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水族館

小さい時、家族で水族館に行った。弟を押しのけてベビーカーに乗った。弟のベビーカーだ。今現在もだが、この頃から姉としての威厳は無く、プライドも無かった。嫌がる弟。呆れる母と祖母。孫娘のことが大好きな祖父は、笑顔でベビーカーを押し、館内を回った。気を利かせてゆっくり押してくれるベビーカーは心地よく、薄暗かったせいか私は爆睡した。水族館の記憶が、弟を押しのけたクラゲのゾーンで止まっている。

家族との数少ない思い出は、水族館に凝縮されている。誰かと水族館に行くたびに、あの時ちゃんと起きていればよかったなと思う。眩い水槽の中にいる小さな生き物に対して、同じく小さな私は命をどう考えるのだろうか。

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