(ネタバレあり)PEACE NIPPON

正直な話、日本の風景を高画質で延々と映し続ける作品なので、ネタバレしても問題ないと思いつつ。気になる方は読まないように。









というわけで。

まずは文句。

素晴らしい作品と思いつつも、文句つけるとしたら俳優の使い方。冒頭、足跡一つない快晴の雪原を和服姿の女性が赤い和傘を差して歩いている。

、、、何をどーしたら、そんなシチュエーションが発生するねん!申し訳ないが、その絵面に苦笑してしまった。

そこからカメラは上空からのショットに変わって、赤い和傘と雪原から日の丸が連想され、PEACE NIPPONのタイトルが現れる。おそらくそれを撮りたかっただけで、女優がどうして、あの空の下で、あの格好で、一人で雪原を歩いてるのか、その必然性が全くわからなかった。

もう一つ、茶道の場面も同様。あの男女の間にどんなドラマがあるのか、全くわからない。

ひょっとしたら、高畑勲作品のように、宮崎駿の風立ちぬのように、基礎的教養がないと全く理解できないレベルの何かが秘められているのかもしれないが、私にはわからなかった。

この監督さん、SFサムライフィクションの監督とのこと。他の作品は見ていないが、SFは、絵は綺麗だった印象しかない。ドラマ、ストーリーが全く思い出せない。随分昔に見たのでうろ覚えだけど。

申し訳ないが、俳優の使い方がそんなに上手くない方なのかもしれない。もしくは敢えてそうしているのか。それはナレーションの東出さんにも言える。あまり滑舌が良くない。おそらく、洋画吹き替え系の声優さんを起用すれば、もっと聞こえやすい作品になったであろう。それとも小泉今日子さんとのバランスで彼にしたのか、、、人物起用はもっといい方法があったんじゃないだろうか。

と、批判はここまで。

作品は3部構成。1部は日本の宗教について。自然崇拝、神道、仏教について。学生時代、国を支配するために都合が良かったので、宗教を利用したという教わり方を私はしたのだが、確かにその一面はあるだろうけど、本作品内では、そうは語らず、人々の安寧のためという表現に徹している。

第2部は日本の四季

第3部は、日本の風景を南から北へ見ていく。

1部と二部で、ずーっと4kクオリティのとても綺麗な日本の風景をずーっと見ているのだけど、本作の本気が現れるのは第3部からでした。

震災前の熊本の天空の道、その昔、地理の学生だった私は、地形に感動。そこからの怒涛の流れは圧巻でした。

また、いくら4kの美しい風景でもずーっと見ていたら飽きます、ナレーションも単調ですし。しかし飽きなかったし眠くもならなかったんです。なぜか。それは音楽。基本何かしらの音楽は本作ずーっと流れてました。

ただ、よくよく思い返すと、雅楽がほとんど入ってなかった記憶があります。(覚えてないだけでどこかで流れていたかもですが。)日本の風景の映画なのに、自然だけでなく寺社仏閣、お城も登場するのに、和といえば雅楽という短絡的な選曲をせず、このシーンで、ここの繋ぎで、この展開でこの楽曲を使うのか、という絶妙な選曲が見事でした。

私的には、ボレロのリミックスにビビりました。ここでボレロつかうのぁー!?とびっくりした次第。

最後に、深いレベルでの本作の感想。

たたみ掛けるように見てきた日本の美しい風景。本当にこの国は豊かな自然、風景、景観に囲まれた国だったんだと知ることができます。しかし、残念ながら、その豊かな風景や景観は無くなってしまうことがある。その例として、地震前の熊本の天空の道と熊本城が映される。(実際には撮影後に地震が起こって、ああいう表現に変えたのだろうと推察)私たちはそれを守ることが必要なのじゃないだろうか、ということ。

そして、人の手によって”桃源郷”とまで呼ばれるようになった花の名所が最後に登場する。福島の花見山公園(http://www.hanamiyamakoen.jp/)である。

福島というと、どうしても原発のイメージが思い浮かんでしまうが、今作の一番最後に、美しい日本の風景がたーっくさん登場する作品の最後にあえて福島のこの名所を登場させたのは、、、人が何もせずに、天の采配によって自然に創られたものではなく、人の手でここまで出来るんだぜ、というのを伝えたかったのだろう。

ここからは考察。

資源がなく、海外に頼らざるを得ない国だと思っていた。しかし、目線を変えればとても豊かなものを持つ国であった。足らないものを外へ求めるのではなく、すでに内にある豊潤さを理解し、それを大切にすること。

それは個人にも言えること。自信や自尊心を持ちにくい国民。自分に何かが足らないから、それを埋めようとして、外へ外へ探し求める。終わらない外へ向かう探求。

いや、実は、足りないものなんてないんじゃないの?埋める必要ないんじゃないの?すでにあなたは豊かな存在であり、そしてあなた自身を大切にすることこそが、大事なのではないか。

そして、あなたは何をするのか?何をしていくのか?

そんなことを気づかせてくれる作品でした。

ただまぁ、大切にするといっても、自然景観に関しては、風雨や波食によって削られてしまうのは仕方ないんだけどなぁと思ったりもしますけども。

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