[アイドルアライブ二次創作小説]アイドルが生まれた日
まえがき
・こちらは、SUSABI GAMES様のボードゲーム、アイドルアライブの二次創作小説になります。
・1ヶ月後の幕張メッセでのライブに向けてリハーサルや握手会に励むメンバーの日々を、アイドルたちのモノローグで展開していく話です。ですが、アイドルによって出番に差があります。一応公言しておくと、私の推しは文乃です。
・楽曲の設定(2〜3人曲の取り扱い方)、アイドルの口調や性格、一人称やお互いの呼び方、事務所の規模など、かなり個人の解釈が入っています。
・名前なしプロデューサー(性別は明言していませんが口調は男性寄り)が出てきますし、セリフもあります。
・何よりこれを一番伝えておきたいのですが、前提として、アイドルたちや他プロデューサーの方々を悪く言うつもりはございません。
・ちなみに、「この要素が苦手」というものがある方は、私のXのアカウント(@ywtm13)にて個別に連絡を頂ければお答えします。ここではネタバレを防ぐために、これ以上の説明は控えさせて頂きます。
大丈夫な方はどうぞお楽しみください。
第1話 嬉しい言葉
「あー、今日もがんばったー!文乃、お菓子食べよー!」
紗季さんは私にそう言ってソファーに座り、テーブルの上に置いてあるお菓子に手を伸ばした。個包装のクッキーが箱の中に整列している。
1ヶ月後に、私たちは幕張メッセで9000人のファンの前でライブを行うことになっている。最近はそのリハーサルに時間を割いて、準備を進めていた。この日もリハを終え、私たちはレッスン室のある3階から事務所のある2階に戻ってきたところだった。事務所と同じ建物にレッスン室があるから、とても便利だ。
事務所にある、ソファーが向かい合っているこのスペースは、私たちが談笑したり休憩したりするのによく使われている。ローテーブルには常に何かしらのお菓子が置いてあるから、私たちはそれを頂くことが多い。
「あれ?このクッキー、朝はなかったよね?」
「私が持ってきたんです。みなさんで食べたいなーって思って!」
日和さんが首を傾げると、音羽さんが目を輝かせて言った。音羽さんは瑠璃川家のお嬢様で、こうやって誰かと何かをするということ自体が好きみたい。前に6人のオフが重なって山にバーベキューに行った時、トラックでキャンプファイヤーの組み木を運んできたことがあったけど(運転していたのは瑠璃川家の使用人さんだった)、「音羽、今日はそれ使わないわよ⋯⋯」と瑛里さんが頭を抱えていたことがあったっけ。
「カロリーには気を付けてね」
そう言いながら、涼子さんもちゃっかりお菓子に手を伸ばす。みんなが取り終わったのを見てから、私も一つだけもらって封を開けた。別に遠慮しているわけじゃないけど、私はこの6人の中で最年少だから、こういう時は何となく最後に行動することが多い。
それから私たちは、今日のリハのどこが大変だったとか、オフの日に行った場所での出来事とかの話で盛り上がった。私は聞き役に回ることが多いけど、みんなの思い出をお裾分けされている気分になって、楽しくなる。
「そういえばみんな、ファンレター読んだ?」
瑛里さんが聞くと、紗季さんが「読んだ読んだ!」と言って話に乗っかる。毎月初めには事務所のスタッフさんが私たちに届いたファンレターの中身をチェックして、メンバーごとに分けて渡してくれる。
「あたし、またダンス褒められちゃった!しかもしかも、ダンスの講師やってるって人から!めっちゃテンション上がるんだけど〜!」
その話に、日和さんと瑛里さんが「えー、すごーい!」「やるじゃない!」と嬉しそうに笑っている。私もそうだけど、やっぱり誰かがこうやって褒められているのを知ると嬉しい。
「あのレッスン動画、みなさん楽しんでくれているみたいですね!私も歌を褒められました〜!」
音羽さんも両手を合わせてそう言った。このレッスン動画というのは、1ヶ月前に私たちの動画チャンネルで上げたもので、ファンのみなさんからの反響が特に大きかった。普段見ることができない裏側を見るっていうのは、やっぱり特別感があるみたい。
「私はねー、『日和ちゃんのおすすめのボードゲームを買ったよ』っていう報告がいつもより多かった!」
「やっぱりアレ?ハッククラッド?」
「うん!」
紗季さんの質問に、日和さんが頷いた。日和さんは少し前に、紗希さんと音羽さん、それから涼子さんと4人でハッククラッドというボードゲームを遊んでいる動画を上げていた。私も一度だけこのゲームを日和さんと涼子さんと3人で遊んだことがあるけど、難しかった。「余ったカードはMPにできるよ」とか「そっち行くと攻撃当たるわね」とか、アドバイスをもらいながら何とかゲームを進めた記憶がある。
「ハッククラッドってこの前やった、ドラゴンさんをぺちぺちするゲームですよね?」
「あはは!音羽のあれは、ぺちぺちっていうよりボコボコって感じだったけどねー」
紗季さんが手を叩いて笑う。私も動画を見たけど、音羽さんが「あれ?もしかしてこれできます?これもいけます?」って言いながらどんどんMPを使って攻撃をしていた姿はとっても楽しそうだった。「わー、たくさんダメージを与えられましたー!」って笑顔になる音羽さんの横で、日和さんが青ざめていたのも印象的だったな。
「レッスン動画もだし、ハッククラッドも次を望んでいるファンが多いわね。また撮っても良いかも」
瑛里さんはいつも、ファンの需要について考えていて凄い。私は目の前のことでいっぱいいっぱいだけど、瑛里さんには余裕がある。
「わー、またドラゴンさんをぺちぺちしたいですー!」
「音羽はやる気になってるみたいだし。そうだ、今度は私と文乃が出るとかどう?」
「えっ」
そんな提案をされるなんて思っていなかった私は、思わず声を上げてしまう。
「ハッククラッドをやっているのを撮るってことですよね?でも私、ファンのみなさんに見せられるレベルじゃ⋯⋯」
「練習すれば大丈夫だよ!私だって最初はたくさん失敗してきたし……」
日和さんがそう言って励ましてくれる。ボードゲームが趣味だからか、日和さんはこういう時に気配りができる優しさを持っている。さっきから話題になっているハッククラッドの動画だって、日和さんがカードの効果や細かいルールを解説してくれたおかげでみんなスムーズにゲームを進行できていたし、見てくれている人たちからも「分かりやすい」という感想を頂けていたから。
「日和さんに迷惑かけちゃうかもしれないけど、いいんですか……?」
「大丈夫だよ!私も文乃ちゃんとハックラやりたい!」
そう言ってくれた日和さんに続いて、紗季さんも「そーそー!ノリで何とかなるって!」と、私の肩に手を置いた。
「文乃が何かに一生懸命になる姿が、ファンのみんなに元気あげてるんだからさっ」
「そ、それならがんばってみようかな⋯⋯!」
文乃ちゃんのがんばる姿を見ると応援したくなる。これは私がよくファンのみなさんから受け取る言葉だった。私ががんばれるのはファンのみなさんが応援してくれるからなのに。私からみなさんへの感謝の言葉は、ありがとうの一言じゃ全然足りない。
「ファンの応援を力にして頑張る文乃の姿を見て、またファンが応援してくれる。素敵な関係ね」
涼子さんがそう言って微笑む。言葉にされると照れてしまうけれど、私はファンのみなさんとのこの関係をとっても気に入っている。
「てか、話してて思い出したんだけど、明日握手会あるじゃん!着る服決めてない!どーしよー!?」
紗季さんがそう言って頭を抱え出すけど、私はファンのみなさんに会えるのが待ち遠しいから、早く明日にならないかなって思っている。
ちなみに紗季さんに対しては、瑛里さんが溜め息をつきながら「ミニライブやってからの握手会なんだから、服装はステージ衣装のままよ……」と説明していた。
***
翌日。
今日の握手会は今までと違って、ペアで行われる。一つの列に並べば順番に2人のアイドルと握手会ができるイベントで、プロデューサーさんが新しい試みとして取り入れてくれた。これに関しては涼子さんも案を出していて、いつもと違うメンバーの良さに気付くきっかけにできれば、っていうのが狙いみたい。
私はその涼子さんとのペア。涼子さんは音羽さんと一緒に「リリフィア」というユニット名で活動しているけど、今回はここの2人はペアにしないという判断のもと、日和さんと音羽さん、紗季さんと瑛里さんがそれぞれ一つのレーンにまとまっている。
今日は私のファンの人だけじゃなく、涼子さんのファンの人も来るから、なんだか緊張する。楽しみだって気持ちは前提にあるけど、涼子さんのファンの人ってしっかりしている人が多いイメージだから、私みたいな人との握手会、楽しんでもらえるのかな、なんて不安になってしまう。
「今日はよろしくね。文乃のファンに会えるの楽しみ」
涼子さんにそう声を掛けられたけど、私の不安は晴れることはなかった。
そんな中、いよいよ始まった握手会。
「こんにちは!」
「あ、隊長さん!」
一番に来てくれたのは、私の握手会にいつも来てくれる、体格の良い男の人だった。自称応援隊長だと言ってくれたのがきっかけで、私はこの人を隊長さんと呼ぶようになった。
「幕張メッセのライブ楽しみにしてるんで!文乃ちゃんもリハ頑張ってください!」
「はい!ありがとうございます!」
私は緊張も忘れて、隊長さんとの握手会を楽しんだ。いつもの人が来てくれるのって、それだけで心強い。
時間になると、隊長さんは私の隣にいる涼子さんと話し始め、私の目の前には2番目に並んでいた人がやってくる。知らない人だ。緊張が走る。
「俺、握手会始まる前に、さっき文乃ちゃんと話してた人と喋ってて。文乃ちゃんの良さ、たくさん教えてもらったよー!」
「えっ、本当ですか!?ありがとうございます!」
私は一瞬だけ隊長さんの方を向く。彼は笑顔で涼子さんと話をしている。
「これから文乃ちゃんのことも応援します!」
「えっ、嬉しいです!よろしくお願いします!」
話の内容からして涼子さんのファンの人なんだろうけど、こういうこと言ってもらえるの、すごく嬉しい。そうか、ファン同士の交流で、メンバーの魅力が伝わっていくことだってあるんだ。
私が心の中で隊長さんに感謝していると、次の人がまた現れる。握手会はこの繰り返し。
次に来たのは、白い服を着て、涼子さんのタオルを肩にかけている人。大丈夫、私のファンじゃなくても、さっきの人みたいにちゃんと話さなきゃ……!
「初めまして」
「は、初めまして!」
一瞬、テンション低いなって思ったけど、別に私との握手会が嫌なわけじゃないはず。落ち着いて。
「文乃さんの歌声、とても癒されます。『点線スピーチバルーン』好きです。これからも頑張ってください」
「あっ、ありがとうございます……!」
『点線スピーチバルーン』は私のソロ曲。そうか、この人は涼子さんのファンだけど、私のソロ曲も聴いてくれているんだ。嬉しい。そして、少し怖がっちゃってごめんなさい。
大丈夫だ、涼子さんのファンの人はとっても優しいし、私のこともちゃんと見て褒めてくれる。
次に来たのは、背が高くてスタイルの良い女の人。髪型が涼子さんと同じだった。
「文乃ちゃん初めまして〜!」
「こんにちは!」
テンションがさっきの人と違って高いから、私も少し声のトーンを上げる。
「今日、涼子ちゃんと文乃ちゃんのペアだから、文乃ちゃんが前にブログでオススメしてた帽子被ってきたんだ〜!」
「えっ、あっ、本当だ……!ありがとうございます!」
女の人が被っていた帽子は、確かに私が前にブログで紹介していたものだった。でもそのブログって、何ヶ月も前のだったような……わざわざ読んでくれたのかな。今日のために?
それを聞きたくても、次々とファンの人は入れ替わっていく。私は人ごとに変わる話題に必死でついていき、気付けば時間が過ぎていた。
「ペア握手会、楽しかったね!」
握手会が終わってすぐ、日和さんがそう言った。
「私、音羽ちゃんのファンの人にたくさん会えて新鮮だったよ!」
「私も!日和さんのファンのみなさんに、この前のハッククラッド褒めてもらえたの嬉しかったです〜!」
日和さんと音羽さんが感想を言い合っている。その横で、瑛里さんはぐったりしていた。
「瑛里さん?どうかしたんですか?」
私が声を掛けると、瑛里さんは「そうね……」と言って顔を上げた。
「紗季のファン、みんなテンション高すぎて……いや、楽しかったのよ?楽しかったけど、パワー持っていかれたわ……」
「えー?瑛里ちょー楽しそうにしてたじゃん!それに、ファンは推しに似るって言うでしょ?」
紗季さんがそう言って、瑛里さんの肩に手を置く。
「あたし、よく『紗季ちゃんのおかげで性格が明るくなりました』って言われるんだよねー!それってすっごく嬉しいじゃん!」
「……そうね」
瑛里さんは疲れているみたいだけど、私も今度紗季さんとペアになってみたいな、と思った。
「紗季の言う通り、アイドルをやっていてファンに影響を与えることができてるって、光栄なことよね。ちゃんとファンのこと大切にするのよ?」
「りょ!」
「軽い!」
「えー!?大事にしてるってばー!」
紗季さんたちのそんな会話を聞きながら、私は涼子さんの姿を探す。私も涼子さんのファンのみなさんが素敵だったって話をしたい。
いた。けど、涼子さんはプロデューサーさんと何かを話しているところだった。今日のイベントの反省点とか、今後の課題とかかな。今、涼子さんと話すのは難しそうだから、私は引き続き紗季さんと瑛里さんのやり取りを聞くことにした。
涼子さんはいつもしっかりしているし、プロデューサーがもう一人いるみたいで頼りにはなるけど、ちょっと遠い人だと感じる時がある。
涼子さんは今日の握手会、楽しかったかな。楽しめていたらいいな。
それにしても、涼子さんのファンのみなさんも優しかった。私のこともちゃんと見ていてくれて、きっと、涼子さんの良いところもたくさん知ってるんだろうな。もしかしたら私たちよりも、ずっと。
第2話 予兆
ライブのセットリスト(私たちは略してセトリと言っている)はもう決まっていて、あとは学校の合間にリハーサルを重ねて仕上げていく。
私たちの全員曲は『SPOTLIGHT!!』しかなくて、あとは1〜3人で歌う曲が全部で17曲ある。私が必ず参加する曲は、私がセンターの3人曲『ブランニュー・マイ・ストーリー』、2人曲の『愛してくれない王子様』、そして私のソロ曲の『点線スピーチバルーン』の3つ。そして、3人曲と2人曲の残りのメンバーはライブやイベントごとに変わる仕様になっている。みんなこんな感じに曲が割り振られていて、音羽さんと涼子さんの3人曲の『DETERMINATION』だけはこの2人のダブルセンターだ。
ちなみに、幕張メッセで開催されるライブのセトリはこれ。
この日は『ブランニュー・マイ・ストーリー』の練習の日で、日和さんと涼子さんと一緒に私はレッスン室にいた。
「ねぇねぇ文乃ちゃん、Aメロの最後のとこなんだけど……」
まずは1曲通し終わったタイミングで、日和さんが質問してくる。
「マイクの持ち替え全然上手くいかなくて……。滑って落としそうになるんだけど、どうすればいいかな?」
「えっ、と……」
左手から右手にマイクを持ち替えるタイミングの話。でも私はここでマイクを両手で持っていて、日和さんとは振り付けが違うから、教えられそうにない。私は言葉に詰まってしまった。
「あぁ、そこなら」
その時、涼子さんが話に入ってくる。
「見ていて思ったんだけど、日和は後ろに持っていく時にマイクが倒れてるから、まずはこうやって縦にして……」
涼子さんが私たちに背中を向けながら説明してくれる。
「1、で左手の指を3本離して、2、で右手でマイク握って、3、でマイクを前に出しながら左手の残りの指を離すと……」
「えーっと……」
日和さんは今言われたことを実践しようと、マイクを左手に握る。
「1の、2の、3……あ、できた!できたよ涼子ちゃん!これとってもやりやすい!ありがとう!」
日和さんが笑顔で喜ぶ。やっぱり涼子さんはすごいな。教えるのが上手だし、この曲に参加するのだって今回が初めてなのに、もう振り入れも完璧で。
「ねぇ、今度は曲に合わせてやってみたいんだけど、いいかな?」
「はっ、はい!」
いきなり日和さんから話を振られ、私は慌てて返事をする。スマホを操作して曲を流して、実際にやってみる。
さっきのマイクの持ち替えは私の後ろで起こっていることだから私からは見えないけど、Aメロが終わってから「できた!」という日和さんの声が聞こえた。
私たちが『ブランニュー・マイ・ストーリー』の練習をしている横で、紗季さん、瑛里さん、音羽さんの3人が、『ハシャぎたいんじゃNight?』を通していた。ダンスの激しい曲で、というより紗季さんの曲は全部そうなんだけど、体力を多く消費するから大変だ。私もこの曲をやったことがあるけど、ついていくので精一杯だった記憶がある。
私たち3人はちょうど休憩時間になったので、隣の3人の練習を見ていた。
「音羽またワンテンポ遅い!瑛里はちゃんと腕伸ばして!サボらない!」
曲中にダンスの先生から注意されている。音羽さんも瑛里さんも「すみません!」「はい!」と答えながら紗季さんについていっている。
みんな、ライブを成功させたくて必死だ。私だってそう。ダンスの先生は正直言って怖い時もあるけど、ライブを成功させたいって思ってくれているからだってことを、私は知っている。
「ごめんなさい、私また遅れて……!紗季さん、瑛里さん、もう一回いいですか……!?」
「もちろん!何回だって付き合うよ!いいよね、瑛里!」
「当たり前じゃない!」
休憩もせずに、3人はまた曲を流して練習をし始めた。それを黙って見ていた私に、日和さんが「私たちもそろそろ練習する?」と声をかけてくる。
「そうですね、やりましょうか!」
私は飲み物を置いて、ポジションにつく。曲を始めようとしたその時、涼子さんが来ていないことに気が付いた。彼女はまだ、紗季さんたち3人の練習を見ていた。
その表情がどこか寂しそうに見えた。
「涼子さん?」
私が声をかけると、涼子さんは「あ、練習の続きね?」と言って、こっちへ来た。
「何か、気になることでもあったんですか?」
「えぇ、一生懸命練習している音羽たちを見ていたら、微笑ましくて」
そう言って微笑んだ涼子さんは、いつもの涼子さんだった。やっぱりさっきのは気のせいだったのかもしれない。
私が参加する3人曲はもう一つあって、瑛里さんがセンターの『私がスターライト』だ。音羽さんと私で3人のユニットを組んで、今度のライブで披露することになっていた。『ブランニュー・マイ・ストーリー』の練習時間が終わって、私はこの曲の練習に入る。
音羽さんは何回かこの曲をやったことがあるけど、私は今回初めての参加。だから覚えることもたくさんあるけど、瑛里さんが丁寧に教えてくれるのがありがたかった。私は『ブランニュー・マイ・ストーリー』も『愛してくれない王子様』も自分のポジションのことしか把握してないのに、瑛里さんは他のメンバーの振り付けや立ち位置もしっかり覚えているから、私とはレベルが違うな、と思う。
瑛里さんはもちろんだけど、音羽さんももうほとんど振り付けは覚えていて、私がミスしなければ問題なく乗り切れるくらいにはなっていた。ちょっとプレッシャーはあるけど、難しい振り付けもなくて踊りやすい。1曲通してみたけど、間違わずにやり切ることができた。
「……よし、イイ感じね。本番まであと11日。あとは細かいところを調整していきましょう?」
「はい!」
曲が終わったタイミングで、瑛里さんが私たちの方を振り返って笑顔を見せる。けど、音羽さんは返事をせずに、足首を回していた。
「音羽?どうかしたの?」
瑛里さんに聞かれ、音羽さんは「うん……なんだか、右の足首が……」と答える。
「ちょっと見せて」
屈みながら瑛里さんが真剣な表情で言う。音羽さんはちょっと戸惑いながらその場に座って、右足だけ裸足になる。
「腫れては……いないわね。今は痛い?」
「ううん、今は大丈夫。でも、動くとちょっと……」
「いつから?」
「えっと……さっきの、『ハシャぎたいんじゃNight?』の練習の時から違和感があって……」
瑛里さんの口調は真剣だけど、それを通り越して怖くもあった。音羽さんの話を聞いてから、彼女は立ち上がって「ちょっと、プロデューサーに言ってくる」と言った。
「でも、腫れてないし、ちょっと痛いだけなんです。ライブも近いし、これくらいなら」
「ダメよ」
瑛里さんが鋭い声で言い放った。音羽さんはそこで口を噤む。
「無理してさらに痛めたらどうするの?念のため、病院に行った方がいいわ」
「……分かりました。ごめんなさい」
音羽さんが謝ると、瑛里さんはこちらに背を向けながら「大丈夫よ」と言った。
「大丈夫なことを確認するために、病院に行くんだから」
瑛里さんの声が震えていた。私が気付いたんだから、きっと音羽さんも気付いている。
「……そうですね。大丈夫だって言ってもらわないと、練習続けられないですよね」
そして、音羽さんの声も瑛里さんと同じように震えていた。それなのに、私は何も言えなくて、何と言えば良いのか分からなくて、黙っていることしかできなかった。
瑛里さんに呼ばれて間もなく、プロデューサーさんがレッスン室へ入って来た。そのまま音羽さんを車で病院に連れていくことになって、2人でこの場をあとにした。
「音羽、どうかしたの?」
その様子を見た涼子さんが話しかけてきた。一緒に『ROCKET DASH!!!』を練習していた日和さんと紗季さんも一緒だ。
「右足首が痛いって。プロデューサーが病院に連れて行ったわ」
「そう……」
涼子さんが深刻な顔をして呟く。
「え、それって大丈夫なの……?音羽、ライブ出れるよね……?」
紗季さんが誰にでもなく聞いてくる。瑛里さんがそれに対して「分からない……」と返す。
あの時は「大丈夫なことを確認するために」って言ってた瑛里さんだけど、内心は違ったんだ。音羽さんの前で、ライブに出られないかもしれないなんて、言える訳がない。
それから私たち5人は、リハを重ねつつ、音羽さんとプロデューサーさんの帰りを待っていた。
2人が戻ってきたのはそれから数時間後。
音羽さんが開口一番で涙を流しながら「ごめんなさい……!」と謝ってきたことで、私たちは全てを察した。
第3話 あなたのいないライブ
翌日。
私たちの公式ホームページに、このお知らせが掲載された。
病院に行った音羽さんは、右足首の疲労骨折と診断された。同じ部位に小さな力が少しずつ加わることで発生する骨折で、一般的に4〜12週間の治療が必要になるらしい。
今、私たちは全員、事務所に集められていた。今度のライブの話をしなきゃいけないからだ。
音羽さんは何度も私たちに頭を下げていた。日和さんや紗季さんが「音羽ちゃんの分まで頑張るよ!」「だいじょーぶ、あたしたちに任せて!」と励ます一方で、瑛里さんは申し訳なさそうに謝った。
「私、今回は音羽と一緒に練習すること多かったのに……気付いてあげられなくてごめんなさい。私の責任でもあるわ」
瑛里さんの言葉に音羽さんは涙を拭いながら首を横に振り、「違うんです、私が悪いから、瑛里さんは謝らないでください……!」と返した。その目からまた、涙が溢れ出した。
その後、プロデューサーさんが音羽さんを車で自宅へ送っていった。事務所に残された私たちの空気は重かった。
「……みんな、聞いて」
最初に口を開いたのは瑛里さんだった。
「今度のライブ……音羽が出られないってことは、振り付けやセトリの変更は絶対にある。プロデューサーが戻ってきたら、きっとその話をされる。みんな、覚悟を決めておいて」
瑛里さんの言う通りだ。音羽さんが出られないのは悲しいけど、今は目の前のライブに集中しなきゃ。
でも、ライブまであと10日しかない。間に合うの?っていう不安はきっと、ここにいる全員が抱えている。
「大丈夫かな……」
日和さんがぽつりと言葉を零す。その横で紗季さんが「やるしかないよ」と言ったけど、その声にはいつもの元気がなかった。2人とも、音羽さんに声をかけた時は笑顔だったけど、本当は不安だったんだ。
それからは、誰も何も話さなくて、黙ったまま時間だけが過ぎていった。プロデューサーさんが帰ってきたのは、それから数十分後のことだった。
「ただいま。みんな、お待たせ」
プロデューサーさんが自分の机に鞄を置いて、その中から1枚の紙を取り出した。今から、今度のライブのセトリの話をされるんだろう。私たちの間に緊張が走る。
「……みんな、察しているとは思うけど、音羽の欠席に伴って今度のライブのセトリを変更することになった」
テーブルの上に紙を置かれた紙を覗き込みながら、私たちは話を聞く。
「まず前提として、本番まであと10日しかないことを考えると、今更曲の順番の変更はできない。曲順を変えると裏の移動のことも考え直し、覚え直しになるし、みんなにも演出家の方々にも負担になる。だから、今の5人でできることは、曲を削ることと、メンバーを変えること。それで、変更後のセトリがこれだ」
もう既に音羽さんの名前が消されていて、あぁ、音羽さんは本当に今度のライブに出られないんだ、っていう現実を嫌でも突き付けられる。
「まず、音羽のソロの『紫音〜 SHION 〜』はカット。3人曲の練習に時間を割くことを考えると、リリフィアの2人曲の完成は間に合わないと判断して、カットせざるを得ない。涼子、ごめん」
涼子さんが参加する曲が2つなくなったことに対して、プロデューサーさんが謝罪する。けれど涼子さんは落ち着いた口調で「構いません」と言った。
「けど、『DETERMINATION』はファンからの人気が高い曲だから、これをやらない訳にはいかない。だから、涼子をセンターにして、振り付けを変える。振り付け師には既に連絡を入れて、急ピッチで作ってもらっている」
そこで私は初めて、自分の名前が『DETERMINATION』の横に書いてあることに気が付いた。
……え?私?
戸惑っている間に、どんどん説明が進んでいく。
「『ハシャぎたいんじゃNight?』は音羽の代わりに涼子。『SPOTLIGHT!!』と『ブランニュー・マイ・ストーリー』と合わせて3曲連続になるけど、頼む」
「『ハシャぎたいんじゃNight?』は私、前にやったことあるので問題ありませんよ。体力の配分もこちらでしっかり考えますので」
「ありがとう。そして、『私がスターライト』は、音羽の代わりに紗季」
「うん」
紗季さんが真剣な表情で頷く。
「ここは日和か紗季で迷ったけど、音羽と同じポジションで過去にパフォーマンスをしたことがあるのは紗季だ。頼めるか?」
「任せて!まだ振り覚えてるよ!」
「助かる。そして、『DETERMINATION』は……文乃」
「……はい」
ここで名前を呼ばれることの意味を、私は知っている。頭で理解はしている。けど。
「振り付けが変更になる分、負担は大きくなるが……『DETERMINATION』は涼子がセンター。バックに瑛里と文乃。これで行く」
「「はい」」
涼子さんと瑛里さんの返事が重なる横で、私は呟くような声で「……はい」と言うことしかできなかった。
「……すまない。振り付けが完成するまでの日数を考えると、本番まで約1週間しかないことになるが……」
プロデューサーさんの言葉が頭に入ってこない。心の中は不安でいっぱいだった。
どうしよう。
本番まで1週間?
その間に、振り入れして、ファンのみなさんに見せられるレベルに仕上げていくの?
……私が?
誰か、私じゃなくて、もっとできる人……瑛里さんとか……。そう思ってセトリを見たけど、瑛里さんは元々音羽さんと一緒に3人曲に参加する予定だったから、音羽さんの代わりに入ることなんてできない。
私が、やるしかない……。
「ねぇ、プロデューサー」
そこで、紗季さんが声を上げた。
「あたしが文乃の代わりに入ることってできないかな?」
「……」
紗季さんの提案に、プロデューサーさんは何も言わない。私はそのまま、紗季さんの言葉を待った。
「あたし、振り入れの早さには自信あるし、元の『DETERMINATION』踊ったことだってある。『私がスターライト』の振りはほとんど覚えてるから、時間的にも余裕あるよね?どっちも私がやることだってでき」
「それはできない」
プロデューサーさんが、紗季さんの言葉を遮った。涼子さんも、「そうですよね」と続く。
「紗季、よく聞いて?」
涼子さんが、セトリの紙を指差しながら説明を始める。
「最後のブロック、紗季の出番は『emotions!』、『GO ストレート!!』で2曲連続になっている。そして、もし次の『DETERMINATION』も紗季がやることになると、ラストの『SPOTLIGHT!!』と合わせて4曲連続になるの。紗季がいくら体力があってダンスが得意でも、こんなに負担はかけられないと、プロデューサーは判断したんじゃないかしら」
そうだよね。私もそこは分かってる。それなのに紗季さんが代わってくれないかって期待してしまって、黙ってしまって。自分の自信のなさが嫌になる。
プロデューサーさんも「涼子の言う通り」と続いた。
「そもそも『GO ストレート!!』はメインステージからバックステージまで移動しながらのパフォーマンスになるし、そこから次の『DETERMINATION』までにメインステージに戻ってくるのは物理的に無理だ。だから、『DETERMINATION』には紗季も日和も入れない。文乃しかいないんだ。……頼めるか?」
プロデューサーさんの言葉で、全員の視線が私に集まる。
断るなんて選択肢がないことは、今の話を聞いていれば分かる。
私は、頷くしかなかった。
「……あー、もう!」
その時、大きな声が聞こえて、私は肩を跳ねさせた。瑛里さんの声だった。
「なしなし!こんな湿っぽいのなし!」
この場の空気を払うように、彼女は大きく手を動かす。
「そりゃあ私だって不安だし、今からセトリ変えるの?できるの?って思ってるわよ!私がちゃんと見てれば、音羽が怪我することなかったのかもしれないって後悔だってしてる!でも、今一番泣きたいのは音羽なんだから、私たちは前向いてやるしかないじゃない!」
そう言った瑛里さんの目が少し涙目になっているのを、私は見逃さなかった。不安なのは、私だけじゃない……。
「さ、リハよリハ!ライブの日程は動かないんだから、音羽の分までやるわよ!」
事務所を出て行こうとする瑛里さんを、「そうだよね!」「うん、やるしかないよ!」と言いながら、日和さんと紗季さんが小走りで追いかける。私も少し遅れて歩き出そうとしたところを、「文乃」と呼び止められた。涼子さんだ。
「文乃は『DETERMINATION』に参加するの初めてだから大変だと思うけど、私がサポートするから。安心して?」
涼子さんの優しい笑顔を見て、ほっとしている私がいる。涼子さんは振り入れも早いし、瑛里さんと同じように、3人曲でも他の人の振りまで覚えているから、今回もきっと同じように助けてくれるだろうっていう安心感がある。
「ありがとうございます。あの……涼子さんってすごいですよね」
「すごい?」
きょとんとした顔で、涼子さんは首を傾げる。
「はい。こんな時でも落ち着いていて、すごいなって。私、不安だらけで……」
「大丈夫。文乃にはファンの方々もついているでしょう?この前の握手会でも、みんないい顔してたもの。文乃の頑張りをちゃんと見ていてくれるから」
そう言われて、私はファンのみなさんの顔を思い浮かべる。
「ファンの……みなさんが……」
「そう。きっと、文乃の『DETERMINATION』、ファンの方々も喜んでくれるはずよ」
『DETERMINATION』は人気のある曲。それを私が披露したら、ファンのみなさんは喜んでくれるかな。今度の握手会とかファンレターで、どんな言葉を贈ってもらえるんだろう。そう考えるとワクワクして、がんばれそうな気がした。
やっぱり涼子さんはすごい。ちゃんとみんなのこと見て、サポートしてくれる。私が何のためならがんばれるのかちゃんと分かっていて、必要な言葉をくれる。
「涼子さん、ありがとうございます。私、がんばります……!」
正直今だって不安だし、怖いけど。それ以上にがんばりたいっていう気持ちの方が強くなっていた。涼子さんがファンのみなさんのことを思い出させてくれたおかげだ。
私はさっきよりも軽い足取りで、事務所からレッスン室への階段を登っていった。
第4話 キミも物語の主人公
プロデューサーさんの言う通り、『DETERMINATION』の振り付けが完成したタイミングで、ライブまであと1週間になっていた。
まずは1日使って『DETERMINATION』の振り入れ。家に帰ってからも、振り付け動画を見たり、イメージトレーニングをしたり。このイメージトレーニングは、怪我の心配をせずにできるし自信にも繋がるのだと、瑛里さんからおすすめされた。目を閉じて頭の中で振り付けを思い起こしていく。
そして翌日。いつも来てくれるダンスの先生が、私と瑛里さん、そして涼子さんの3人に付きっきりで見てくれることになっている。曲を流して何度も踊って、その度に指摘が入る。
「文乃そこ逆!また右足から出てる!」
「すみません、もう一度お願いします!」
「じゃあBメロから!」
「はい!」
私が注意される回数は他の2人に比べて多いけど、落ち込んでいる暇はない。本番まであと6日しかない。ファンのみなさんがライブを楽しみにしてくれている。私ががんばれば、ファンのみなさんは私を応援してくれる。その応援があるから、私はがんばれる。
涼子さんが素敵だと言ってくれた、私とファンのみなさんの関係性を壊したくない。だから私は今日も歌って、踊って、汗を流す。
「よし、じゃあ10分休憩!」
ダンスの先生がそう言ったのと同時に、瑛里さんが息を吐いた。私もその横で水分補給をする。
「私たち、少しずつ良くなってきてるわよね?文乃もミスが少なくなってきて、安定してきたわ」
瑛里さんに褒められて、私は「ありがとうございます!」と返した。
「ちょっと気になってるとこと言えば、サビに入る前かな。涼子、もうちょっと堂々と前に歩いてきても良いんじゃない?」
「堂々と?」
「そ。この曲のセンターは涼子なんだから」
サビに入る直前、私と瑛里さんが向かい合っている間を涼子さんが歩いて前に出ていくところがある。確かにあそこは、もっと堂々と歩いて行った方がカッコいいんじゃないかって、私も思っていた。涼子さんは私たち3人の中で一番背が高いのもあって、なおさら。
「……じゃあ、休憩が終わったらそこからやってみる?」
涼子さんの提案に、私と瑛里さんが頷く。
「今のでも十分かもしれないけれど、どうせなら最高の『DETERMINATION』をファンのみんなに届けましょうよ」
この『DETERMINATION』はファンのみなさんからの人気もある曲。今回のライブに音羽さんが出ないことは知られているから、この曲の扱いがどうなるのかは気になっていると思う。
そこに、涼子さんがセンターで登場する。涼子さんのファンのみなさんも喜ぶだろうな。
***
本番まであと3日。
通しリハーサルをして、私たちは事務所に戻ってきた。大きな問題はなく終わったけど、私は瑛里さんと披露する『純心ポイズン』で、本当に細かいところでミスをしてしまった。
事務所に戻ると、瑛里さんが「文乃、このあと『純心ポイズン』の練習したいんだけど、時間ある?」と聞いてきた。
「ごめんなさい、私がミスをして足を引っ張っちゃったから……」
「違うわよ。私が練習したいってだけ。私も今日の出来に納得いかないところがあるから、付き合ってほしいの」
「わ、私で良いなら……!」
私は鞄の中からレッスン用のシューズを取り出した。
「先にレッスン室行ってるわね。急がなくていいから」
「はい、すぐ行きますね!」
一足先にレッスン室に向かった瑛里さんと合流するため、私は階段を上る。すると、瑛里さんがドアの前に立っているのが見えた。中に入らないのかな、と思って声をかけようとすると、彼女は人差し指を口元に当てる。静かに、というジェスチャーだ。
私は口を閉じたまま、瑛里さんの隣に並ぶ。ドアの隙間から中を覗き込むと、涼子さんとプロデューサーさんが2人で話していた。何だか深刻な雰囲気で、いつもみたいに何かの打ち合わせをしている感じじゃなかった。
「どうしたんですか?」
小声で瑛里さんに聞くと、彼女も小声で「プロデューサーが、涼子に話があるって言って、入って行ったの」と返してきた。
「それで、話というのは?」
涼子さんの声が聞こえた。それに対してプロデューサーさんは、「リハは順調か?」と話し出す。
「えぇ。『ハシャぎたいんじゃNight?』は元々やったことがありましたし、『DETERMINATION』も細かいところを詰めれば間に合うと思います。瑛里は気になったところを指摘してくれますし、文乃は頑張り屋さんなので、順調ですよ」
順調。涼子さんがそう考えているなら、大丈夫……かな。
「それなら良かった。音羽がいないから、リリフィアとして活動している涼子は他のみんなよりもショックを受けているかと思っていたけど……」
「確かに少なからずショックではありましたけど、セトリの変更もプロデューサーのおかげで良い形になりましたし、ライブ自体に影響はないですね」
「そうか……。涼子はいつもサポートを頑張ってくれているし、無理してないか心配で。今回の『DETERMINATION』だって、本当は音羽と……」
そう。涼子さんは本当は、音羽さんがいないことを一番悲しんでいてもおかしくない。けど、涼子さんは笑って「いえ」と答えて微笑んだ。
「もう決まったことなので、気にしていませんよ」
「ねぇ。それ、本当に思ってる?」
瑛里さんの声だ。あれ?でも瑛里さんは私の隣にいるはず……そう思って私が首を横に向けると、そこに彼女はいなかった。
「ごめん、2人の話、聞いてたの」
瑛里さんがレッスン室の中に入っていく。「ちょっ、瑛里さん……!」と、私も慌てて彼女を追いかける。
「私、この3人での『DETERMINATION』の練習を始めてからずっと思ってたけど。涼子、本当はこの変更に納得してないんでしょ」
「そんなこと、ある訳ないじゃない。音羽が出られないのと、紗季と日和がこの曲に参加するのはステージの演出上不可能で、だから文乃が入って」
「そうじゃなくて」
涼子さんの話を瑛里さんが遮る。音羽さんが足首を痛めた時や、セトリの変更を覚悟するようみんなに言ってくれた時と同じ、真剣な口調。
「音羽に歌わせてあげられないことと、あんたが『DETERMINATION』でセンターに立つこと。納得いってる?」
「それは……」
涼子さんが、言葉を詰まらせる。いつもスラスラと話す涼子さんらしくなかった。
「あんたは音羽がアイドルになりたいって言ったから、音羽と一緒に事務所に入った。確かそうだったわよね。音羽との2人曲だって、あくまで音羽が目立つように立ち回ってた。元の『DETERMINATION』だってそう。音羽と涼子のダブルセンターとは言われてるけど、涼子はいつだって一線引いてるような気がして」
言われてみれば、そうだったかもしれない。元々音羽さんが歌が上手くて、だから音羽さんが目立っていたのかと思っていたけど、さらに涼子さんの働きかけがあったからなんだ。
「……瑛里って感情をストレートに表現するのは苦手だから誤解されやすいけれど、本当は人のことよく見ていて、世話焼きなところがあるわよね」
「……いきなり、何の話よ」
涼子さんにそう言われて、瑛里さんは照れているのを隠すように、ぶっきらぼうに答えた。
「文乃も。この前の握手会で確信したけれど、あんなに素敵なファンがたくさんいるんだもの。それだけ、ファンの方々に愛されているんだって分かる。大切にされるだけの魅力が、文乃にはあるんだって」
「え、あ、ありがとう、ございます……」
突然褒められて、私は戸惑う。
「音羽は歌を届けたいからアイドルになって、日和は好きなボードゲームの魅力を伝えるために、紗季は憧れのアイドルに近付くために、それぞれアイドルをやっている。けど、私には」
涼子さんがそこで言葉を切る。
「私には、何もない。音羽がいなくなってしまったら、私がステージに立つ理由なんて、何もないの」
それは、初めて聞いた、涼子さんの本音。
「私はよく、ミステリアスなところが魅力って言われることがあるけど。それって何もないから、秘密で自分を彩っているだけ。隠しているだけなの」
そう言った涼子さんはどこか悲しそうだった。この表情を、私は見たことがある。
……そうだ、あの時。『ハシャぎたいんじゃNight?』の練習を見ていた涼子さんが、一生懸命練習している音羽たちを見ていたら微笑ましくて、って言っていたけど。あの時の表情と同じだ。
自分には何もないと思っているから、明確に目標や目的があってアイドルをしているみんなのことが眩しかったのかもしれない。
「音羽がいない今、私は何でステージに立つんだろうって。そう考えていること、瑛里には気付かれてしまったのね」
「何となくだけどね。練習していくうちに違和感を感じるようになって、今までと何が違うんだろうって考えて。あぁそっか、音羽がいないからか、って。あんたは人のサポートが得意で、今までは音羽のためにアイドルやってたんだから、そりゃあそうなるわよね」
「何だか、人に見透かされるのって恥ずかしいわね」
涼子さんが照れたように笑う。
「けど、この事務所には音羽以外に、素敵なアイドルがいて。私はそんなみんなをサポートすることにやりがいを感じているし、音羽がいないから私もライブを欠席します、なんて無責任なことはしないわ」
その言葉を聞いて、私はふと、あれ?と思った。
何だろう、今、見逃しちゃいけない何かがあったような。
「音羽がいないのは確かに残念だけど、私は私のできることをして、ライブを成功に導いてみせる。その思いは本当だから」
そうはっきりと言った涼子さんの目は真剣で、ライブへの強い思いが伝わってきた。ライブを成功させたいのは、涼子さんだって同じだ。
でも、何かが。何かが私の胸に引っかかっている。
「ライブまであと3日しかないのに、弱音みたいなこと言ってごめんなさい。『DETERMINATION』に関しても、今回は私がセンターになってしまったけれど、人気のある曲をやらないわけにもいかないし。瑛里の言葉を借りるなら、前を向いてやるしかないじゃない、ってね」
そう言って、涼子さんが笑う。時間がないのはその通りで、今5人でやれる最高のステージを作り上げなきゃいけなくて。
5人で。そう、涼子さんも入れて、5人で。
「……涼子さん、何で自分のこと入れないんですか?」
「え?」
私の質問に、涼子さんは少し驚いたのか、声を上げる。
「私、実はちょっと、涼子さんが遠い存在みたいに感じる時があって。何でだろうって考えたんですけど、涼子さんさっき、この事務所には素敵なアイドルがいる、そんなみんなをサポートするのにやりがいを感じている、って言ってました。何だか、涼子さんが含まれてないみたいな言い方だなって。涼子さんだって、素敵なアイドルなのに……」
振り入れも早くて他のメンバーにアドバイスしていたり、スタッフさんからも信頼されていて、プロデューサーさんと一緒に握手会のことを考えたり、裏方のことをいろいろやってくれているから忘れそうになるけど。
決してサポーターに留まる存在じゃなくて、涼子さんだって私たちと同じ、一人のアイドルなんだ。
「私が『DETERMINATION』をやることになって不安でいっぱいだった時も、涼子さんは声をかけてくれました。ファンのみなさんのためにがんばろうって気持ちにさせてくれました。涼子さんその時、ファンのみなさんが文乃の『DETERMINATION』を喜んでくれるはず、って言ってましたけど……涼子さんのファンのみなさんだってきっと、涼子さんがセンターに立っているこの曲を楽しみにしていると思いますよ……!」
「そう……かしら」
「そうですよ!」
自分のことにはまだ自信を持てない私だけど、涼子さんのことなら自信を持って言える。
「それに、涼子さんは何もなくないです。前にやった握手会で、涼子さんのファンの方はみんな優しかったし、私が楽しめる話を持ってきてくれたり、ちゃんと私の活動のことも見ていてくれて、安心感がありました。紗季さんが言ってたんですけど、ファンって推しに似るらしいんです。それなら、そういうファンがいる涼子さんが素敵だってことじゃないですか……!」
「私が……」
戸惑っている様子の涼子さんに、瑛里さんも「そうね」と加わってきた。
「本当に何もない人間にファンはつかないわよ。涼子が気付いてないだけで、ファンのみんなはあんたのいいところをきっとたくさん知ってる」
「瑛里……」
「……なんて、言葉で言っても完全に信じられないでしょうから、まずは今度のライブを楽しみにしてるといいわ」
瑛里さんの言葉に、涼子さんは「え?」と疑問の声を上げた。
「ライブを楽しみに、って……それはファンの方々に向ける言葉じゃ……?」
それに対して瑛里さんは「分かってないわね」とでも言いたげな笑みを浮かべる。
「とにかく、ライブまで時間がないわ。私これから文乃と2人で『純心ポイズン』の振りを確認するんだけど、涼子時間ある?」
「時間なら、あるけど」
涼子さんの疑問に答えずに、瑛里さんがストレッチを始める。
「『DETERMINATION』を一回、合わせない?涼子が何考えてるか分かった今なら、もっと良いパフォーマンスができそうな気がして。この感覚を忘れないうちに、一回やっておきたいのよ」
「ですね!私からもお願いしたいです……!」
私が瑛里さんに続けてそう言うと、涼子さんは微笑んで「そうね」と言った。
「『純心ポイズン』が終わってからで良いわ。私も準備するわね」
涼子さんが事務所にシューズを取りに行くのを見送ってから、私たちはストレッチを始めた。そして、瑛里さんが曲を流そうとするタイミングで、私は「あの」と口を開いた。
「私、いつも涼子さんとか瑛里さんとか、みんなに頼りっぱなしだけど……今は涼子さんのためにがんばりたいって思ってます。涼子さんがセンターの『DETERMINATION』、絶対に良いものにしたい……!」
私の言葉を聞いて、瑛里さんも笑みを浮かべる。
「私も。さっきの涼子の話を聞いて、もっと強くそう思うようになったわ。一緒に頑張りましょ?」
それに対して私が力強く「そうですね!」と頷いた時、涼子さんが戻ってきた。私たちの様子を見て、「あれ?」と首を傾げる。
「まだ始めてなかったの?」
「ちょっとね、大事な話をしてたのよ!」
瑛里さんと私が顔を見合わせて笑うと、涼子さんもつられたように笑ってくれた。
第5話 私のDETARMINATION
「涼子」
ライブ当日。音羽に声をかけられて、私は振り向く。
「私、ここで見守ってるから」
ステージ袖に用意された椅子に、私服姿のままで座っている彼女にそう言われ、私は「ありがとう、音羽」と返す。
ステージの裏では、スタッフさんたちが絶え間なく動き回ってライブの準備に取り掛かっている。私たちも衣装に着替えてメイクをして、本番まで思い思いに過ごしていた。私は早く準備を終えたので、その分の時間を立ち位置や振り付けの確認に使う。
音羽はこの日、舞台袖からライブを見守ることにしたようだった。こんなことを考えている場合じゃないのだけれど、本当のことを言うなら、音羽と一緒にステージに立ちたかった。けれど今日、それは叶わない。
「そろそろ始まるぞ、スタンバイ急げ!」
私の寂しさをかき消すようなタイミングでプロデューサーが叫ぶ。音羽はそれを聞いて「行ってらっしゃい」と笑顔で私を送り出してくれた。でも、その笑顔の中に寂しさが滲んだのを私は見逃さなかった。
「ライブ、成功させてくるわね」
「うん」
だからせめて音羽を安心させられるように、なるべく力強く笑う。そして、音羽が頷いたのを見届けて、私はステージへ向かった。
ライブは滞りなく進んだ。
私は最初に3曲連続で出番があって、その中に『ハシャぎたいんじゃNight?』が含まれていたことで多少体力面でのつらさは感じたけれど、何とかやり切った。任されたことをやり遂げるこの達成感は、この事務所に入ってから新たに味わうことができるようになったものだった。
そして、私のソロ曲の『Deal with』。客席中の視線が私に集まるのはこの瞬間だけ。文乃に言われた「涼子さんだって素敵なアイドルなのに」という言葉を、まだ完全に自分の中に落とし込めてはいないけれど、それでも私なりに、私だけのステージを作り上げる。白のサイリウムの中を歩く気分は、悪くなかった。
ライブも終盤に入り、最終ブロック。私は日和と紗季と3人で『ROCKET DASH‼︎!』を披露する。日和は注目を浴びると緊張してしまうと言っていたけれど、こういう時の勢いには目を見張るものがある。会場を盛り上げるなら、日和と、それから紗季に任せればちゃんとこなしてくれる。この2人と一緒に歌うことで、私のボルテージも上がっていくのを感じた。
それから、瑛里の『ウザラヴ』、文乃と日和の『愛してくれない王子様』。それが終わると、紗季の『emotions!』。その間に、さっきまでステージに立っていた文乃は急いで私と瑛里と合流し、3人でメインステージ裏に立つ。
次に、日和と紗季の『GO ストレート‼︎』が流れ始めた。この次の曲が、私たちの『DETERMINATION』だ。
「ねぇ、涼子」
瑛里に声をかけられる。ライブが進んで前髪が崩れているけれど、その眼差しはより一層光に溢れていて、ライブを楽しんでいるのだと分かる。
「今日までいろいろ大変だったけど、ここまで来れて良かったわ」
「……私も、本当のことが言えて良かった。瑛里に指摘されなければ、なぁなぁで今日を迎えていただろうから。ありがとう」
2人で顔を合わせてふふ、と笑う。
「じゃあ、お礼ついでに私、次の曲で涼子にやってほしいことがあるんだけど」
「何?限度があるけど、聞いてあげてもいいわよ?」
瑛里の口調を真似て、返してみる。でもそれには気付いてくれなかったのか、彼女は「そんな難しいことじゃないわ」と続けた。
「客席を見ていてほしいの」
「客席?」
「絶対いいもの見られるから」
その意図を聞こうとした時に、彼女はメイクさんから髪型を直され始めた。私から顔を背けてしまったので、瑛里の意図は分からずじまいになったけれど、とりあえず次の曲の間はさっきのお願いを聞くことにするしかない。
「あの、涼子さん」
次は、瑛里の反対側にいる文乃からも話しかけられた。彼女の小さな声はステージ上にいる日和と紗季の歌声にかき消されるかと思ったけれど、真っ直ぐに私の耳に届いた。
「私、アイドルになれて良かったです。ライブって、練習してきた歌やダンスをファンのみなさんに披露する場であると同時に、私を見てもらう場でもあると思うから。涼子さんにとっても、そうであればいいなって思ってます」
そうか、もしかして、瑛里が言っていたのって。
「次、お願いします!」
スタッフさんに言われ、私たち3人はステージへ歩き出す。小さなライトを頼りに位置について、曲が始まる瞬間を待つ。
瑛里に言われたことの答え合わせまで、あと少し。
『DETERMINATION』はこのライブでの最後のユニット曲。
最後を飾るのにふさわしいパフォーマンスをするための準備ならしてきた。1週間という短い期間だったけれど、文乃もよくついてきてくれた。
『GO ストレート‼︎』が終わって、私たち3人がライトに照らされる。前奏が始まった瞬間に、客席がざわついたのが分かった。
私がセンターの『DETERMINATION』を、本来音羽と2人でセンターをやるはずのこの曲を、ファンの方々が受け入れてくれるのか。そこはもう、各々の捉え方の問題だと割り切っている。ここに来ている人の中には音羽のファンもいるはずで、その人たちにとっては悔いの残るステージになるだろう。
私はこの曲を歌っている時、音羽の歌声がファンの方々に届いているのだと実感することが好きだった。青のサイリウムを灯している人々が感動している様子を見ることが好きだった。でも今日、それは見られない。私の見たい景色がここにはないという、ある種の諦観。
それでも私は与えられた役割を、プロデューサーの采配を完璧にこなす。そして、瑛里に言われた通り、いつもより客席に目を向けてみた。
歌い出し。客席の注目が私に集まっているのを感じた。そして、私の目に飛び込んできたのは、白のサイリウムを灯して笑顔になっている人や、涙を流している人だった。音羽の歌声はここにはないのに、私の歌で、感動してくれている人がいる。
「言葉で言っても完全に信じられないでしょうから、まずは今度のライブを楽しみにしてるといいわ」
ライブの3日前に言われた、瑛里の言葉を思い出す。
瑛里はきっと、この光景が広がることが分かっていたのね。
私の担当色は白。
白という色はよく、頭が真っ白になったという文で使われるように、無いことの例えとして用いられる。
私はみんなのサポートが得意で、自分がセンターに立つよりは、誰かを際立たせる存在でいる方が性に合っている。担当色が白であることには、そういう意味合いも含まれていると、自分では思っている。
でも今、誰かを際立たせる白でいる私のことも、みんなが見てくれているということを知った。ここにいる人たちが、私の歌やパフォーマンスに心を動かされている。私がここにいても良いと、柊涼子としてここに立っていても良いと、伝えてくれている。
サビに入る前。文乃と瑛里が向かい合っているその間を、私は堂々と歩き、前に出た。初めて、「この瞬間は私を見ていてほしい」と思いながら。
ライトがステージ全体を煌々と照らす。サビに入ると、客席にいるファンの方々の表情がより一層輝いていった。
これが、音羽がいつも見ていた景色。私が見えていなかった景色。いつもより多く灯されている白いサイリウムの海が綺麗で、ずっと見ていたくなる。
それでも曲は進み、いずれ終わってしまう。それなら私は、この光景をずっと忘れないでいたい。そして、これからもずっとこの光景が見られるように、アイドルを続けていきたい。
「私」を見ていてくれて、ありがとう。
今日のこと、絶対に忘れません。
私たちが『DETERMINATION』を最後まで歌い切った瞬間、客席から大きな拍手が贈られた。
***
締めの『SPOTLIGHT‼︎』を歌い終え、ライブは終了した。私たちはステージ袖で水分補給をする。その間、客席からアンコールを求める声が上がり始め、それが次第に大きくなっていく。
「ほら、アンコールだぞ!」
プロデューサーに言われ、みんな鏡を見て髪やメイクを直し始める。私は元々髪をしっかり結ってあってあまり崩れていなかったから、メイクだけを直してアンコールの準備をする。
「すごかったよ、涼子」
その時、音羽が隣に来た。客席からの声にかき消されないよう、私の耳元で話してくれる。
「音羽」
「何?」
「私、悔しかったことがあって」
「悔しかったこと?」
「私を見てくれている人たちがいることに、本当の意味で気付けていなかった。その人たちのために、アイドルでいるという決心ができていなかった」
「……そっか」
音羽が優しく笑う。どこか安心したように見えるその表情を見て、私は気付いた。瑛里と同じように音羽も、ずっと前からこのことには気付いていたのだと。
「それなら涼子は今日、アイドルになったんだね」
音羽は時々不思議な言い回しをするけれど、この言葉の意味は私にも分かった。
柊涼子はこの日、ちゃんとアイドルになれたのだと。
「音羽。……今度また一緒に歌えるの、楽しみにしてる」
「……っ!うん……!」
嬉しそうに頷く音羽の後ろで、プロデューサーが「よし、全員準備できたな!?」と声をかけてくる。
「いつでもいいよ、プロデューサー!」
「私も、大丈夫です!」
紗季と日和が、マイクを握り直して笑う。
「さ、行くわよ!」
「はい!」
瑛里と文乃も準備を整え、ステージへ向かう。
「行ってこい!」
プロデューサーに送り出されて、私もステージへ駆け出そうとする。その私の腕を、音羽が掴んだ。
私が振り向くと、音羽は「ありがとう」と呟いた。
「涼子。私と一緒にアイドルになってくれて、ありがとう……!」
あとがき
まずは、ここまで読んで頂きありがとうございました。アイドルアライブ、本当に素晴らしいボードゲームなので、これから二次創作という分野でも輪が広がっていけばいいな……!と思って書かせて頂きました。誰かが書けばみんな書く(描く)やろ、の精神。
ただ、私の解釈が多大に含まれている作品になったため、皆さんにとって納得のいかない部分もあるかと思うと若干不安もあります。ですが、無事に完成させることができて良かったです。改めて言っておきたいですが、他のプロデューサーさんを咎めるつもりもなければ、運営陣に対して「こうしてください!(特に楽曲に関して)」と主張するつもりもありません。捉え方や楽しみ方は人それぞれであることは重々承知しています。
元々、『Deal with』の「空虚な私を秘密が彩る」という言葉を見た段階で、「これで話が1本書ける」とは思っていました。その時点で練っていた構想の大枠は変わらず、「柊涼子というアイドルが本当の意味で生まれた日の話」として完成させることができました。
実は、10月に主催したオンライン対戦会で、マッチング係をやりながらずっとこれを書いていました。というのも、その時に書いていた場面が、音羽が怪我してライブ欠席になりセトリ変えますよ〜というシリアスシーンだったため、人が話しているのを聞きながらでないと私のメンタルが保たなそうだったので。ライブ欠席のお知らせを書くのも、音羽の名前に横線引いて消すのも、本当に心が痛かった。自分で考えた話なんですけどね。
ちなみにセトリも自分で考えました。今見返すと「ほんまか?」という部分がありまくりですが、物語の都合ってことでどうか一つ。
そして今回『DETERMINATION』を歌った3人ですが、私が普段アイドルアライブで愛用している構築になります。唐突に過去のnoteを貼り付けていくプレイング。
ちなみにこの構築、『DETERMINASTION』は入っていません。作中で唐突にこの3人に振り入れさせておきながら、私の構築に『DETERMINATION』は入っていません!ごめんな!
あとは、今回の小説を書いた感想になりますが、紗季と瑛里が勝手に喋ってくれるので本当に助かりました。特にエリ様の言動がいちいちイケメンすぎる。さっき載せたnoteの構築使ってみてください。エリ様本当にイケメンなので。私にはもうエリ様がイケメンにしか見えない。この構築、文乃と涼子までは固定だと思うので、拡張が出てしまったらエリ様いなくなってしまうんか……?えー、今回の話書いて文乃&涼子も涼子&瑛里も瑛里&文乃もいいなーって思ってきたところだったのにー!でもステラ発売楽しみです!かのんちゃん気になります!
そして、物語の都合で途中退場してしまった音羽、スポットを当ててあげられなかった日和、本当にごめん。ただ、今回は涼子の話にしようと思っていたので、音羽に関してはリリフィア中心の話を、日和に関しては日和が主人公の話を書かないと、私の技量では輝かせてあげられなさそう。前者は身内が構想を勝手に練って語ってきましたが特に今後書く予定はないですし、後者は日和が闇堕ちしてしまうので多分書きません。「書きたい時に書きたいものを書きたいように書く」が私のモットーなので、「書いてください!」と言われても書きませんごめんなさい。
ちなみに私、普段はバッドエンド製造機として、バッドエンドな話を量産しています。特にまどマギパロが大好きで、書いたものを見せたら夫と妹に「人の心ないんか!」と言われました。けど私じゃなくてキュゥべえがやったことなので……。
何はともあれ、読んでくださった方々には本当に感謝しています。そして、このゲームを作ってくださったSUSABI GAMESの皆様、いつも楽しませて頂いております。本当にありがとうございます。
そして、11月2日の新作体験会とハッククラッドのミニトーナメントに出るので、当日はよろしくお願いします!
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