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【忘備録】油圧機器市場

 忘備録として油圧機器市場のデータをまとめた。市場規模のソースは経済産業省生産動態統計を使用し、個別企業のシェアについては独自分析による。
 油圧機器とは外部から力を加えて油に動力を伝達することで発生する圧力エネルギーを使い、アクチュエータ (エネルギーを動作に変換する駆動装置) を作動させて物理的な運動を実現させる装置である (油の代わりに空気を使ったものが空圧機器であり、国内ではSMCがトッププレイヤーであり世界で約4割、国内で約6割強のシェアを有する)。
 油圧機器の主要な需要先は建設機械メーカーであり、その他には産業車両、船舶、農業機械、工作機械などでも使用される。特に建設機械業界における需要動向に極めて大きな影響を受ける。輸出もほとんどが土木建設機械用で、パワーショベル用が多くを占める。そのため、足元においては中国での建設機械市場の減速より減速気味となっている (一方で、空圧機器は半導体やEVバッテリー関連など自動車向けの需要が堅調)。
 市場の概要としては用途毎に主要企業が異なり、ニッチトップ企業が各用途ごとにありフラグメントな市場構造となっている。ほとんどの企業が産業機械・輸送機械や部品の製造との兼業となっており、専業に近い企業では、油研工業やジェイテクトフルードパワーシステムがある (一方で、空圧機器はSMC1強状態である)。
 ちなみに、生産動態統計は速報が翌月末、確報が翌々月中旬に出されるため、各プレイヤーの大まかな売上の予測を行うことができたりできなかったりする。


油圧ポンプ

 油圧ポンプは作動油に圧力を加え、油圧回路に作動油を送り出す機器である。2023年度における油圧ポンプ市場は92,376百万円となり、昨年と比べると6.3%減少し、川崎重工をはじめ、多くのプレイヤーが売り上げを落とした。本市場におけるリーディングプレイヤーには川崎重工業、KYB、ダイキン工業、ボッシュ・レックスロス、東京計器、不二越、島津製作所、油研工業があり、これら上位8社で市場の92%を占める。その他に内包されるロングテールのプレイヤーとしてはナブテスコ、ジェイテクトフルードパワーシステム、工進精工所、大阪ジャッキ製作所、理研精機、住友精密工業、是常精工、イートン、岡常歯車製作所などがいる。
 近年において大きくシェアが変動したことはないが、2021年から東京計器が不二越を逆転し業界5位に浮上している。

油圧ポンプ市場

 また、一口に油圧ポンプと言っても大きくギヤー型ポンプとピストン型ポンプに分けられ、そのブレイクダウンを下に記述する。

ギヤー型ポンプ

 2023年度におけるギヤー型ポンプ市場は16,011百万円となり、昨年と比べると6.1%減少した。本市場における日本のトッププレイヤーはKYBであり、島津製作所、不二越、ボッシュ・レックスロスと続き、上位4社で64%を占める。ロングテールのプレイヤーとしては川崎重工業、ジェイテクトフルードパワーシステム、住友精密工業、イートン、三星、岡常歯車製作所、などがいる

油圧ポンプ (ギヤー型) 市場

ピストン型ポンプ

 2023年度におけるギヤー型ポンプ市場は71,629百万円となり、昨年と比べると6.4%減少した。本市場における日本のトッププレイヤーは川崎重工業であり、ダイキン工業、ボッシュ・レックスロス、東京計器、KYB、不二越と続き、上位6社で79%を占める。ロングテールのプレイヤーとしては油研工業、コマツ、イートン、ジェイテクトフルードパワーシステム、タカコ、タクミナなどがいる

油圧ポンプ (ピストン型) 市場

油圧モーター

 油圧モーターは油圧により回転運動を与える部品である。2023年度における油圧ポンプ市場は104,320百万円となり、昨年と比べると6.6%減少した。本市場における日本のトッププレイヤーはKYBであり、川崎重工業、ナブテスコ、ダイキン工業、不二越と続く。上記上位5社における市場シェアは約58%。ロングテールのプレイヤーとしては島津プレシジョンテクノロジー、ボッシュ・レックスロス、イートン、是常精工、油研工業、ジェイテクトフルードパワーシステム、日本オイルポンプ、東京計器、TAIYOなどがいる

油圧モーター市場

油圧シリンダー

 油圧シリンダーは油圧によりピストンへ左右の直線運動を行わせる部品である。2023年度における油圧シリンダー市場は120,846百万円となり、昨年と比べると6.6%増加し、油圧機器の中で唯一市場を伸ばした。本市場における日本のトッププレイヤーはKYBであり、ナブテスコ、TAIYO、油研工業と続く。上位4社による市場シェアは約58%。ロングテールのプレイヤーとしては極東開発工業、大阪ジャッキ製作所、堀内機械 、豊和工業、イートン、ユアサ工機、理研機器、 是常精工、東京計器、JPN、ファインシンター、エナパック、南武、などがいる。なお、KYBは建設機械用油圧シリンダで世界シェア25%を占めている

油圧シリンダー市場

油圧バルブ

 2023年度における油圧バルブ市場は91,121百万円となり、昨年と比べると6.6%減少した。本市場における日本のトッププレイヤーはKYBであり、ダイキン工業、東京計器、ジェイテクトフルードパワーシステム、油研工業、不二越、ボッシュ・レックスロスと続く。上位7社における市場シェアは約62%。ロングテールのプレイヤーとしてはナブテスコ、島津プレシジョンテクノロジー、川崎重工業、日本オイルポンプ、イートン、エナパック、工進精工所、JPN、高美精機、などがいる

油圧バルブ市場

本記事で登場した銘柄

参考

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