二年前の日記 9/25

2017/09/25

 小説でも漫画でもアニメでも、鳴り物入りで登場した新キャラが碌に活躍することなく空気になってしまうのはありがちであるが、現実世界でそうなってしまっていると言えばマイナンバーカードであろう。

 自分もマイナンバーカードは持っている。しかし使ったと言えるのはコンビニで住民票を取ったとき、その1回だけである。いろんな申請用紙にマイナンバーを書き込んだことは何度もあるが、そもそもマイナンバーカードがあるのに手で書き込まなければいけないというのが変だとは誰も思わないのだろうか。不思議な話である。 

 さて、そのマイナンバーカードに新たな使い道ができるという。普通は必要性があって新しい物を作るのだが、作ってから使い道を用意するというのは一般に泥縄という。まあそれでも使い道がないよりはあった方が良い。どんな使い道かと言えば、自治体のボランティアなどに参加したとき、自治体ポイントがつくようにするのだそうな。それをマイナンバーカードに貯めて、特設サイトで自治体の特産品などを買えるようにするのだという。

 ……そんなもん、誰が使うんじゃボケェッ!……と思わないこともない。怒っても仕方ないのだが。まあ利用者がゼロということはないだろう。自治体の関係者は利用するかもしれないし、興味本位で使ってみようと思う者もいるだろうから。

 だが、それでマイナンバーカードが一層普及するほどの効果が得られるような、そんな良い物ばかりが集まった使いやすい買い物サイトが、果たして自治体に作れるのかと考えてみると、まず無理である。日本の地方自治体にそれができるのであれば、Amazonがここまで一人勝ちする訳がない。商売でwebの開発をやってる人間が集まった楽天でも勝てないのである。

 自治体が買い物サイトを作るとなれば、楽天よりも小規模な、いわゆる「ホームページ作成業者」に投げて作らせるのがせいぜいであろう。いまどきのサイトだから買い物カートくらいは使えるだろうが、支払いが自治体ポイントのみとなると、イロイロと面倒なのではないか。下手をすると買い物するたびにマイナンバーを手打ちで入力しなければならないとか、そんなクソサイトになるおそれもある。

 だいたい自治体ポイントを得ようとするのにボランティア活動しなければならないというのはどうよ。ボランティアにメリットを作るというのは悪い発想ではないが、毎日仕事に追われてボランティア活動などできない人もたくさんいるということを忘れているのではあるまいか。どうも自治体目線で、「役に立ったヤツにだけポイントをくれてやる」と言われているような気がしてならない。

 もっと自治体のエリア内で買い物したり、納税したり、そういったことでもポイントをつけるべきだろうし、特設の買い物サイト以外でもそのポイントを使えるようにするべきだ。そこまでして、やっとスタートラインではないか。日本の役人は真面目で有能だが、見通しが甘い。役所同士の関係にばかり目が行って、現実的な判断が出来ていない気がする。せめて確定申告をもっと簡単にできるようになれば、マイナンバーカードの存在意義も高まるのであろうが。


 さて、今日25日には安倍首相が解散を表明する、ということになっている。安倍首相本人は解散を表明するとも何とも言っていないのだが、もうそういうことになってしまっている。不思議な話である。で、普通総選挙といえば争点や公約が問われるものなのであるが、何故か今回は「大義」とやらが重要らしい。これまで生きてきて、何度も選挙には足を運んだが、大義が問われた選挙などというものは見たことがない。デジタル大辞泉によると、大義とは、

1. 人として守るべき道義。国家・君主への忠義、親への孝行など。「大義に殉じる」

2 .重要な意義。大切な事柄。「自由平等の大義を説く」

 とあるのだが、マスコミのいう大義はどちらの意味なのだろう。おそらくは漠然と使っているのだろうけれど、毎日新聞や朝日新聞が「国家・君主への忠義」などと言い出すことは多分ないはずなので、大事な意義や正義といったものをひっくるめて大義と言い表しているのかもしれない。つまり今回の解散総選挙には正義がないと言いたい訳だ。

 しかし政権が国民に対し信を問うことに正義がないと言うのもおかしな話である。これが信を問うべきことがあるのに意地でも解散せず己の立場にしがみついている、というのなら正義はないと言われても仕方ないのかも知れないが、「今の政府にはこんなに問題があるんですよ」と騒ぎ立てるだけ騒ぎ立てた者たちが、「でも国民に信を問うことに正義はない」と主張するのは、まったく意味がわからない。

「こんな北朝鮮情勢が危機的なときに解散なんて」

 と言うのなら、何故これまで北朝鮮情勢を話し合って来なかったのか。森友問題や加計問題を追及するなとは言わないが、半分くらいの時間は北朝鮮の問題に回しても良かったのではないか。何故そうしなかったのか。それが国民の目にどう映るかどうして考えなかったのか。その挙げ句、選挙になったら政府が悪い政府が悪いばかりで自分たちに何が出来るかの声すら上げられない。前にも書いたが、いまは野党にとって千載一遇のチャンスなのだ。選挙ならば国民に直接声が届くだろう。ここで自分たちの主張を声に出さないでどうする。

 民進党の前原代表は「安倍政権が続くことは、日本にとっての不幸であり、体を呈し、どんな手段をもってしてでも、安倍政権を止めなければならない」と昨日話したそうだが、まだそんなことを言っているのかという気がする。国民が求めているのはそういう言葉ではないのだ。自分たちが政権を取ったなら、こういうことが出来る、こういうことを実現してみせる、その言葉を待っているのに、いつまでたっても安倍政権のことしか見ていない。恋する乙女でもあるまいに、解散が決まろうとしているこの期に及んでである。何とも情けない限り。

 おそらくは今回の選挙で、野党第一党は「希望の党」になるだろう。民進党は存在意義を失う。そのときになって「どうしてこんなことに」と嘆いても遅いのだが。


 その希望の党には民進党や自民党から離党者が集まり、「日本のこころ」などは党まるごと参加するらしい。参加というか傘下というか、「軍門に降った」と言えばいいのか、まあとにかく今回の解散総選挙で国会議員として生き残るためにはそれしかないと思ったのだろう。本人たちは目端が利いているつもりなのかもしれないが、あまり長生きは出来そうにない気がする。

 少なくとも有権者からの印象はよろしくない。いったい何処を向いて政治家をやっているのか。背に腹は代えられないとでも言うつもりなのか。曲がりなりにも国民の代表である。もう少し敬意の持てる行動をして欲しいのだが、やはり目先の金や権力には飛びついてしまうのだろう。そこに餓鬼の如き浅ましさを感じてしまうのもやんぬるかな。まあ、有権者の一人としては、粛々と投票をすれば良いだけである。行動で示そう。


※ 自治体ポイント制度はすでに始まっている……らしいのですが、利用した事のある人なんて居るのでしょうか。国民の大半が知らないような気がしないでもないのですが。だいたい、マイキーIDを取得した上に、いちいちマイナンバーカードをカードリーダーに差し込まなければ、売ってる商品すら見る事が出来ないサイトなんて、存在する意味があるのかとさえ思ってしまいます。マイナンバーカードの利用を広めようなんて、本気で考えていないのが丸わかりです。
 希望の党は、まあアレですね。日本のこころは党まるごと参加したのではなくて、党首が離党して希望の党入りしました。実際政界に与えた影響は大差ないのですけど。

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