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雨、ときどき青空

ドアにもたれて外を眺めると、頭上だけが灰色の雲で覆われていることがわかった。電車はウオンウオンと異様な唸りをたてながら加速していく。レールが濡れて盛大に空転しているのだろう。ターミナル駅に着く頃には、雨が電車の屋根に叩きつけられる音が車内にいてもわかるくらい、土砂降りになっていた。


タカシマヤでバターバトラーを購入したら、地下フロアを通って元来た改札口を目指す。サンドイッチやエビフライ、手羽先、肉まんと、どうして百貨店地下のお惣菜エリアはこうも魅力的なのだろうか。後ろ髪を引かれつつも、ごくりと唾を飲み込んで足早に歩いた。

ホームに戻ると、目に見えるほど大粒の雨が降っていた。停車中の電車に乗ると、車内は空いていたので座席に腰を下ろした。雨が滝のように窓に流れ落ちていくのをぼんやり眺めていると、ドアが閉まって電車が発車する音。しばらく列車は轟音の中を突き進んでいたが、ほどなくして急に静かになった。はたと外を眺めると、窓に流れ落ちていた雨の姿はなくなり、代わりに窓からは陽の光が差し込み、残った水滴に反射し煌めいて、シートを照らしていた。「今日の天気は『天気の子』みたいだな」そんなことをふと思った。


電車を降りたらスーパーに寄って、弁当作りの買い出し。最近は4品作る気力が湧かないで、3品で済ませてしまっている。ブロッコリーは今日も手に取らなかった。小ぶりサイズが300円台後半で、今やすっかり高嶺の”つぼみ”になってしまった。
スーパーを出ると雨が微妙に降っていて、持っていた傘を差して歩いた。20mほど先をゆく白Tを着た中学生らしき2人組は、傘を持たず全身ずぶ濡れだったけれど、その背中からはどこか楽しげな雰囲気を感じられた。あの子たちにとっては、この雨のひとときすらも大切な友だちとのアオハルなのかもしれない。


水たまりの向こうに映る夏の雲がきれいだったので、思わずシャッターを切った。



小雨が降り、夕立のようなゴロゴロという音も聞こえるものの、こうして青空と白い雲が見えている部分もあって。それはまるで、一日に”夏”のいろんな顔を見させられているような。ここ数日前から続く”夏の延長戦”はもうこれで本当に最後だよって、空がこの三連休最終日にみんなに知らしめているような。そんな気がした。