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フィリピンで全社員(約200名)を在宅勤務にしたことで発生した費用

フィリピンにおける「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の感染拡大とフィリピン政府ならびにセブ州政府による行政命令を受け、当社のフィリピンオフィスは3月16日から徐々に在宅勤務へと移行しました。

BPOやIT開発のアウトソーシングといったオフィスにある機材やチームの体制を基盤としてビジネスを展開している当社のような企業で、当該社員を完全に在宅勤務させて事業が通常通りに遂行できるのかという判断はとても難しいものでした。まだ今後も拡大の懸念がある中で同じような事業をおこなっている人々にとって、少しでも参考になればと思って記載いたします。

フィリピンとコロナウィルス

フィリピンは新型コロナウイルス感染症対策として他国に先駆けて、感染が拡大していた中国からの入国をいち早く禁止にするなど、2月までは素晴らしく感染を抑えることができていました。しかし、その状況が3月に入って一変し、感染者数が一気に増えはじめたのです。3月12日にはマニラの封鎖が発令され、そうなるとセブもいつそうなってもおかしくない状態になります。当社でも既に緊急時の行動方針を定めてはいたのですが、事業継続のために在宅勤務の準備を進める必要がでてきました。

フィリピンにおける在宅勤務の環境

日本で在宅勤務と聞くと、

・「会社のノートパソコンを自宅に持って帰って作業する」
・「自宅のパソコンからオフィスのネットワークにアクセスして作業をする」

のどちらかになるかと思います。あるいは既に必要な情報は全てクラウド化されていてどこからでもアクセスできる場合は、

・「パソコンとインターネットがあればいい」

ということになるでしょう。

当社でおこなっているIT開発アウトソーシング事業、会計BPO事業、クリエイティブ事業に関しても、パソコンと必要な情報にアクセスする通信環境があれば基本的には在宅勤務が可能です。しかし、当社社員で会社からノートパソコンを支給されているのは約30%、大半の社員がデスクトップであること、またフィリピンでは日本ほどブロードバンド回線やパソコンが家庭に普及していないこともあり、各社員の自宅にそういった環境があるのかを把握しなくてはいけません。その上でどの程度実現可能なのか、不足しているものを会社で調達した場合、どの期間で調達ができ、そしてどの程度の予算が必要なのかを把握し、判断をする必要があると考えました。

社員へのアンケート

当社の200名弱の全社員にアンケートをとったところ、自宅にPC環境が無い社員が約31%いることがわかりました。また自宅にはインターネット環境がない社員が約16%、モバイルデータ通信しかない社員が21%、つまり業務で使用できる通信環境が無い社員の割合は合計すると約37%ということがわかりました。

状況は刻一刻と変化していき、セブ市政府から夜8時から翌朝5時までの外出禁止令、公共交通機関での乗車人数制限といった行政命令も発令されました。これにより減便となった交通機関も多く、通勤時間が2倍になる社員もでてきました。その中で夜8時までに確実に帰宅をするためには午後4時にはオフィスを出る必要があることもわかってきました。お客様の業務の一部をアウトソーシングという形でお手伝いしている当社では、納期が近づきプロジェクトが佳境に入った際には残業することもあります。それらのプロジェクトは、この行政命令により大きく影響がでることも予想され、速やかに在宅勤務体制にシフトすることを決断しました。

在宅勤務への移行方針

この状況を考慮して当社では以下の対応を進めることにしました。

・パソコンに関しては、デスクトップ含めてオフィスで使っているものを自宅に持ち帰って作業すること
・プロジェクトを緊急度によって3つのグループに分類し、緊急度の高いプロジェクトメンバーから優先して在宅勤務に移行すこと
・自宅に通信環境が無い社員に関しては、必要なモデムと回線を会社で手配し、手配できたものから順次在宅勤務にシフトすること

パソコンに関しては、日本ではデスクトップを自宅に持ち帰るという話はあまり聞きませんが、社内のパソコンにはアンチウイルスソフトウェア、資産管理、ファイルアクセス監視といったセキュリティ関連の対策がしっかりと取られていることを重要視し、持ち帰るのが最善と判断をしました。

またプロジェクトに関しては、納期が近いものから順に緊急度をつけ、緊急度が高いプロジェクトへの影響を最小限にするため、これらのプロジェクトから優先して移行を開始することにしました。また、担当者が1名のプロジェクトも優先度をあげることに決めました。

在宅勤務への移行から稼働まで

デスクトップパソコンを自宅に運ぶ作業は車とドライバーを手配し、同じ方向ごとの社員をグループにして一気に運ばせる形としました。この方針で無事に移行ができるのか、まずは35名ほどのメンバーを第一陣として実行してみて、不具合や不都合が生じないか、事業運営に影響を与えるようなトラブルが発生しないかをモニタリング。順調に移行ができていることを確認したうえで、第二陣、第三陣と移行を開始していきました。結果的にセブでは27日から自宅隔離の行政命令が発令され、出勤が許されない状況になりましたが、それまでにほとんどの従業員は在宅勤務へ移行し業務が継続できている状態になっていました。

在宅勤務に変わったことでプロジェクトの進行が遅れたり、社員のメンタル面の影響がでるといったマイナス面がでていけないため、運用ガイドラインを策定しています。毎朝ビデオを使ってオンラインで朝会を実施する、プロジェクトマネージャーは全メンバーとそれぞれ毎日最低3回1 on 1でビデオ通話を実施するなど、通常勤務時に少しでも近づけられるような運営をルールづけています。これらのガイドラインはお客様にも必要に応じて公開しています。また、セキュリティ面でもできるかぎり通常と同じセキュリティレベルを保てるよう、社内へのアクセス時はVPN経由でのみ接続ができるようにするなどインフラチームとも連携して、この不安定な時期の業務を一切滞りなく継続する仕組みを構築して運用をおこなっています。

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在宅勤務体制にかかった費用

この一連の移行に必要となった費用をまとめておきました。当初はノートパソコンを購入して支給する、全社員に対して電気代・通信代の補助を出すという話もあり、大きな予算が想定されていましたが、最終的には

・輸送費(パソコンの輸送費用、一時費用、往復分)
・モデム(通信モデム購入代、一時費用)
・通信費(会社支給のインターネット回線費用、月額)
・補助(自宅の電気代、インターネット回線利用の補助、月額)

といった費用となりました。

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実際はフィリピンの現地通貨ペソですがわかりやすく円に換算をしています。

輸送費は車及びドライバーのレンタル費用。自宅に通信環境がない社員のためのモデム購入費用。これらは初期費用になります。月額は会社支給の通信環境用の通信費分、さらに自宅の通信環境が月額固定ではなく従量課金の回線を使っている社員の通信費や電気代の補助といった形となります。

当初、外出禁止令などは4月14日までとのことですが、27日から始まった自宅隔離は現在終了予定がアナウンスされておらず、4月末、場合によってはもっと長く続くことも想定されています。

心配が続き不安定なこの日々が1日も早く終息に向かってくれることを願っています。

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