められますし、その金額は途方もない額となります。

更に、コロナ感染拡大を抑止するのにどれくらいの期間が必要なのかわかってないので、この営業時短要請がいつまで継続されるのかもわかりません。中途半端なところで要請を解除して感染が再拡大したら「なんで止めたの?」ってなりますし、長く止めれば止めるほど国家が負担する保証額は膨れ上がっていきます。「ワクチンが普及するまでだよ」と言うご意見もあると思いますが、ワクチンが感染抑止できるようになるのがいつになるかわかりませんし、米国ではこんな記事もあります。

「経済活動は止める、ゴールは見えない、保証はバラマキ」に見えてしまうところが、芯を捉えていないと感じる理由です。もちろん、未知の敵との戦いなので、答えを知る人はいませんし、国家レベルを動かすことの難しさもあると思うので、現状の対策を否定している訳ではないです。

無症状で感染を広めている人を見つけて止める

では、どうすべきかと言う話ですが、自分が思うにまずは「無症状で感染を広めている人を見つけて止める」べきだと思っています。

前段でも書いた通り、資本主義において経済を止めると被害が大きいです。倒産や解雇が社会不安を煽り自殺が増加します。保証等のための財政出動が生む国債の大量発行などで財政健全化も遠のきます。

つまり、可能な限り経済は動かしたいので、止めるべき対象は最小限にすべきです。

止めるべき対象は、感染を拡大させている個人です。

しかし、困ったことに感染を拡大させている個人は感染を拡大させている自覚がありません。まだ症状が出ていなかったり、無症状のまま完治してしまうからです。無自覚に感染を拡大させている人は大勢いると思います。それは、僕かもしれませんし、あなたかもしれません。

この状況を解消するのに必要なことは以下だと思います。

全国民が毎朝、自宅で自分(及び家族)のコロナ感染状況をチェックして、当日の外出可否を判断する仕組みを作る。

これによるメリットは以下です。

1. 自分が加害者になるかもしれない可能性に気付ける
2. 感染を拡大する人の経済活動だけを止めることができる
3. 外出できなかった期間やその影響範囲に絞った保証に財政出動を抑えられる

言い換えると、感染状況を網羅的に追う必要があると言うことです。現状では、"検査に来た人"の"検査に来たタイミング"の感染状況しか追えていないので、感染を拡大させている個人どころか、感染総数もわかりません。だから、感染可能性の高い「酒類を提供する飲食店への営業時短要請」と言う打ち手になっているのだと思います。

今、行われているコロナの診断はPCR検査が主流で、検査を受けるために特定の医療機関等へ足を運ぶ必要があります。そして、検体を専門機関で検査する必要があるので、結果が出るのに数日を要します。つまり、検査を受けに行くまでの間/検査結果が出るまでの数日間、(陽性者は)ウィルスを撒き散らし、感染を広げます。この自体を避けるには、検査を自宅で受けられるようにして、且つ、検査結果が出るまでの時間を短縮する必要があります。現状、これを可能にする自宅用の抗原検査キットがいくつか販売されています。

また、コロナウィルスは症状がなくても周囲に感染を拡大している場合がありますし、一度治って(抗体?ができて)もまた感染します。なので、例外なく全員が毎朝チェックする必要があると考えます。

この仕組みが成立すれば、コロナウィルスに感染している可能性の高い人が無意識に感染を拡大させることを避けながら、感染していない人が通常通りに経済活動を行うことができます。

なぜ、どこの国もやらないのか?

この「毎日自宅でコロナチェック」について調べたところ、2020年の4月には、アメリカでMITやハーバード大学等が参加するSHERLOCK(Specific High-sensitivity Enzymatic Reporter unLOCKing)と言う機関が、検体をラボに送ることなくその場で診断できる検査キットを開発し始めています。

このような検査キットはBecton, Dickinson and CompanyAbbott社、Quidel社によって製品化が進められ、一部は唾液で検査できるほど簡単なものもありました。そして、これらがホワイトハウス養護施設など、いろいろなところに配備されました。

しかしながら、検査キットによって陰性と判断された人々が、検査結果を信じきり、パーティー参加のフリーパス手に入れたかのように無謀な行動に出たため、そこからの感染が多発しました。

この簡単な検査キットはPCR方式ではなく抗原検査方式を採用しており、PCR方式よりも精度が劣るものでした。後に、唾液での抗原検査は不可能であることも発覚し、このような抗原検査キット自体を懸念する声が高まりました。

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しかしながら、PCRのタイムラグ問題や感染拡大が治らないこともあり、高頻度検査の重要性が叫ばれ始め、2020年の夏にはコロナウィルスの検査は"頻度派" vs "精度派"の様相を呈しました。両者の主張は以下の通りです。

頻度派
診断に数日を要してはリアルタイム性を欠き、感染者の活動を抑えられず、感染拡大を抑止できない。低精度でも感染を広げる可能性の高い感染者は大量のコロナウィルスを抱えているので見逃さない
精度派
全員毎日となるとサプライチェーンとコスト負担が大きすぎる。精度が低い上に、各個人に任せると、検体採取が不適切だったり、実施しなかったりして、高頻度が徹底できない。

また、当時、医薬品の承認を行う米食品医薬品局(FDA)と言う機関が、"頻度派"の精度が医薬品基準を満たさないとして認可しなかったことも相まって、"頻度派"の旗色は悪くなりました

その後も抗原検査の精度向上や、唾液を使った家庭用(PCRよりも早いが低精度)LAMP検査の研究が進められていますが、サンプル数も少なく実現のハードルは高そうです。

米国以外の例ですが、スロバキアにて2020年10月31日に国民全員検査が行われました。これは国民を特定箇所に集め、大量の医療従事者によって長時間に渡って検査したため、国内外の専門家から批判が集まりました。感染状況の全体像は把握できましたが(ある一点のスナップショット)、全国民を大移動させたので、大きな成果にはつながらなかったようです。

以上から、「毎日自宅でコロナチェック」が実施されなかった理由は、以下にまとめられます。

- 検査キットの製造や在庫管理、流通のコストが大きい
- PCR検査に比べて検査精度が下がる
- 検査を徹底させる運用面の整備が困難

それでも「毎日自宅でコロナチェック」を推す理由

アメリカの"頻度派"の中心は、ハーバード大学公衆衛生大学院のマイケル・ミナ博士です。彼は上記のような反対にあっても、高頻度抗原検査を推進すべきと主張します。この主張に僕は個人的に強く賛同しますので、その概要を前項の「実施されなかった理由」に反論する形で記載します。(僕の解釈が混ざってます。ご了承ください。)

反論1→"検査キットの製造や在庫管理、流通のコストが大きい"

全員毎日実施する必要はなく、国民の50%が週に2回実施するだけでも、ウィルス伝播の持続性を断ち切ることができ、感染抑止に繋がる効果を得られるそうです。この数(50%が週に2回)を目指すなら、様々なコストは想定よりも圧縮でき、現実的な値になりそうです。また、製造能力の構築と生産に$150億を要すると試算していますが、今まで費やしてきたコロナ対策及び保証費用と比べると雀の涙であり、実際に感染抑止が早まればGDPを引っ張り上げ、マイナスが回収できると反論しています。

反論2→"PCR検査に比べて検査精度が下がる"

迅速な抗原検査は感染状況を検査するのではなく、感染力を検査するものであり、(死んだウィルスまで検知する)PCRは感度が高すぎて、むしろ役不足であるといいます。抗原検査はPCRに比べて精度が低いのではなく、感染力が高い状態だけを検知できるとのことです。これによれば、PCRが過剰に検知してしまっている感染者が医療体制を逼迫させている状況を回避したり、隔離すべきでない人を炙り出して、経済活動を再開させることもできるということです。

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上の図は、資料から僕が見様見真似で描いたので、詳しくは以下の記事をご覧ください。

反論3→"検査を徹底させる運用面の整備が困難"

徹底させるのではなく、「家族や同居人、同じ学校や職場の仲間に感染を拡大している人がいないか」、「自分は愛する人にコロナ感染させていないか」を知りたい人の気持ちに委ねるとのことです。多くの死者が出ている現在、こういった気持ちの人は多いと想定されます。従って、(プライバシーはしっかり守り)参加や報告を任意にすることで、強制はしないといいます(計算上は国民50%が2回/週実施で成立するため徹底は絶対ではない)。また、朝の洗顔や歯磨きと同じ流れで15分から30分を費やすことで、これが実現できるなら、ウィルス感染率を下げるための責任ある行動をとりたい人には、むしろ選択肢を提供すべきだと言います。

忘れないで頂きたいのは、ミナ博士も高頻度抗原検査が絶対であると言っているわけではありません。感染していないからといってパーティーを繰り返すなどの無謀な行動を取らないことは当然として、マスクや手洗いの習慣も合わせて継続されるべきだと説いています。

僕が思う、日本への適用方法

僕は「毎日自宅でコロナチェック」もとい「週2で自宅でコロナチェック」を速やかに日本でも採用してみるべきだと思っています。もちろん絶対に効果があるとは言い切れないので、まずは小さく(地域を絞って)始めると良いと思います。始めてみることで効果も検証できますし、投資すべきか否かも判断できます。また、実運用にはトライアンドエラーがつきものなので、この辺りも改善すべきポイントが見つかりそうです。

そしてもちろん、お金はかかると思います。最近発表された日本の抗原検査キットは¥880/回です。これをある特定の地域の全員に届け、週2回実施させるとなれば、費用は大きいです。僕の住む東京杉並区だけでも人口は56万人なので、2週間実施するだけでも単純計算

¥880 × 56万人 × 2回/週 × 2週間 = ¥1,971,200,000(19億7千万円)

高額ですね。50%だとしても9億8560万円。これに流通費用が加わると考えると、コストを抑える研究が必要だと思います。

ざっくり想像できるだけでも研究開発費、検査キットの製造拠点と生産体制、在庫管理や流通体制の整備・運用費用がかかると思います。しかしこの費用は公的機関に負担してもらいたいです。国民を守ることが国政の使命ですし、先の見えない規制やバラマキ保証・振興策よりも、既存の経済を回しながら感染拡大の原因に近づき、元を断つための試作に国費を投じてもらいたいと思います(2020年コロナ対策は総額73兆円でした)。

日本は国内流通を支えるコンビニエンスストアがありますし、e-コマースの発達で当日翌日配送も充実している。出前館やUberEatsなどのデリバリーサービスも成長しています。そういった企業の協力を取り付けることができれば、より早い社会実装も実現性を帯びると思います(感染拡大著しい都市部の話です。地方の流通体制はこの通りではありません)。

近年、発展が著しい中国は「国家レベルでの失敗を恐れず、社会実装実験を繰り返すので、国家レベルで失敗のナレッジを蓄積し、実用性の高いサービスを早く生み出すことができる」と聞きました。日本と中国では様々な条件が異なるので、そのまま真似ることはできませんが、日本政府は国家無謬性を捨て去り、目的(仮説)や期限を持った社会実装実験であることを宣言した上で国民に「試作」への協力を依頼すべきだと思います。国民の側は寛容性をもって国家の失敗を受け容れ、協力する必要があると思います。

最後に

コロナウィルスは基礎疾患がある方や高齢の方にとっては、死亡してしまう懸念が高いウィルスであると言われています。逆に、感染を拡大しているのは活発に交流・活動している若い世代だと言われています。だから前者を隔離して、後者に経済を回してもらおうという意見もあるようで、僕はこれにも賛成です(森岡毅さんのコメント on 箕輪厚介さんのtweet↓)。

また、若い世代は成人式や甲子園、修学旅行など、大切な人生のイベントが多くある時期です。これを極力止めずに、コロナ対策を進めるべきだという意見にも本当に賛同します(田村淳さんのtweet↓)。

だらだらと好きなことを書かせて頂きました。ご意見やご感想、誤りの指摘や反対のご意見は歓迎です。また「週2で自宅でコロナチェック」を日本で実現するためのご助言やご協力のコメントは大歓迎ですので、お気づきのことがありましたら、メッセージをください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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