雪野 ゆずり
咲良と楓に降りかかる障害。それでも彼らは色んな人達の協力を得てそれを乗り越えていく。 って感じの物語です。少しでも楽しんでいただけたら幸いです!
これは病を乗り越える少年とそれを支える少女の話
あらすじ 咲良と楓に降りかかる障害。それは二人で立ち向かうにはあまりにも大きな壁。それでも彼らは色んな人達の協力を得てそれを乗り越えていく。果たして、彼らは二人だけの幸せを手に入れることが出きるのか。 楓くんと付き合い始めて二ヶ月。ついに初デートの日を迎えた。 待ち合わせの場所に行くと、まだ三十分前なのに楓くんがいた。 「ごめん、待った!?」 駆け寄ってそう言うと楓くんはびっくりした顔をした。 「いや、まだ三十分前だぞ?早くね?」 「そ、それは楓くんも···。」 「それは、
髪を切った後、かーさんたちに言われて家に入った。咲良の髪は俺が切ったからかぼさぼさしていた。 「咲良、髪、整えに行かないか?」 「え…?」 朝ごはんを食べた後、俺がそう言うと、咲良は首を傾げた。 「そうだね、髪の毛ぼさぼさだし、素人が切った後だから整えたほうが良いね。」 「で、でも、あの…。」 咲良が言い淀んでると、明日佳さんが答えた。 「咲良、行きつけの美容室が、最近閉じちゃったのよ。」 「え?そうなの?」 明日佳さんの言葉に、かーさんが驚いた。 「はい…。優しい方
朝になると楓くんの腕の中にいた。ここはいつもあったかい。 楓くんの寝顔がかわいくて、つい頭を撫でる。ふわふわしてる…。 「ん、咲良…。」 「あ、ごめん、起こしちゃった?」 「いや…。大丈夫…。」 まだぼんやりしてるのか、返事が遅い。 「まだ寝てていいんだよ?」 「いや、起きる…。」 そう言って楓くんと起き上がる。 「ふわあ~…。おはよ、咲良。」 「おはよう、楓くん。」 大きな欠伸をすると、楓くんの目がぱっちりした。ぽわぽわしてる楓くん、かわいかったんだけどな…。 「
その夜、夜中に目が覚めて、水でも飲もうと思って下に行くと、リビングの明かりが点いていた。中を覗くと、俺と咲良以外の大人たちが集まっていた。 「私、咲良を…咲良を守り、切れなくて…。」 涙声でそう言ったのは明日佳さんだった。隣でかーさんが背中をさすってる。 「でも、咲良ちゃんに大きなケガがなくて良かったじゃない。」 「でも…でも…。」 「それなら、僕だって同じだ。咲良ちゃんと明日佳が苦しんでいる時にそばにいられなかった…。」 柳さんが両手を握りながらそう言う。 「柳くん、
楓くんとリビングで寄り添っていると、少しずつ落ち着いて行った。上ではお義母さんたちがお父さんと言い争う声が聞こえていたけど、しばらくすると聞こえなくなって、玄関から誰か出ていく音がした。そのすぐ後、お義母さんたちがリビングに戻ってきた。 「追い払ったわ。」 お義母さんの一言に、お姉ちゃんと私は安心して、ホッと息を吐いた。 「ありがとうございました。」 そう言ったのは、柳さんだった。柳さんは、お義母さんたちと買い物に出ていた。楓くんの家の車が壊れて、修理に出したらしくて運
遊園地に行ってから1週間が経っていた。車の教習も滞りなく進んでいて、予定通り卒業出来そうだ。 今日も教習が終わって家に帰る。たしか、咲良たちと夕飯を食べる予定だ。こういう日は大抵咲良の家に行くんだが、今回は俺たちの家で食べる。楽しみだな〜。 「ただいま〜!」 でも、家に入っても電気が消えていた。あれ?おかしいな…。咲良の家、行ってみるか…。そう思って家を出ようとした時、咲良の家から大きい音がした。嫌な予感がして、走って行くと、明日佳さんが玄関で倒れてた。 「明日佳さん!
お昼を食べた後も色々廻って、いつもより早く時間が経っていた。 「次で最後だな、時間的に…。」 「もうそんな時間か~…。」 そう言いながら楓くんと後ろを見る。玲緒さんたち、少し打ち解けたのか、ギクシャクした感じがなくなってる。 「最後はやっぱ観覧車か。」 「だね。…お二人にも聞かなきゃね。」 「そうだな。…二人とも、最後に観覧車でいいですか?」 「あら、いいわね観覧車。ね、玲緒さん。」 「そうだね。行こうか。」 そう言って観覧車に向かう。私たちは夕方までだけど、他の人は夜
結衣さんと一緒で、ちょっと緊張してたけど、咲良といると楽しくてそんな気持ちも忘れていた。 「楓くん、次どこ行く?」 「う~ん…そうだな…。」 基本的に俺たちが好きなところを回っていいと言われているから、パンフレットを見て二人で悩む。観覧車は最後にするとして、次は…。 「二人ともストップ!!そろそろ昼飯にしないか?」 「え!もうそんな時間ですか!?」 兄貴に言われて腕時計を見る。ほんとだ、もう12時廻ってる…。 「中に色々食べるとこあるみたいだから、行きましょう?」 「は
デート当日。玲緒さんの車に乗って、玲緒さんの彼女さんを迎えに行く。 「どんな人だろうね?」 「そうだな。俺も詳しく聞いてないんだよ。」 駅前に着いて玲緒さんがスマホで連絡を取る。 「あ、いたいた。」 玲緒さんはそう言って車を降りた。すぐにきれいな女の人と一緒に戻ってきた。 「こんにちは、二人とも。」 「「こ、こんにちは!」」 「自己紹介とかはとりあえず着いてからでいいかな?」 「そうだね。」 そう言って車は発信する。なんか玲緒さんも緊張してる? 遊園地に入ってから
内見の日になった。今日は家族全員で行くことになった。 「咲良、眠そうだな。どーした?」 「ん?ちょっと寝不足なだけだよ。昨日夜更かししちゃって…。」 「少し寝てくか?」 「じゃあ、ちょっとだけ…。」 そう言って咲良は寝てしまった。支えてやると、そのまま俺に寄りかかる。ドキドキするけど仕方ない。心臓の音が聞こえないといいな…。 前のほうに乗ってる大人たちはウキウキしているようだった。 そんなこんなで賃貸会社の人に教えられたアパートに着いた。咲良は少しすっきりしていた。案
休み明け、花純ちゃんに新居探しの話をした。 「へえ、じゃあ近いうちに同棲するの?」 「うん。と言っても内見は来週だし、家具を揃えたりとか手続きとか…色々あるから住み始めるのは年明けまたぐかも…。」 今は10月中旬。楓くんの教習所のことやいろんな手続きその他諸々…やることはたくさんある。 「まあ、新生活はすぐには始まらないよね~。」 「新生活のこと、色々教えてもらうことになるかも…その時はよろしくね。」 「もっちろ~ん!…そう言えば、来週って楓の誕生日じゃない?誕プレは決ま
予定より早く賃貸会社に着いたが、快く対応してもらえた。 「えっと、高校卒業後の新居でしたね。何か条件はありますか?」 「あ、はい。これ、なんですけど…。」 咲良に渡されていたメモを、担当の人に渡した。 「えっと、なになに?バス・トイレ別、ベランダ付き、キッチン付き…その、これだけでいいんですか?」 担当の人に言われたけど俺たちは頷く。車の中でも話したけど、正直思いつかなかった。 「う~んそうですね…、二人で住まれるんですよね?」 「はい。」 「その…ぶしつけなことを聞き
面接した日から一か月、お互い内定通知が届いて本格的に新居探しを始めることにした。今日は、その前段階でばあちゃんたちに別荘の鍵を返しに来た。久しぶりに会いに行くから楽しみだな。 「そうかい、新居を探すんだね。」 「うん、楓くんと、その、同棲することになって…。」 「そうか…。まあ、お前たちなら大丈夫だろう。」 「じーちゃんのお墨付きもらえると嬉しいです。」 楓くんもそう言って頭を下げる。家具はそのまま置いて行くことになった。まあ、アパートでログハウスの家具は合わないからね。
面接は、午後まで続いてた。やっと終わって学校に連絡を入れた後、俺は咲良のお父さんに捕まってしまった。咲良の実家まで連れてかれる。 「で、何の用ですか?」 部屋に入ってすぐそう言った。咲良のお父さんとおばあさんを前に俺の背中は冷や汗が滝のように出てるが、顔には出さないようにした。 「せっかちだね、少しは待てないのかい?」 「あんたらの話をさっさと終わらせて、咲良に会いたいんでね。」 俺の言葉におばあさんたちはムッとしたようだが、事実だから仕方ない。 「まあ、良いだろう。大
次の日は湖のほとりを散歩して帰った。 夏休みも終わって、一週間。私は就職希望先に面接に来ていた。 「おはようございます、三波咲良です。」 「あら~咲良ちゃん。よく来たね。面接だよね。今店長呼んでくるね。」 「はい、よろしくお願いします。」 いつも来ているところだからか、緊張感がない。 「咲良ちゃん、おはよう。」 「店長さん、おはようございます。」 「面接するから、奥に来て。」 「はい。」 案内されて奥の和室に。正座して待ってると、店長さん書類を持ってきた。 「咲良ちゃ
咲良は泣き止むと力なく笑った。 「ありがと、こんなに泣いたの、初めて…。」 「もう、大丈夫か?」 「うん…でも、少し眠い…。」 「泣きつかれたんだろうな、少し寝るか?」 「ううん、大丈夫。」 咲良は首を振る。もう抱きしめてはいないが、咲良は俺の膝の上に座ってる。その状態で話してるから、咲良のいい匂いがする。 「そうだ、楓くん、結婚したらどんなところに住む?」 「ん?そうだな…。都会すぎるといやだしな…。」 「そうだよね、でも、それぞれの職場に通勤しやすい場所が良いね。」