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ナラティブストーリー

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ぼくのナラティブから紡ぎ出されるもうひとつのストーリー。
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ソーシャルワーカーは人生のスマートフォン

「ソーシャルワーカー? ナニソレ?」 ソーシャルワーカーと名乗った彼女はニコニコしながらこちらを見つめていた。   「ソーシャルワーカーは例えるならスマートフォンなんですよ!」 と人差し指を立てながら前のめりで説明してくる彼女。   なるほど。よくわからん。 でもこれだけはわかる。 彼女はぼくの手助けをしてくれる存在であるということ。       大学を卒業し、晴れて4月から新社会人としてある大手企業の営業職として入社したのだが、仕事についていけず上司にはいつも怒られてばかり

私は障害者専門のセックスワーカー

この作品はフィクションです。 この記事には性的な表現が一部含まれています。 18歳未満であっても閲覧してもらって差し支えありませんが、性的な表現に抵抗のある方はこのページを閉じるようにお願い致します。 「美鈴さーん! 次のお客さん入りまーす!」 「はーい! どうぞー!」 私は障害者専門のセックスワーカーだ。 この仕事をすると決めた時には親にものすごく反対されたし、しかも障害者専門ときたものだから友達にも「頭おかしいんじゃないの?」と揶揄されたほどだ。 最初にこの仕事を

ゆらり揺らぐ人生を

「ぼくは海賊の王になる男だ!」 どんなに激しい戦闘であっても、嵐の中でもしっかりと船の上で立っていられる抜群の平衡感覚を持っている。 次々と敵をなぎ倒し、ぼくは仲間たちとある場所を目指していた。 そこには一生遊んで暮らせるほどの財宝が眠っているらしい。 ほら、もうその財宝が眠っている島が見えてきた。 「あともう少しだ!」 シン…… 「え?」 風が消えた。 船が止まった。 島が見えない。 仲間たちは…どこに行ったんだ? ぼくは……ぼくは誰だ? ガバッ! 「はぁ…

「完璧」という名の檻から出た僕はそれが幻だと知った

「西宮駅~。西宮駅です」 車掌さんのアナウンスが流れる。 「うわ、やばっ!」 飛び起きた僕は慌てて、締まりそうなドアをすり抜けた。 「あぶなかった~」 そう呟きながら、すぐに歩き出す気持ちになれず約束の時間まで時間もあったので、一旦駅のホームのベンチに腰を下ろした。 そういえば昔の自分だったら電車で寝てしまうなんてことは絶対になかった。 座ることも難しかったかもしれない。 常にドアのそばに立ち今どこを走っているのか、どこの駅なのか逐一確認しなければ不安で仕方なかったのだ。 そ

ギフトはあなたの手の中で

リンゴーン… リンゴーン… リンゴーン… 「おめでとう!」 「お幸せに~!」 幸せのベルが鳴る中で純白のドレスに包まれたさあやとタキシードでビシッと決めているなおちゃんがみんなに祝福されている。 なおちゃんは何だかタキシードに着られている感もあるけどさあやは本当にきれいだ。 「ねぇねぇこうくん!3人で写真撮ろう!」 さあやが声をかけてきて、さあやのスマホで写真を撮った。 複雑な気持ちがないわけではない。 でもこんな日が迎えられるなんて幸せだとも思うんだ。 ぼくの幼

【小説】星空いるか

「おぎゃあ、おぎゃぁ」 ピーポーピーポー あーまただ。眠れない。 私の住んでいるマンションは隣の部屋に小さな赤ちゃんが居て、よく夜泣きをする。 そして、1階に住んでいて近くに消防署があるもんだから救急車や消防車もよく通る。 「何でこんなところに家を買ったのよ。もう」 誰も聞いているわけがないのに一人で憤り、布団をかぶった。 学校はいつも憂鬱だ。 耳障りな音が多すぎる。 どうしてみんなは平気な顔をして過ごせるの? 不思議でしかたない。 高校2年生である私は友達も作らず、