◆技術の進歩は社会常識を変える

本来は技術や科学が変化すれば、それにつれて社会の価値観も変わるはずです。
社会の価値観、という言葉は耳慣れないのですが、ここでは「何が良くて、何が悪いと人々が感じるか」というふうに考えてください。
実例で説明します。
たとえばルネサンス以前、聖書といえばラテン語の筆写本でした。そのため、聖書は大変な貴重品で、読める人間も聖職者に限られていました。だから当時の人々は、教会や聖職者をすごく尊敬していました。
荘厳な教会の大伽藍(だいがらん)、反響する聖歌隊の歌声、そして分厚くて読むことのできない聖書。中世の人々が、いかに教会に畏怖を感じていたか、本当に実感はできませんが、何となく分かるような気はします。
しかし、グーテンベルクが活版印刷を発明したおかげで、だれでも家庭で聖書が読めるようになってしまいました。あの無限の謎をたたえた書物を、買って読むことができるのです。
すると、教会での説話と聖書の矛盾に気がつく人も出てきます。
イエス・キリストは荘厳な教会を建てて自分の像に祈れ、なんて一言も言っていないじゃないか! その結果、人々が教会に対して感じる尊敬、権威はどうしようもなく衰退してしまいました。その価値観の変化は人々を、中世の「疑問を持つな。ただ祈れ」という価値観から解放し、ルネサンスをさらに加速させ、産業革命の足がかりとなったのです。
人々の価値観が変わると、社会のシステムもすべて、大きく変わってしまいます。技術の進歩は人々の価値観を変え、社会システムをも変化させたのです。技術や科学が変化すれば、それにつれて社会の価値観も変わる、と言ったのはこういう意味です。

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