二年前の日記 4/29

2017/04/29

 以前フィアット創業者の孫がドラッグ代欲しさに狂言誘拐を企んだ話を書いたが、伝説的な創業者には駄目な孫が付きものなのかも知れない。

 エナジードリンクとして有名なレッドブルのタイ人創業者の孫に、タイ・バンコクの刑事裁判所は、バイクに乗っていた警察官をフェラーリでひき逃げした容疑で逮捕状を出した。そんな形で翼を授けてどうする。度重なる出頭要請に従わなかったということであるから、当初は検察も気を遣っていたのではあるまいか。しかし何やかやと言い訳をしてあまりにも要請に応じようとしないので、ブチ切れて逮捕状を請求した、というところだろうか。往生際が悪いのはこの先悪印象である。裁判でも不利に働くのではないか。

 日本のように保釈金を払えば保釈される制度がタイにもあるのかどうかは知らないが、それでも逃亡のおそれさえなければ、普通より短い期間で拘置所からは出してもらえるのではなかろうか。もちろん裁判で有罪になって収監されれば終わりなのだろうけれど、その辺はお祖父ちゃんやパパママが敏腕弁護士を雇ってくれるだろう。それに期待しておけ。

 とは言えひき逃げされた警察官は死亡したそうであるし、いかに資産家の孫とはいっても、大手を振って無罪放免とはなかなか行くまい。そんなことをすれば暴動が起きてもおかしくない。しばらくは臭い飯を食ってもらうしかないだろう。まあ刑務所から出た後の身元引受先に困る立場ではないのだし、多少のことは我慢するしかあるまい。人殺しと呼ばれながら元気に生きていけば良いのではないか。


 イギリスのタイムズ紙と調査会社が世論調査を実施した。「今から振り返ってみると、英国がEU離脱を決めたのは正しかったか、誤っていたか」という質問に対し、正しかったと答えた人の割合が43%、誤っていたと答えたのが45%だった。

 前回の調査と比較すると、正しかったと答えた人は3%減少し、誤っていたと答えた人は2%増加したという。時間が経つにつれ、人々の後悔の念が大きくなっている様子が垣間見える。

 もっとも同じ調査で、イギリスのEUからの完全な離脱、いわゆる「ハードブレグジット」を支持する人は43%であったのに対し、EUとの協定等でヨーロッパの単一市場にとどまり、EU内における移動の自由を保持する(自分たちも移動できるけど移民もやってくる)という、いわゆる「ソフトブレグジット」を支持する人は39%にとどまった。これはすなわち、「EUからの離脱を決めたことは後悔してるけど移民には来て欲しくない」と思っている人々が少なからずいるということであろう。正直な気持ちだと思う。

 しかし残念なことに、世の中は正直なだけでは評価してくれない。「都合のいいことばっかぬかしてんじゃねーよ。自分が自由に動きたいなら移民も受け入れろ」と言われてしまうのがオチである。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』には、国家は想像上の産物であると書かれてある。だがそれでも、そんな国家でも――いやそれだからこそなのだろうか――維持したいと思うのなら決断は必要である。

 イギリスのEU離脱が正しい判断だったのかどうかはしばらく経たなければわからないだろう。しかしその明確な意思は目標を明らかにしてくれる。国を守るには痛みが伴う。それを厭うては何も始まらないのだ。


 おっかのうっえっ ひっなげしのっ 鼻毛~ で有名なアグネス・チャン氏――最近は別の方面でとみに有名であるが――に対し、香港の次期行政長官が教育局長への就任を要請したという。まあ香港の行政長官と言っても要は中国共産党の傀儡であるから、中共からの要請と言っても間違いではない。一国二制度などというものは既に崩壊しているのだ。

 この件についてアグネス氏は明確な回答を避けているが、「全ての人が望むならどんなポストにでも就きたい」とは言っているので、要請を即座に断るつもりはないらしい。条件とか待遇とか、自分が満足できる受け入れ体制が整うのであれば要請を受けるということではなかろうか。国のため社会のため子供のためと建前を用意されただけで従ってしまう奴隷趣味の日本人は、少し見習った方がいいのかも知れない。自分で自分を守るというのは大切である。

 しかしアグネス氏が教育局長(文部科学大臣みたいなものである)になったら香港は変わるのだろうか。「スタンフォード大にあらずんば人にあらず」みたいなことを言い出して、超学歴社会になったりしないだろうか。言うまでもなくこれは偏見であるが。


 アメリカのジョージア州アトランタといえば1996年のオリンピック開催地であるが、そこで開かれた全米ライフル協会の年次総会において、トランプ大統領が演説し、自身を全米ライフル協会の「真の友人で擁護者」と呼んだらしい。

 日本で保守派の票が欲しければ、靖国神社にでも参拝すれば手っ取り早いが、アメリカで保守派の票を得ようと思えば、全米ライフル協会を支持するのが簡単である。トランプ氏は以前から全米ライフル協会を支持してきたし、全米ライフル協会も、大統領選挙のかなり早い段階からトランプ氏を応援してきた。いわば盟友である。レーガン大統領以来35年ぶりとなる演説も、むべなるかな、といった感じであろうか。

 言うまでもなく、トランプ大統領は銃規制に反対である。今回の演説でも、「米国民の大統領として、人々が銃を所持する権利は絶対に侵害しない」と宣言した。アメリカ国内の銃の規制は、これから4年で一気に後退するだろう。大変だなあ、とは思うものの、所詮は他人事である。

 日本人の一人としては、トランプ大統領には北朝鮮政策の舵取りを間違わないでくれれば、あと貿易関係で聞く耳を持ってくれれば、他はそれほど期待しない。とりあえずアメリカ国内で内乱が起きるようなことがなければ、それでいいのではないか。随分と低いハードルのような気もするが、ないものねだりをしても始まらない。アメリカ人が選んだのだから、アメリカ人がなんとかするだろう。日本人には遠目で眺めることしかできないのだ。

※ 上級国民の問題は、実のところ世界中にあるのだろうなとは思います。話題のあの人が上級国民かどうかはまた別の問題として。レッドブル創業者の孫は結局逃亡して国際手配とかされたのですが、亡くなった警察官の遺族と示談が成立した後は音沙汰なしとなっています。
 この時点ではブレグジットにここまで時間がかかるとは思ってなかったのですが、いったいいつ離脱するんでしょうね。本当に出来るんですかね。
 アグネス氏は結局断りましたね。まあ中国の内側に取り込まれるのは、さすがに怖いのでしょう。
 全米ライフル協会はいま、権力闘争の真っ最中のようです。現在の会長が再選を目指さない事を発表しました。事実上の追放だと言えます。現会長のノース氏はレーガン政権の「イラン・コントラ事件」で有名になった人で、共和党ともトランプ大統領とも近しい人でした。この先どうなるんでしょうか。まあ協会自体は変わらず共和党の票田になるのでしょうが。

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