結婚時期は本人同士が決めること

「この大事な時期に、結婚を許すわけにはいかない」
円谷幸吉というオリンピックメダリストが自死に追い込まれるきっかけの一つとなった言葉です。

1964年の東京オリンピック、マラソン種目で銅メダルを獲得した自衛隊員円谷幸吉は、次のメキシコオリンピックでもメダルを獲ることが目標となり、国民との約束になりました。

しかし、腰に故障を抱えながらの練習は思うようにいきません。
そんな中、一人の女性と婚約します。
彼女と共にあってこそ、つらい練習も あるいは望まぬ結果も 乗り越えられる──はずだった。

結婚が彼のパフォーマンスに悪影響を及ぼすと考えた自衛隊体育学校校長は彼の結婚を許しませんでした。

オリンピックの重圧、期待される姿と本当の自分の乖離、腰の痛み、コーチを失った孤独...
そして愛する女性との未来を潰された円谷幸吉は、ついに自らの命を断ちました。

彼の物語は、「栄光なき天才たち」(森田慎吾)が非常に分かりやすく漫画に描いていますので、ぜひ読んでみてください。

コーチもおらず、共通の夢に邁進する戦友もいない羽生結弦さんが
疲れ切ってしまう前に、今、この時期に結婚できて良かったと思います。



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(スキマ)


円谷幸吉の自死の理由についての記事に、文藝春秋の記事がありました。
こちらは好きだった女性との結婚が破談に追い込まれたことが原因としています。
下はその一部を紹介したブログです。

文藝春秋より


また、一方で、次のような論文があります。
こちらは、競技者が背負う「重圧」に、より主眼をおいています。
国民的英雄・円谷幸吉という共同幻想が作られていき、生身の人間である円谷ひとりに国民からの期待と重圧がかかってしまったことに触れています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjses/30/1/30_13/_pdf/-char/ja
(Okabe Y et al. スポーツ教育学研究 2010. Vol.30, No.1, pp. 13 - 23)

羽生結弦さんも、P&GのCMで「みんなで『羽生結弦』を作ってた感じ」とも言っています。
GIFTでは、みんなの思う『羽生結弦』と自分との乖離と、みんなが期待する『羽生結弦』でいたいという自分の思いに、苦しんだことも描かれています。
競技時代しばしば『羽生結弦という存在』と言葉にすることがありましたが、あれは、共同幻想・羽生結弦はプライベートの自分自身ではないという主張であり確認であり、心の防衛方法の一つだったのではないかと私は思っています。


なお、円谷幸吉を自殺に追い込んだとされる元上司ですが、彼も、国民を裏切るわけにはいかないという重圧を背負わされた「被害者」の一人だったと思います。



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