二年前の日記 7/31

2017/07/31

 北海道のベンチャー企業インターステラテクノロジズ社が民間初の打ち上げを目指していた小型ロケット「MOMO」。発射は何度か延期になり、30日に発射されたものの、約80秒後に機体からの通信が途絶、エンジンを緊急停止した。結果としては宇宙空間には達しなかった。

 とは言え、初挑戦である。発射されたが飛び上がることもできず、横倒しになって爆発したロケットの映像を見たことのある人も多かろう。当時と現代ではデータの蓄積量もコンピュータの性能も段違いではあるが、国家プロジェクトでもああいう結果になった歴史もあるのだ。初のチャレンジで飛べただけでも大したものではなかろうか。北朝鮮のミサイルを例に挙げるのは失礼かもしれないが、実際に飛ばして失敗のデータを蓄積すれば、いずれ成功するのは歴史が証明している。次回に大いに期待したい。

 何より、ロケット1発5000万円くらいだというのが良い。もちろん5000万円は自分の金銭感覚においてはもの凄い金額ではあるが、国が種子島から打ち上げるロケットの10分の1である。打ち上げが成功するようになれば、ビジネスとしても成功する確率は高くなる。地方の地場産業としてロケット開発があるというのはなかなか面白いし、観光の目玉にもなる。実際今回も近隣の宿泊施設は満杯になったという。良いことずくめではないか。これからも頑張って欲しいと思う。

 なお、朝日新聞を始めとする一部報道が「ホリエモンロケット」と書いているが、ホリエモンはインターステラテクノロジズ社に出資し、会社の立ち上げに尽力しはしたが、別にホリエモンの技術力でロケットが飛ぶ訳ではないし、ロケットの側面にホリエモンの絵が描いてある訳でもない。ポケモンジェットとは違うのだ。ホリエモンロケットという書き方には、そこはかとない底意地の悪さを感じる。こういう大人にはなりたくないものである。


 ヒアリが話題になっている昨今、毒を持つのは外来生物であるかのように思い込んでいる人もいるのではなかろうか。しかし日本に古来から居る生物にも、毒を持つものは少なくない。スズメバチを筆頭に多くのハチの仲間が毒を持っているし、ベニテングタケをはじめとする毒キノコもたくさんある。そして何より危険度が高いのが毒蛇だ。沖縄にはハブやウミヘビの仲間がいるし、本州を中心とした広い地域にマムシがいる。そして、ちょっとマイナーだがヤマカガシもまた毒をもった蛇である。

 29日の夕方6時頃、兵庫県伊丹市の公園で、小学5年生の男児が手首をヤマカガシと見られる毒蛇に咬まれた。その後家に帰ったものの出血が止まらず頭痛を訴えたため救急搬送したが、一時意識不明の重体となった。現在は意識を取り戻しているらしい。蛇の毒は血清を打たねば命に関わる。そしてヤマカガシ用の血清は、どこの病院にもあるというものではない。いまどき蛇に咬まれる人など滅多にいないからだ。助かったこの男児は運が良かったと言えるだろう。

 いまは身の回りに自然が少なくなったために、人々の生き物に対する関心が薄い。ヤマカガシという毒蛇が身近にいることなど、知らない大人も多いのだろう。ヤマカガシは非常に温厚な種類の蛇で、無闇やたらと咬みつくことはない。その存在を知ってさえいれば、そう恐れるような生き物ではなく、人間側にその気がありさえすれば、充分に共存できる蛇である。ヒアリとはまったく違うのだ。今回のことでヤマカガシを滅殺しようなどという動きが出てこないことを祈る。


 笑いというのは難しいものだ。創作において笑いを取りに行くには、一番簡単な方法として、非常識なキャラクターを登場させるというのがある。常識を理解できない人物を動き回らせることで騒動を起こし、それを読者に笑わせるというものだ。天才バカボンなど赤塚漫画がこのタイプだが、この笑いは差別と非常に距離が近い。現代においては諸刃の剣かもしれない。

 もう一つ基本的な笑いは他人を見下す人物を使う方法だ。他人を蔑み、あからさまに見下すような人物の揚げ足を取ってみせて笑いものにする。こういう笑いは爽快感もあるし、非難されにくい。将軍や金持ちをトンチでやりこめる一休さんなどがこのタイプだが、やり過ぎると正義の味方気取りが鼻につく。アンチがつきやすい笑いでもある。

 さて、アラスカ沖を遊覧していた豪華客船「エメラルド・プリンセス」において殺人事件が起きた。客室で夫が妻を殺害したのだが、その理由が、「妻が笑うのをやめなかったため」らしい。どうやら夫のことを笑いものにしたようだ。

 もちろん夫婦であるから、それまでの生活の中でイロイロ不満も溜まっていたのだろう。笑ったことそれだけが殺した理由ではないのだろうとは思うが、引き金にはなってしまった。他人を――家族であっても自分以外は他人だ――笑いものにするというのは、自分の命に関わってくる行為なのだと認識しておく必要はある。まして特定の病気の、あるいは障害を負った、もしくは政治思想の偏った人々を笑いものにしていると、いつ殺されるか知れたものではない。思い当たる人は充分に注意しておくべきであろう。と、まるで他人事のように書いてみる。

※ MOMOは今年の5月に3号機が宇宙空間に到達しました。難しい事は多いのでしょうが、未来に希望の持てる話です。頑張っていただきたいと思います。
 ヤマカガシは昔はその辺の草むらに居たのですが、昨今はとんと珍しくなってしまいました。ヤマカガシ自体を好きになれとは言いませんが、ヤマカガシが暮らせる環境は守ってもらいたいものです。
 他人を笑うのは怖いですね。なるべくやめておいた方が良いとは思うのですが、どうしても他人を笑いたい人というのは居るようです。特に政治的傾向が違う人を笑いものにしているのはよく見かけます。何の意味もないと思うのですけどねえ。

 なお、私事ではありますが、noteにも投稿している『強請り屋 静寂のイカロス』が、アルファポリスの『第2回ホラー・ミステリー小説大賞』において、特別賞を授賞いたしました。読んでいただいた方にはお礼申し上げます。ええ、まあ宣伝なのですが。

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