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作戦

学生時代に、すごく好きだった人がいた。

彼とは数少ない親友のひとりとして今もなお付き合いが続いている。


その人のことが、本当に本当に好きだった。



人として好き、異性として好き、雰囲気が好き、その人らしさが好き、……。

好きにもいろいろあるけど、どの種類の好きも網羅しているほど多種多様な好きをまとめた好きかもしれない。


なんでも話せる同性の親友がいる。彼女含め3人で仲良し。

彼のことを恋の意味で好きだったってことは、彼女にも話したことがない。

今さら言うことでもないのはなおのこと、学生時分も頑なに話したことがなかった。もし知ったら驚くだろうな。



バカ素直で好きな気持ちが秒バレしちゃう私なのに、どうして伝えられなかったのか不思議。


おそらく、あらゆるものが終わってしまうことを知っていた。


しがらみです。

私たち3人を取り巻く人間関係、主に外野が至極複雑難解でした。

誰が付き合った別れた、好き嫌い気に入らないとか、目をつけられたとか。

単純人間私には理解できない、機微に富んだ人間関係のさなかに彼も彼女も私もいた。

私は、気に入らないとか目を付けられるとかのタイプだった自覚がある。「変だから」。

彼も彼女も好かれかわいがられ慕われる佳き人であった。

そんな2人と仲良しで、あれから10年経った今も付き合いがあるのが心底嬉しくありがたい。



だから言えなかった。

上手くいこうといかまいと、恋愛という終わりあるものに帰結するのがイヤだった。

それ以前に、私のような「イカれてる」と言われる人間と深くかかわる姿勢を示すことでマイナスの効果が及ぶんじゃないかと思った。

3は3でバランスが良いんだから。佳き人と佳き人といると、「イカれてる」人も少しおもしろい人ぐらい。

これを崩すメリットは限りなく0。

私は彼のことが本当に本当に好きだった。

彼女のことも本当に本当に本当に好きだった。

大好きな2人が私と関わってくれて嬉しい。だけどすごく申し訳ない。

透明人間になりたいな、それが適わないなら……。

私はある作戦を思いついた。




それから10年経ちました。

オンライン飲みの真ん中頃に、彼女は私に言いました。

「この3人でいるのがしっくりくる。すごく馴染む。どの1人が違う人でもこうはならない。」



作戦成功です。一か八かの、一世一代の、作戦成功です。涙が出るほど嬉しかったな。

ぐしゃぐしゃの顔でありがとうを言う私の言葉、2人はにこにこ笑いながら聞いてくれました。




そう言えば。

好きだって伝えてなかったとずっと思ってたけど、伝えてたよね。

ずっとずっと、あなたの事がだいすきって伝えてたよ。

恋とかよりももっと大きなスケールの、あらゆる意味の好きだよって、彼にも彼女にもずっと伝えてたよね。

イカれてる私の話、いつも聞いくれてありがとうね。

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