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ランドッグ2

犬を逃したことはあるだろうか。

ちなみに私はある。一回。家族がもう一回。
うちの犬は二回もノーリードアウトドアフリーダムライフを謳歌したのだ。
そんな犬は滅多にいないだろう(ノーリードダメ絶対)


あの日結構雪が降った日の翌日で、除雪車が雑に端っこに寄せていった雪をさらに近所のおじいちゃんおばあちゃんが川っぺりの雪捨て場にどんどん捨てていった事で、河川敷にスキーのジャンプ台みたいなものが出来ていた。
そこから川を覗き込むと、表面だけガチガチに凍っているが中では水が勢いよく流れている様子がよく見えた。
ぼーっと川を眺めている私の左手で掴んだリードをグイグイ犬が引っ張っていた。
たまに散歩しながら飼い主をの様子をなんども確認したり、飼い主と同じ速度でぴしっと前を向いて歩く柴犬を見かけるが、うちの犬は全くそんなことはせずハイテンションになり飼い主のことなんてほぼ見えていないタイプだった。
結構強めに引っ張るので、胴をぐるりと一周するベストにリードを着けて散歩をしていたので慢心していたんだろう。
あまりに引きが強いので振り返って見てみると、刹那ーー(バッカーノ!好きだからこれ言ってみたかった)なんと小さな子供がうんしょうんしょとシャツを一生懸命に脱ぐようにベストを頭から外している最中だった!!
「ちょ!!!!」と右手を伸ばした瞬間にはもう遅く、スポンと勢いよくベストから解放された犬は一目散に川沿いを走っていった。
唖然としている暇はなかった。幸運にも一直線を走っている犬はまだ目視できる範囲にいる。速攻で追いかける覚悟を決めた私はその場にダウンコートとバッグとリード全てを置いて氷点下を下回る気温の中マジの全力疾走をした。絶対に視界から逃さないように結構なスピードで全力の犬を名前を叫びながら置い続けた。家の近くは碁盤の目になっており、犬もそこまで複雑なルートを辿らなかったので5分くらい走り続けてもなんとか完全に見失うことはなかった。(今だったら2分で胃液吐いて死ぬと思うけど)

叫び続ける私にずっとケツを向けて走っていた犬が、ついにこっちを見た。
そして全力で私に向かって走ってくる!
ここで捕まえないと今方向転換されて急カーブでも曲がられようものなら完全に詰む。こちらに走ってくる犬を抱きとめる為にゴールキーパーの構えを取ったが、物凄いスピードでスルーされた。

スクリーンショット 2020-04-21 23.22.08

交差する想いーー
ちなみにこのあと犬は振り返り、このくだりを3回ほど繰り返した。

そんなことをずっと叫びながらやっていると、当時から過疎化で死の街みたいになってた近所の知らない家から知らないおばさんが心配そうに出てきた。
「犬逃げちゃったの?」
「え!?」
「これ良かったら使って!」
おばさんは漫画のホネの形をしたペットフードをくれた。
あまりに都合の良すぎる展開にゲームのイベントっぽさを感じたけど、後から話を聞くと女の子の叫び声が聞こえたから外を見たら家の前で私と犬が交差している所を最初から見ていたらしい。そしておばさんちでも犬を飼っていたのでペットフードをくれたのだ。
それをありがたく受け取り、某童話のパンくずのように等間隔に並べる。
すると犬はまんまと一個ずつ美味しそうに食べてこちらに近づいてきた。
小型犬用のフードを奥歯でアグアグ味わってる油断した所を後ろから襲い羽交い締めにした。ヒャン!と此の期に及んで逃げようとする8キロくらいある犬を持ち上げ、おばさんにお礼を言って捨てたダウンとか諸々を回収して家に帰った。もう二度と目を離しません。

2回目は大学生の時で、母親から悲痛なラインが届いたことが知らせだった。
犬が逃げた。朝に逃げてまだ見つからない。
そのラインを受け取ったのは夕方ぐらいだったので、もう逃してからかなりの時間が経過していた。
私の時と違い、完全に見失ってしまっていたので、母親はかなり取り乱していた。そりゃあこの信号なしの横断歩道でどれだけ子供が手をあげて待っていようと一向に車は止まってくれない完全車社会車至上主義の北海道で犬が逃げたとなれば最悪の結果を考えるのは無理もないことだった。
父親と散歩に行く際にリードをつける前に軽く玄関ドアを開けた時、いつの間にかスルリと抜け出していったらしい。
車と足で一日中探したが結局犬は見つからなかった。
めちゃくちゃ心配だったが私は東京にいたのでどうする事も出来ず、続報を待ってそわそわあたふたするしか無かった。嫌な時間の過ごし方だ。

夜中になって、帰ってきた!!!とラインが来た。
帰ってきた?とは?と疑問に思ったが、まさにその通りで、
なんと犬は朝に脱走し、夜中に自力で帰ってきたらしい。
実家の玄関には動くものに反応して点灯するライトがあり、それが点灯したのでカーテンを開けてみると庭に犬が座っていたとのことだった。
母親が庭にでる窓を開けるとそのまま家に普通に入ってきたらしい。
大泣きする母親と呑気に飯を食う犬の画像が父親から送られてきた。お前が逃したんだから反省しろ(ブーメラン)
その後足に少し怪我をしていた報告が送られてきた。


うちの犬は帰巣本能が働いたのかはたまた近所に潜んでいて腹が減ったから帰ってきただけなのか、家族が恋しかったのかはわからない。
でも無事に帰って来られたことは幸運だったとしか言えない。
みんなもペットを逃がさんようにマジで気をつけような。

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ランドッグは外の世界で何を見たんだろうか。

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