いくら考えたとて

さあ始まった賞レース。初日を見学。満席だ。
お客さんは他日程の出場者か?マンゲキ大好きさんか?賞レースマニアか?応援の友達か?寄席っぽいならネタもこうして賞レースっぽいならああしよう。
満席は初日だけか?満席で皆ウケてる感じならフリ長いデカい一発じゃないな、手数を増やそう。けどガラガラなら時間かけてでも確実に笑い声をあげさせなきゃ。自分の日は平日。ブロックによるか。ブロックが分かるのを待とう。
満席は満席で不利なこともある。2回戦も同じ場所同じネタ尺だ。1回戦がウケてればウケてるほど記憶に残ってしまいバレまくってて2回戦はズルズルにスベった、なんて話も稀にだが聞いたこともある。初日で爆ウケしすぎるのも考え物だ。
会場の大きさはどうだ?大きく動くコントの人は映えるか?俺のフリップの横幅は足りるか?MCさんの身長を175㎝として横に倒してみて・・・6m弱ってところ。ギリか。
審査員は誰だ?あの人か。あの人はメタとか嫌いなイメージやけど今日出るアイツのネタはどう捉えられるか・・・。
そして同じ審査員が1回戦を2度担当することはないから自分がこの人に当たる事はない。残るは○○さんか△△さんか※※さんあたりか。○○さんにはいつもハマっていない。
○○さんは嫌だ、○○さんは嫌だ、○○さんは嫌だ、、、

結果が出た。
審査員のあの人はこういうのは通してこういうんは落とすのか。2回戦以降の参考にしよう。
あの有名人が落ちている!途中からしか見に行けなかったから理由がわからない。理由はなんだ?ネタを飛ばした?普通にスベった?ブロック近かったアイツにLINEして聞いてみよう!・・・なーんや仕事で後日に振り替えてるだけか。
ほかの落ちてるとこで言ったら・・・##が落ちている。去年準々決勝いったネタでいくっていってたのに。やはりマニアにしても同業者にしても去年安くないチケット代を払って準々決勝来たほどの賞レース好きは翌年の1回戦にも来る。ネタの使いまわしは安心感もあるがリスクも伴う。

自分のブロック分けが発表された。Bブロック。平日ド昼間。初日でもないし見に行った時より確実にお客さんは少ないだろう。客層予想は賞レースマニア5同業者4その他1。そのイメージでいこう。

前日。やれる準備はした。初日の通過組数から考えた明日の通過組数、そこから確実に通過する人数を引いていき残りの枠数を指折り数える。少ない。その残り少ない枠を賭け、残りの通過しそうな人たちと自分を脳内で戦わせてみる。それに意味なんてないのに。

いよいよ当日だ。ギリ間に合う時間に起きたのでは舌も回らないので余裕をもって起床。中で買えるとは限らないから水分は十分に。

入り。審査員は・・・※※さんだ!セーフ!
準備を進めながらも耳は会場に向ける。ウケていない。激重だ。自信無さげな面持ちの出番おわり組の中では比較的まだましな表情のアイツに声をかける。どうやった?客層は?案の定の激重と寄席っぽくない客層。そして予想よりグッと少ない客数。重いのは嫌だがおおむね予想通り。悲観しすぎないように。

袖に入る。善意のスタッフさんが小道具の壊れそうなところを持たない様に自分でセットする旨を伝える。進行上は複数人でやってスムーズにいくべきなのも分かっているが、人生懸かった舞台だ。これぐらいのわがままはいわせてもらおう。
出番2.3組前からは人のネタを聞く。空気はどうだ?少しでも被っているワードはないか?相も変わらずの激重。お客さんの笑いの間もないから時間は余裕だ。ゆっくり聞かすようにやろう。
さあ自分の出番。セッティングも完璧。客席をちらっと。配置がやや左寄り。フリップはやや体を開いて見せることにしよう。
手をあげる。開始の合図。出囃子が鳴りやみ、ネタが始ま・・・

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