二年前の日記 11/20

2017/11/20

 サウジアラビアとは「サウード家のアラビア国家」という意味で、その名の通りサウード家が代々国王を務めている。ただヨーロッパの王室や日本の皇室と比べて少し変わっているのが、王位継承権の順位が、王族により構成される、王位継承を協議するための『忠誠委員会』の判断によって決まるという点だろう。判断基準は知らないが、この忠誠委員会の判断によっては、王の弟ではなく、息子や甥に皇太子の地位が与えられることもあるのだ。

 今年の6月20日、サウジアラビアのナエフ皇太子(当時)は叔父でもあるサルマン国王に謁見した。そしてそこで突然皇太子解任を告げられる。サウジアラビアでは皇太子って解任されるものなのだ。日本人の感覚ではピンと来ない。代わりに皇太子に指名されたのが、国王の息子、ムハンマド副皇太子(当時)であった。

 さて今月4日、サウジの政財界で要職を務める王子――つまり王の弟や息子など――や有名実業家たち201人が突然逮捕された。容疑は汚職の疑いなど。指示を出したのはムハンマド新皇太子である。これに関連し、当局は財産を放棄すれば釈放を認めるとの条件を提示していると、18日までに欧米メディアは報じている。これはムハンマド皇太子がライバルを潰して権力基盤を固め、同時に資金も調達しようとしているのではないかと見られている。また王子たちは酷い虐待を受けているとの情報もある。

 ムハンマド皇太子には、あまり良い評判はないようだ。これまでにいくつかの役職を与えられたが、華々しい成功というのはないらしい。だが馬鹿な子ほど可愛いのだろうか、サルマン現国王の寵愛を受け、とうとう皇太子にまで登りつめた。その直後に今回の騒動である。能力のある人間に対するコンプレックスを感じる。

 無能に与えた権力は暴力へと変換される。このまま行けばムハンマド皇太子はいずれ国王となる。そうなればサウジアラビアには恐怖政治の嵐が吹き荒れるだろう。そしてそれは凋落の始まりである。また中東の勢力図が書き換えられる。すなわち新たな紛争の予兆となるに違いない。イランは高笑いをしているはずだ。果たして中東に平和が訪れる日はやってくるのだろうか。


 自分は高所恐怖症であるが、閉所恐怖症の傾向はない。どちらかと言えば、狭いところは好きな方である。だがこれは嫌だ。心底嫌だと思う。

 15日、44人の乗組員を乗せたアルゼンチン海軍の潜水艦サンファンが消息を絶った。海と空から捜索が行われているが、いまだ見つかっていない。少なくとも動力系にトラブルがあったのなら、この潜水艦は浮上するらしい。だが見つかっていないということは、浮上していないのだろう。つまり海の底で動けなくなっている可能性が高い。18日には救難信号を受信したとのことだが、位置の特定にはまだ至っていない。

 酸素とか食料とか、気になることはいくつもあるが、何よりもまず乗組員の精神状態が心配である。海の底の狭い密閉された空間で、身動きも取れずにただ救助を待つだけというのは、どれほど心細く怖いものなのだろう。想像するだけで気が狂いそうになる。自分の脆弱な精神では一日と耐えられそうにない。何とか一刻も早く、一分一秒でも早く見つけてやって欲しいと心より願う。


 今月6日(現地時間では5日)、トランプ大統領が日本に滞在中、アメリカのテキサス州にあるファースト・パプテスト教会で銃の乱射事件が起き、26人が殺害された。それを受けてテネシー州のファースト・ユナイテッド・メソジスト教会では、教会を守るための銃の利用方法を信者が話し合っていたのだという。この辺がいかにもアメリカ人らしいと思うところではあるのだが、それはさておき、その話し合いの最中、銃の取り扱いを説明していた男性の銃が暴発してしまった。結果2人が怪我をしたのだそうな。まあ、死人が出なくて良かったのではないか。

 ちなみに銃を暴発させてしまった男性は、81歳だという。銃の所持の是非はともかく、さすがに危ないだろう。老人にだって身を守る権利はあるのだろうが、銃を持った老人がその辺をウロウロしている様子を想像すると、まるでゾンビ映画さながらではないか。これを何とかしようと思わないアメリカ人の感性は、いささか理解に苦しむ。

 権利が重要なのもわかるが、権利だけが重要なのかとも思う。銃に怯えずに生活できることも大事なような気がするのだけれど、銃の所持こそがその願いを叶える唯一の方法なのだと信じている者には伝わるまい。難しい問題である。


 ジンバブエのムガベ大統領が辞任の要求に応じた、と昨日報道があった。その後大統領がテレビで演説を行ったのだが、そこで続投を表明したのだそうな。この期に及んでまだしがみつくか。

 おそらくはこの後、与党による弾劾手続きが開始されるはずである。普通に考えれば、ムガベ氏はどのみち辞任せざるを得ない。今ならばまだ血を見ずに亡命するなり何なり出来るものを、何故事態を混乱させる方向へ進もうとするのか。権力の座とはそれほどに魅力的なものなのか。まあ93歳だしな。もはや道理も欲望も損得勘定すらも消え去って執着しか残っていないのかも知れない。見ようによっては哀れな老人である。


※ サウジアラビアのムハンマド皇太子については、開放政策を取っているためか日本のメディアは持ち上げる傾向がありますが、ジャマル・カショギ氏の事件に見られるような残虐性こそ彼の本質ではないでしょうか。時として冷酷な人間は有能に見えるものです。
 アルゼンチンの潜水艦サンファン号は海底に沈んでいるのが翌年の11月に発見されました。しかし資金的・技術的な事を理由に引き揚げはされていません。この潜水艦をめぐっては様々な噂が流れているのですが、真相はいまだ闇の中です。

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