裏長屋物語 2

江戸は町方が密集し、多種多様な人間が集うことから「火事と喧嘩は江戸の花」などと言われ、そんな雰囲気の中で江戸っ子気質が醸成されていったのだろう。

主人公は伊藤蔵之介、食い詰め浪人である。浪人とは、武士でありながら、どこにも仕官できず、武士としての給料もないため、日雇い仕事をしながら生活をしている。

下手に武士なだけに、矜持が高く、雇われであるにも関わらず、雇用主に文句を言ったり、まともに働かない者も多く、周りから白い目で見られる事が多かった。

さて、伊藤蔵之介である。この男が、本所深川の、この裏長屋にやってきたのはちょうど1年前、元禄14年の暮れだった。歳の頃は24。身なりはさっぱりしており、清潔感がある。そして、何よりよく働く。

この男は、1年後、死ぬことを宿命づけられていた。仕官していた主君が江戸城で刃傷沙汰を起こし、即日切腹となった。合議制を重んじる幕府で、即日切腹は異例だった。しかし、江戸城で刀を抜くことは、万死に値する。切腹は妥当であった。ただ、主君が口論となった相手はお咎めがなかった。何の詮議もなく、事情を聞かず、主君の乱心と吐き捨てた。

家臣たちは、これには納得がいかなかった。戦国の威風が残る武士たちは主君の無念を晴らすことを胸に誓い、江戸に潜り込んだ。

伊藤蔵之介もその一人である。

長屋の人間たちは次第に蔵之介を仲間として受け入れていった。蔵之介がこれまで一年間見てきた、江戸下町の人々の暮らしをこれから見ていきたい。

歴史を学ぶ意義を考えると、未来への道しるべになるからだと言えると思います。日本人は豊かな自然と厳しい自然の狭間で日本人の日本人らしさたる心情を獲得してきました。その日本人がどのような歴史を歩んで今があるのかを知ることは、自分たちが何者なのかを知ることにも繋がると思います。