ただより高いものはない

●島根県出雲市に住む61歳の無職の男が窃盗の容疑で逮捕されたというニュースがありました。窃盗というと民家に忍び込んでコソ泥をはたらいたのか、あるいはコンビニで万引きしたのかと思いきや、なんとこの男は病院内の食堂に置いてある味付け用のマヨネーズを、持参した容器に勝手に移し替えていたというのですからなんともせこい犯罪です。
調べによりますと、男は午前11時頃といいますからランチ営業が始まる時間、出雲市内の病院施設内の食堂の調味料コーナーで客のために設置されていたマヨネーズを手に取り、持参したプラスチック容器に1本のうち3分の2の量を移し替えて盗んだのです。その後、男が何食わぬ顔をして退店するのを目撃した病院の保安対策員が声をかけたところ逃走する素振りを見せたため、私人逮捕し駆け付けた警察官に身柄を引き渡したということです。
男は過去にも数回この食堂に来店していましたが、食事をせずに出て行くことが数度あったことから保安対策員が警戒していたそうで、まず常習犯と言って間違いないでしょう。牛丼屋でこれでもかというくらいに紅ショウガを乗せる客、スーパーで寿司を1パックしか買っていないのに、ショーケースに置いてあるガリと醤油を両手いっぱいに持ち帰る人など「タダ」とあらばもらわにゃ損とばかりに遠慮のかけらもない人はいますが、彼らはまだメインとなる食品の代金は支払っています。しかし今回の男は代金の発生するものを一切注文することなく、タダのものだけを狙って来店するのですから困ったものです。
それにしても何かマヨネーズが必要なものがあり、それにかけた上でついでに容器に入れるのならまだしも、食べ物が何もないところで移し替えだけをしていてバレないと思ったのが不思議です。それならまだマヨネーズチューブをそのまま持ち去るほうがよほど手っ取り早く見つかりにくいと思うのですが、3分の1だけ残すのは「全部持って行ったら後の人が困るだろう」という彼なりの良心だったのでしょうか。犯罪者の心理とはなんとも理解に苦しみます。

令和5年11月5日号 百田尚樹のニュースに一言より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?