二年前の日記 6/30

2017/06/30

 ブータンは中国とインドに囲まれたヒマラヤの国。国民総幸福量という指標を導入し、「世界一幸せな国」などとも呼ばれる。日本の皇室との縁も深く、今月初めには眞子様がブータンを訪問されている。しかしその一方で少数民族に対し民族浄化政策を実施し、76万5000人の人口に対して10万人以上という大量の難民を出している国でもある。闇のない国などない。

 その小国ブータンが、領土問題で中国に抗議した。領土係争地域で中国が一方的に道路の開発を行っていることを問題視したのだ。世界一幸せな国でも領土問題は譲れないのだろう。もっとも、ブータンはいまどき中国と正式な国交を結んでいない国である。国連には加盟しているのに、国境を接する隣国である常任理事国と正式な国交を結んでいないというのは、また変わったことをする。しかも、台湾とも国交を結んでいない。立場的には「一つの中国」を支持しているらしい。おかしな国だ。

 ではその国交を結んでいない中国に対してどうやって抗議をしたのかというと、もう一つの隣国であるインド――インドとは国交を結んでいる――に駐在する外交使節を通じて接触が持たれているらしい。普通に考えて大使館とか総領事館だろう。その辺を明らかにしないところも変な国だ。まあ、ブータンは事実上インドの属国であるとも言われているし、対中国で独自の外交を行うことなど許されていないのかもしれないが。

 なお、中国が何故ブータンとの国境で道路を作っているのかというと、どうもこの辺で冬虫夏草が取れるらしいという話がある。本当かどうかは知らないが。サイの角といいセンザンコウの肉といい、中国人の漢方にかける情熱はちょっと常軌を逸している。いずれ国を傾けるかもしれない。


 ラプトルと言えばジュラシック・パークシリーズで有名なヴェロキラプトルを思い起こす人は多いだろうが、恐竜好きならオビラプトルの方が先に出て来る人もいるだろう。オビラプトルとは「卵泥棒」という意味であり、その化石が大量の卵の化石とともに発掘されたためにつけられた名前である。当初その卵の化石はプロトケラトプスのものと考えられていたのだが、実はそれはオビラプトルの卵で、抱卵の最中に死亡し、化石となったらしいことが後に確認された。

 中国とフランスの研究チームの発表した論文によると、オビラプトルの抱卵温度――要は卵を何℃で暖めるかという温度――は35℃から40℃、現代のニワトリが37.5℃なので、ほぼ同程度ということがわかったという。これは小型獣脚類の恒温動物説を後押しするものである。卵を体温によって温めていたということは、単に体温を高くできたというだけでなく、それを安定して保ち続けることができたということでもあるからだ。オビラプトルは全身が羽毛に覆われていたことがわかっている。空は飛べなかったが、それ以外は現生鳥類に近い体の構造を持った生物だったのかも知れない。夢の広がる話である。


 自分は銃器類が好きである。しかし実際に撃ったことがない。よって小説に銃器を登場させたとしても、それはすべて想像や他の資料の受け売りでしかない。そんな自分ではあるが、それでも「いくら何でもそれはわかるだろう」と思う事件がたまに起きる。

 アメリカ・ミネソタ州の女が、恋人を射殺した容疑で逮捕された。痴話喧嘩の末に、というならまだ話はわかるのだが、どうやらこの二人、YouTubeに動画を上げるために銃を撃ったらしい。どういうことかというと、ハードカバーの百科事典を胸の前に構えた男性を、女が銃で撃つ、すると銃弾は百科事典の中で止まって、男性は無事生還、という動画を撮りたかったらしいのだ。ただ運の悪いことに、というか、間の悪いことに、というか、いややっぱり頭の悪いことにと言うべきだろう、使った銃は50口径のデザートイーグルだった。

 普通わかるよね。わかるはずだよね。何でわからなかったんだろう。まさか生まれて初めて銃に触ったのか。百科事典で止められる銃なんて、普通に考えたら22口径くらいがせいぜいじゃないのか。それでも今回のように30センチの至近距離から撃てば危ないと思うだろう。38口径で既に無理じゃないのか。何故いきなり50口径の、現在の自動拳銃では最強と言われるデザートイーグルを使っちゃったのか。

 50AE弾はダーティ・ハリーの44マグナムよりでかいんだよ。何故ハンドガンではなくハンドキャノンと言われているような銃を使っちゃったのか。何故百科事典で止まると思えちゃったのか。「世の中には想像を超える馬鹿がいる」とは知っていたつもりだったけど、いくら何でもこれはない。お悔やみを言う気にもならない。何とも悲惨な話である。


 ミンダナオ島でIS傘下のイスラム過激派勢力との戦闘が続くフィリピンであるが、そんなフィリピンの下院議会で、ある法案が可決された。それは、全国民に国歌を「熱心に」歌うことを義務づける法案。この法律に違反すると、約11万円から22万円の罰金や、最大1年の禁錮刑が科せられる場合もあるという。ただし、熱心に歌っているかどうかの基準は定められていない。日本のテロ等準備罪では基準が曖昧であることが問題とされていたが、こちらの法律は曖昧などというものではなく、基準がない。政府が使いたいように自由に使えるのだ。なんとも豪気なことである。政府が気に入らない奴は逮捕したい放題ではないか。

 CNNの報道によれば、この法案は他にも

・全ての公立、私立学校の生徒は国歌を覚えること

・原曲に忠実に、楽器だけの場合は4分の2拍子、歌う場合は4分の4拍子、1分間に100~120拍のテンポで演奏すること

・全員起立し、国旗に注目すること。国旗がなければ楽団と指揮者に注目すること

・国歌を侮辱する行為は違反とみなすこと

・宗教上の理由で国歌を歌えない者は十分な敬意を払い、気を付けの姿勢を取ること

 などを定めているという。

 とは言え、この法案はまだ下院で可決されただけなので、成立にはこの後上院で審議・可決され、さらに大統領の署名が必要となる。ミンダナオ島の問題でただでさえ国民から厳しい視線を浴びている現状である。この法案は成立しない可能性もなくはない。実際ネット上の反応も散々らしい。

 提案した議員は「愛国心を養うのが法案の目的」と話しているらしいが、それならばこんな非常時ではなく、平時に提案すべきだったろう。どさくさ紛れの印象が強すぎる。

 自分は愛国心はないよりあった方が良いと考えるが、その養い方を政府に決められるのはあまり有り難いとは思わない。日本でもたまに政府が愛国心の養い方を決めよう的なことを言い出す輩がいるが、穏便に言って死ねと思う。自分の愛国心は自分の物であって、誰であっても口出しは許さない。愛国心とはそういう物だと思うのだが。

※ 闇のない国などないですし、ユートピアなんて存在しません。日本は諸外国に比べればマシと主張する人もいますが、それは日本人だからそう思うのであって、違う価値観の国から来ればそうは思えないでしょう。たいていの人は自分が生まれ育った環境に慣れ親しんでいる物ですから。それでも私は日本が大好きですけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?