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学生という立場に甘えてきたこれまでの日々のこと

 「私、まだ学生なんです。」
 大学生になってから、何度この一文を使ってきたことだろう。使うたびに思う、本当に使い勝手の良いワード。

 これを聞いた相手の態度は変わる。「そうなんだ!頑張ってるね!」「これから先、まだまだ色んなことができるから頑張りなよ!」「やりたいことに向かってどんどん走るといいよ!」
 ……どうやら、世の中の大人たちは「学生」という身分に不思議なくらい甘いらしい。

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 私は大学に入る前に一度、ホテルで住み込み勤務をしていたことがある。当時は学生でも何でもない身で、あくまで一人の「客室係」。
 二十歳になるかならないかで、かつ見た目も中身も大人びているほうではなかったから大目に見てもらえていた部分が大きかったんじゃないかと今となっては思うが、マインドは子供のままだった。
 幸い、どうしようもない批判を受けるほどのことはなかったが、「学生」という身分が無いことに心細さをおぼえた瞬間も何度かあったように思う。

 そうしているうちに大学生になった私は、そこそこ名の通った大学の「学生」のカードを手に入れて、そこから今日まで不自由なく、そのカードを振りかざして進んできた。
 しかし最近になって、ふと「このまま、”学生”の環境に甘えていて良いのだろうか」と思うことが増えてきた。正確に言えば「学生の環境に」というよりも、それに浸っているゆえの「自分への甘えに」。なんだかそれが、だんだんと納得いかなくなってきたようなのである。
 私は学生だけど、私は私。シンプルにそれだけで良いはずなのに、つい余計な考えを織り交ぜて、自ら話を複雑にしてしまっている。

 自分の力以上の場所に行けば、つい「まだ学生で……」と言ってしまうし、本来であればそんなものは付加価値程度で良いはずなのに、「学生である」という事実を盾にしなければ、なんだか心細くてソワソワする。そのくせ、学生としてひとまとめにくくられるのが嫌で、背伸びして、学生の枠を超えてみようと試みることもある。

 学生なんて関係ない。本当の意味でそう言えるのは、「学生だから」と口走ってしまう癖をやめることはもちろん、自分のことに責任をもつ覚悟ができてから。
 学生を語るのは、もうあと1年間。学生という立場を「利用する」ことはあれど、「甘え」ないようにしたい。

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