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新参のカモの投資手法

 こんにちは、株初めて1年ちょいのド新参のカモです。そんな名の知れない新参の奴の手法なんかを知りたい人はほとんどないかと思いますが、以下の理由から株を買う際にやっていることについてのnoteを描きました。

1. なんだかんだ雰囲気でやりがちなので、自分の思考を言語化しておきたい
2. 新参時代に記録を残しておいて、数年後はこんなことやっていたのだと将来的に振り返る材料にしたい
3. 見てくれた凄腕が「これは間違ってる」と突っ込んでくれて、自身の知識の修正になる (可能性がある)

 また、おそらく多くの投資家は、実際に株式を購入するまでに以下のプロセスを踏むことになるかと思います

「いい会社ないかな~」
↓ 
① ターゲットの洗い出し (ロングリスト作成)

「お、いいかも!」

② ターゲットの絞り込み (ショートリストの作成)

「買っても大丈夫かな」

③ 対象企業への深堀調査

「買いたい!」

 が、今回は③の深堀調査に焦点を当て、①や②表面的なスクリーニングについては触れません。


深堀調査の目的

 まず、この深堀調査をあたっての目的をしっかりさせておきます。このフェーズの調査においての目的は「投資対象としての適格さを判断するための企業の実力値をビジネスの視点で客観的に評価する」ことになります。
 また、そのためにやるべきことは
旨味の明確化 (競争力の源泉は何か、それはいつまで続くか)
リスクの明確化 (競争力を損なう内外要因は何か、それが起こるとしたらどのようなときに起こるか)
①、②の数字による評価 (旨味とリスクをPLに落とし込んだ際のリターン(EBITDA)はどの程度か)
 の3つになると思っており、「深堀調査」というよくわからないざっくりとした単語を書き下すと「投資を前提にビジネスの視点で客観的にどういう旨みがあるか、どういうリスクを見込むべきかをはっきりさせる作業」と言えると思います。

旨味とリスクを評価するにあたって注すべきポイントの洗い出し

 そこでまず私がやっているのは、「いったい何が明らかになればその企業の旨味とリスクを把握できるのか」という、問の細分化です。

 例えば、ある企業を調査した際の旨味を明確にするために抽出した論点は以下のようになりました。
・市場の魅力: 今後も伸びていきそうか?
・競争力: 現時点において対象会社の競争力はどの程度か?
・収益力: 対象企業の収益性はどの程度か? また、それは安定的なのか?
・成長力: 今後の成長余地は存在するのか

 これはもちろん見ていく企業の種類や投資の目的によっても異なってくるので、上記のはあくまで例です。ただ、具体的に作業や分析、調査に入る前に「何が分かると嬉しいのか」というゴールに自覚的になっておかないと無間の作業地獄に突入してしまいますので、こういうものは書き下してちゃんと定めておいた方が良いです。

調査の全体像

0. 仮説的な投資ストーリーの初期案作成

  また、この初期段階で仮説的な投資ストーリを描き切るようにしています。基本的に調査というのは"やれること"は膨大で、ゴールの形を初期の段階で決定しておかないと無限の時間が溶けてしまうためです。私がよく書きがちなゴールは以下のような形です。

 大枠のストーリーが決定したら、この内容を裏付けるために定量的な事実を集めて推論をしていくという作業に入っていきます。

1. マクロ市場の調査

 この際は、全体感をちゃんと把握したいため、対象企業が注力している商品より一つ粗いカテゴリで市場を探り、そのあとその内訳をみるようにしています (例. 対象企業が東洋水産であれば、最初は即席めん業界の市場規模ではなく食品業界の市場規模を見てみる)。兎にも角にも、各カテゴリがこれまで年次何%で成長してきて今後は何%で成長していく見込みなのかを知ることは第一歩だと思っています。
 また、ただ数字を見るだけではなく、その数字を作り出している要因についても簡潔に主要なものを2つ3つまとめておくようにしています (例. 化粧品業界であれば「消費者の美容意識の高まりによる複数の化粧品の併用の促進」「アジア人観光客によるインバウンド消費の増加」など)。
 そして、数字の集め方に関してでは、自分でロジックを立てて0から推論してもよいですが、ここに関しては私はよく調査機関のレポートを買ってしまいます。各省庁が発行しているレポートは無料で読めますし、多少お金はかかってしまいますが富士経済矢野経済のレポートは良く買っています。また、東京都立図書館に行けば、市場調査に関連した情報が山ほどありますし、司書さんの質も高いのでリファレンスサービスも並行して活用すれば欲しい情報が結構な確率で手に入ります。あと、かなり使えるのがIRへの問い合わせです。足元の市場規模と今後の成長予定を頭に入れているIR担当者も多く、高確率で答えてくれます。
 ほかにも情報の取得源としては日経ビジネス日経クロストレンド日経クロステックダイヤモンドオンラインの有料会員に登録しています(ただし、日経クロステックの技術解説は間違っていることが多い……)。
 その他の市場の情報源としては自動車・自動車部品メーカー関連の情報であればMarklinesFourin、輸出入統計であればITC - Trade Map、海外情報であればIbis WorldFreedoniaProfoundなどを利用しています。小売・消費財関連ではインテージからデータを買うという選択肢もありますが、これは価格が非常に高いのでやってません。株仲間の知り合いには消費財関連の情報はEuromonitorを用いている人も何人かいますが、個人的には数字がテキトーな感じがするので使っていません。

 定量的な数値を集め、市場の全体感をつかんだら、「ではなぜその数字で成長しているのか」の裏付けとなるキードライバーを仮説的に設け、その仮説を実証すべくオンライン・オフライン双方での調査を行います。以下は昔ナチュラル系化粧品市場について調べた時のアウトプット例ですが、大体こんなイメージで定性的なストーリーも把握しておきます。
 下は私が過去にやったナチュラル系化粧品の調査のアウトプット例です。

2. 個別企業調査

 ここまではマクロ的な市場動向を探ってきたのに対し、ここからは対象企業そのものを深堀っていきます。まず見る定量的な指標としては、

  • 売上高成長率

  • EBITDA marginの成長率

  • 商品カテゴリ・セグメントごとの売上構成比の推移

  • (C向け商品であれば) 各カテゴリごとのSKU数の推移

  • (C向け商品であれば) 取扱店舗数の推移

  • チャネル毎の売上比率

 とかはまず確認しておきます。チャネルごとの売上比率は公開していない企業も多いので、これはもう調査や手元にある事実から推測します。こういうのは公開情報がなくとも気合と根性とフェルミ推定で結構出せたりするものです。

 チャネルに関しては上のような形でまとめていることが多いです。

3. 各プロダクト・セグメントごとの分析

 この時によく使っているのはGoogle Trendsです。いつ市場が活性化し、過去にどのようなことがあったのかが一目でわかります。この時対象企業の製品だけでなく競合他社の製品と同時に検索すると、どのプレイヤーがそのカテゴリにおけるカテゴリーリーダーなのかが分かるので結構便利なツールです。

 その次は競合含めてどのようなプロダクトが強いのかを具体的に詰めていきます。私はここで「価格」と「知名度」を軸に業界全体の製品と比較することが多いです。「知名度」は主に①実店舗でどのくらい推されているか、②身近な消費者へのインタビュー、③雑誌記事の特集の組まれ具合、④Googleでの検索で何位にくるかの4つの切り口から判断することが多いです。先ほど挙げた化粧品の例とかではアットコスメなどの、利用者の多い口コミサイトのランキングもめちゃくちゃ確認します。
 私はここまでやりませんが、株仲間にはマクロミルクロス・マーケティングに課金する猛者もいたりするとかしないとか…… (怖っ)。とはいえB向けであれC向けであれ実際の利用者の声はめちゃくちゃ大事ですしブランド認知度が把握できるのは非常に強い情報なので無限のお金があれば私も課金しているかと思います。

新製品・技術開発プロセスの分析

 新製品開発や、既存商品のアップグレードにおけるR&Dにどの程度の時間がかかりどのようなプロセスで進行していくのかに関しての分析です。これはやったりやらなかったりします。大変なので。ここをやっておけばめちゃくちゃ優位性が出るぞ!というタイプの企業の場合には頑張ります。

 下記みたいな感じで、新製品のタイムラインみたいなものは頭に入れたりします。上市までの肌感覚についてはわからんかったりするのでその辺はR&Dとかやってる友人に聞いたりしてます。

4. 成長性の分析

 ここまではあくまで現時点での足元の分析です。しかし、大事なのは将来性というところで、今後どこまで成長できるのだろうかというところを現在値を踏まえながら見ていきます。
 ここでのゴールの例は例えば以下のように、各セグメントごとの成長性をその根拠となる事実と共に明確にすることです。ここでもゴールを決めないと作業路油が無限になってしまうので、こんな風にストーリーを決めてから調査にかかります

 この後は、このAからEまでの5か所に焦点を当てて調査を行っていきます。

 例えば、Aの市場の成長性を見ていくためには以下のような状況を探索したりします。

 コアターゲットに関しては、下のように各ファネルごとにどのくらいがろ過されていくのかを見ることが多いです。

 Bのオフラインチャネルの成長性という点では、今回はキードライバーを百貨店への出店余地としているので「対象企業の製品が百貨店にふさわしい商品か」をブランド力、価格、過去の売上、SKUのカバレッジの4要素から判定したりしました。ちなみに、ブランド力に関してはこれといった基準の肌感覚があまりないですが、価格は最低でも1SKUあたり3,000~4,000円、売上は平方メートルあたりの売上が年間330万円以上、SKU数は少なくとも100SKUが必要になってきます。

 また、直営店の開店頻度については、競合他社の店舗の拡張数をベースに推計しました。ちなみに、これはホームページから1つずつ店舗数を数えて、各店舗が何年に開店したのかを1つずつ拾ってくることになります。めちゃしんどい。いいやり方があったら教えて下さい。

 Cのオンラインに関しては中々数字がとりにくかったりするのですが、顧客一人当たりのオンライン年間平均売上高の成長率は見るようにしています。また、これはIRに聞いて教えてくれるか否かは微妙なラインですが、そのオンライン売上の成長が購入頻度の成長によるものなのか、顧客一人当たりのバスケットサイズの拡大によるものなのかは一応聞いてみています。

 DやEの海外市場の分析は結構しんどいです。現地の消費の温度感や市場の手触り感がさっぱりわからないので人に聞くしかないです。IRに聞くだけでは限界があるので海外に住んでる友人や、専門家紹介サービスを利用して聞きます (私はENS(専門家照会サービス)としてAlphaSightsGuidepointGLGビザスクAtheneumとかを使っています。専門家にもよりますが、60分の電話で10万円くらい費用がかかるので入念な事前準備が必要不可欠です)。

  • 市場規模とその安定性および成長性

  • 日本製品の評価

  • 対象企業の認知度・評価

  • 現地の人の購買基準や有名口コミサイト

  • 海外企業への規制

 また、エキスパートのサーチにあたってはLinkedInもよく使います。転職用SNSの側面を持ち合わせているので登録者の多くが現職及び前職を詳細に記述してくれており、結構よいエキスパートが見つかったりします (コールに応じてくれるかはまた別問題ですが)。

5. リスクの分析

 リスクの分析は正直得意じゃないです。過去の業績をチェックしていって過度に不調なときに何があったのかを精査したり、経営陣の略歴を洗っていくのは毎回やってます。

6. financeの分析

 最後は数字で詰めます。エクセルをポチポチいじるのは好きなのでこの辺の作業は結構楽しいです。

 以上が私がやっている企業の深堀調査の一連の流れです。ここで「買いだ!」と結論を下せた場合には、「ではいくらなら買えるか?」を考えるためにバリュエーションの調査をしていきます。その分析の話もどこかでアウトプットできればなあと思いますね。

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