二年前の日記 8/29

2017/08/29

「泰平の眠りを覚ます上喜撰たつた四杯で夜も眠れず」というのは幕末の狂歌である。「夜も寝られず」が正しいという話もあるが、それは本題ではない。これは黒船(蒸気船)4隻が浦賀に現れたときの幕府の慌てふためきぶりを詠んだ歌なのだが、今朝のJアラート騒動はまさにこういう感じではなかっただろうか。

 ミサイルに対する備えは必要である。ミサイル飛来に関する政府広報もイロイロ言われてはいるが、知識のある人からは、そんなにトンチンカンなことは言っていないとの評価もある。現状に対処しようと沢山の人が頑張っている、それはわかる。わかるのだが。

 どうもアレだ。細かい連携が取れていないのが目に付く。それはおそらく、日本がミサイル攻撃される危険性をひしひしと感じている人と、まだ実感が湧かないので言われたことだけとりあえずやってる人の温度差が生み出すギャップが原因ではないかと思う。まあこれは現段階では仕方ない。いずれどこかにミサイルが落ちて人が沢山死ねば対応も変わってくるだろう。

「人が死ななければ何も動かないのか」と怒る方もいようが、それは今に始まったことではないし、まだ人が死なないうちから「北朝鮮は敵国だ!ムキ―ッ!」と日本人全員が同じ方を向いたりしたら、それはそれで怖いことだ。過渡期というのはこういうものであろう。もう少し時間をかけ、回数をこなして行けば、みんな適切な対応が出来るようになるに違いない。それは決して喜ぶべき状況ではないのだけれど。


 イギリス南東部イーストサセックス州の観光地バーリング・ギャップの海岸で、27日霧が発生した。その霧に包まれた人々は息苦しさや目の痛みを訴え、嘔吐する者もいたという。結果100人以上が病院に運ばれた。霧は強い塩素臭がしたとのことで、この「化学物質の霧」がなぜ発生したのか、警察が捜査しているらしい。

 過去には海峡の対岸に位置するフランスの化学工場から漏れ出した化学物質が同様の現象を起こした原因であったこともあるというが、イーストサセックス州の消防によれば、霧が塩素を含んでいた蓋然性は低いそうだ。警察も人体への影響は深刻ではなかったと発表している。

 さて、これは本当に「化学物質の霧」だったのだろうか。どうも怪しい。以前に一度化学物質の漏洩事件があったことを知っていた人々が、ありもしない塩素臭を感じ取ってしまった、などということもあるかもしれない。ある種の集団ヒステリーだ。『ミスト』や『ザ・フォッグ』などという映画(どちらも見ていないが)があることからもわかるように、欧米人は霧というものにある種の畏怖を感じるというか、歴史的に特別な思い入れがあるのではないかと思う。それがマイナス方向に作用すれば、このような事件が起きるのではなかろうか。知らんけど。知らんのかい。

 まあ真実はどうあれ、パニックにならなかったのは幸いである。何事も結果オーライなのだ。


 自分は人生においてまともな職業に就いていた期間の方が短い。まともな職業とは何ぞやという話になるとまた長くなるのだろうが、自分の目から見れば、『会社員』とは『スーパーマン』に近いものがある。とてもではないが務まらないとしか思えないのだ。

 さて、イギリスにおける調査によると、失業者が職を見つけても、その環境が悪ければ身体的ストレス度は失業したままでいるより高く、身体への健康リスクはより深刻であるという結果が出たらしい。何を今さら。

 失業状態では確かにストレスは溜まる。明日からどうしよう、これから生きていけるのだろうか、常にそんな心配をしなければならない。明日の食費を出すために何を削ろう、何を我慢しよう、そんなことばかり考えていて、気分が明るくなること、楽しくなることを思いつけるはずもない。ただ一方的に落ち込んでいくだけである。

 だが職に就いたとき――職が見つかった瞬間は嬉しいのだが――そのプレッシャーからくるストレスの大きさは、失業状態のそれを上回る。せっかく雇ってもらえたのに、期待に応えられなかったらどうしよう、それを思うだけで食事も喉を通らなくなる。夜も眠れなくなる。それはある意味当たり前だと思っていたのだが。

 まあそんなことばかり考えているから、まともな職場で続かないというのはあるかもしれない。生まれつき会社員に向いていないのだ、そう思うことで自分を慰めている。とはいえそれで済まない人もいよう。ストレスがより強くなり、より健康リスクが高くなるとわかっていながら劣悪な環境で働かざるを得ない人も世の中にはいるのだ。こういった調査結果がそういう人々の一助になれば良いのだろうが。


 アメリカを襲った大型ハリケーン『ハービー』は熱帯低気圧に変わったが、テキサス州に留まり、豪雨を降らせている。NASAの宇宙センターで有名なヒューストンでは洪水が発生、冠水した250の道路が封鎖され、1000人以上が救助されたという。と言ってもこれは27日の情報なので、当然現在の被害はもっと増えていることだろう。ハービーはいまだにヒューストンにいるのだから。

 こんな状況があるので、いまトランプ大統領は北朝鮮のミサイルどころではない。曲がりなりにも「アメリカ・ファースト」で当選した大統領である。たとえ嘘でもヒューストンを第一に心配しなくてはならない。日本政府としては苛立たしい状態だろう。だが泣く子も地頭も天変地異には勝てないのだ。同盟国の住人としては、アメリカ国民に被害の少なからんことを祈ろう。


 羽田孜元首相が28日、82歳で死去した。老衰だったという。82歳で老衰って、そんなものなのか。うちの母親は79歳でガンで亡くなったが、あと3年持てば老衰で死ねたのだろうか。どうもイメージが湧かない。今時の人としては、82歳で老衰というのはちょっと早いのではないだろうか。

 しかし正直に言うと、この人は印象にないな。経歴を見れば大変に有能な人物であることは見て取れるのだが、これといって印象に残っていない。顔は確かに知っているけれど、それだけである。首相在位期間が戦後最短であるらしいが、それ以前の問題のような気がする。省エネルックの生みの親だと言われれば、ああ、そんなものもあったなあ、と思い出されるのではあるが。

 きっと善良な人物だったのだろう。高潔な人と言った方が良いのか。しかし魑魅魍魎が蠢く政治の世界で、高潔で善良で有能な人物など便利屋として使われておしまいではないのか。濁った水の中を上手に泳ごうとして、泳げずに終わってしまった人のような気がする。ご遺族の方々にはお悔やみ申し上げる。


※ 2年前は北朝鮮のミサイルで、さも戦争前夜であるかのような雰囲気でした。たった2年で状況は随分変わりましたね。トランプ大統領は嫌いなのですが、この時点で戦争に突き進まなかったのは、トランプ氏がアメリカ大統領であったからかも知れません。その点は評価すべきだと思います。

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