「我こそが日本における“オール電化”第一号」
●大阪府高槻市が市独自の物価高騰対策として令和5年9月から実施している水道基本料金の無償化を2か月間延長すると発表しました。あらゆるものが値上がりし家計が逼迫する中で国や自治体はいろいろな支援策を発表していますが、そのほとんどは恩着せがましい“給付金”支給です。目に見える現金はたしかにうれしいものです。しかし、それには事務処理のための時間が掛かるだけでなく手数料まで必要となることを忘れてはいけません。
それに対し高槻市の策は、水道局が基本料金の請求をしないだけで他には何も手続きすることなく、市民は黙っていても毎月の支出が抑えられるのです。これほどまでシンプルでダイレクトに効果がでるものはありません。
ガソリンにかかっている税金を一時的にストップする、消費税率を軽減、あるいは0にするなど簡単で即効性のある物価対策はいくらでもあるのに国は相変わらず手間と時間がかかる策しかとりません。これでは国民のための給付ではなく、だれかに提供するためにわざと手間と時間にかかるコストを捻出しているとしか思えません。その結果の“緊急”物価対策が半年以上先の来年のボーナス時の“減税”だなんて呆れてものも言えません。
水道事業は原則として市町村が経営するものですから、どこもやろうと思えば減額請求なんてすぐにできます。国が本当に国民のことを考えているなら(その費用は国がもつから)すぐに各自治体に高槻市に倣うよう指示を出すべきです。電気、ガス、水道は現代人が生きていく上でなくてはならないものとして「ライフライン」とも呼ばれています。今から40年ほど前、わたしがまだ20代だった頃、風呂なしアパートで節約のためにガスを開栓していない友人がいました。彼はわたしの「風呂が無いにしても煮炊きやお茶を飲むために湯を沸かす時に困るだろう」との問いに対し「そんなもの電気炊飯器ですべて事足りる。とくにインスタントラーメンなんて密閉した炊飯器が圧力鍋代わりになってすこぶるいい具合 」と笑って答えました。
そんなどこから見ても貧乏な生活を送る彼は料金未納により電気をしょっちゅう止められていましたが、同じく未納の水道を止められることはありませんでした。なぜなら電気は止めたところで部屋が真っ暗になるだけですが、水道(水)はそれがなければ“死”に直結するからです。すなわち料金を滞納したら電気やガスがすぐに供給ストップとなるのに対し、水道は最後まで止まることはないのです。あれから40数年、いまでは電気、ガス、水道完備の家に住めるようになった彼の自慢は「我こそが日本における“オール電化”第一号」です。
百田尚樹のニュースに一言 令和5年12月22日号より
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?