二年前の日記 9/29

2017/09/29

 白い着物を着て胸に鏡を吊し、一本歯の高下駄を履いたら頭に五徳をかぶり、そこに3本の火のついたロウソクを立てる。この姿で午前2時に神社に参り、神木に藁人形を五寸釘で打ち付ける。これを7晩続ける。というのがいわゆる丑の刻参りの基本ルールである。

 基本であるから地方によっては違うバリエーションも存在するだろうし、そもそも丑の刻参りを7晩続けたからといって、相手が呪い殺されてくれる保証はない。さらにこのルールには前提条件があり、一度でも他人に見られたら呪いの効果は消えてしまうという。こんな予防線を張って言い訳を用意している時点で、普通に考えて効果の程は期待できない。

 ならば呪いなどこの世に存在しないのか、という点については京極夏彦氏の京極堂シリーズでも読んでもらうとして、端的に言えば呪いはある。自分が呪われていることを知りショックを受けた場合、それが精神的トラウマになる人もいる。己の行動を左右する要因の一つになる者もいよう。人によっては病んでしまうこともある。それらが巡り巡っていずれ死に至れば、呪いは成就する訳である。そう考えると、たかが藁人形と笑って済ませられるものでもない。

 東京都江戸川区の無職の41歳の男が逮捕された。容疑は脅迫。何をしたかと言えば、小学校の通学路の歩道橋の手すりに「クソがきどもここからとびおりてみんな死ね」と書いた紙を貼った藁人形を吊したのだという。警察の調べに対し男は、「公園で騒ぐ子どもの声がうるさかった」と述べているらしい。この言い訳もいい加減聞き飽きた。もっと別の理由を探してはくれないものか。面白くない。

 しかし良かったではないか。刑務所の中は子供の声が聞こえない。うるさい思いをしなくて済む。おまけに仕事もあるし、この男にとっては理想的ではないだろうか。まあ執行猶予がついてしまう場合もあるのだが。

 なお、呪いを放ったこの男が、警察に捕まったショックで精神を病み自殺などした場合、それは呪い返しとなる。呪詛返しとも言う。すなわち呪いは諸刃の剣であるのだ。安易に手を出すものではない。


 マクラーレン・オートモーティブはイギリスの超高級スポーツカーメーカーである。そのスパイダーモデル(要するにオープンカー)には570Sスパイダー、675LTスパイダー、650Sスパイダーなどがある。安くて3000万円というお値段、自分などにはまったく縁の無い世界の車だ。

 さて、そのうちどれかは不明だが、とにかくマクラーレンのスパイダーがドイツの中部ヘッセン州で駐車場に止まっていた。そこに運転手が戻ってきてみると、後部の塗装がはげている。誰がやったのか。容疑者はなんと、駐車場に隣接する小さな牧場にいた、ロバの「フィータス」だった。このフィータスがオレンジ色のマクラーレン・スパイダーを「ニンジンと勘違いして」かじったのではないかということだ。

 本当か? ちょっと出来すぎた話のような気がする。だいたいロバは色だけで餌と判断するような生き物なのだろうか。しかし地元の警察はそう言い、裁判所もフィータスの飼い主に5800ユーロ(約77万円)の支払いを命じた。さすがに歯形の検証くらいはしているだろうし、犯人はフィータスで間違いないのかも知れないが、何とも釈然としない話である。

 スピードでは世界に冠たるマクラーレンの車も、塗装に関してはロバに負ける。ロバより弱いマクラーレン(こいのぼりの節で)。世の中、何処で誰に敗北するかわかったものではないな。


 さて、民進党が合流することで話題となった希望の党、次の話題は小池代表が都知事を辞任して衆議院議員選挙に出るかどうかというところだが、自分は今回は出ないんじゃないかと思う。

 自民党としては出て欲しかろう。就任して1年かそこらで知事の職を放り出した人間が党首ともなれば、攻撃しやすいのだから。だがそれが読めないほど小池百合子氏も馬鹿ではないと思う。都知事のままでいた方が、少なくとも関東域での希望の党の得票率は上がるに違いない。

 今回の選挙以後の、次の選挙、その次の選挙を考えれば、地盤固めは必要である。とりあえず1期目の任期くらいは全うするのではないか。果たしてオリンピックまで都知事をやっているかは微妙なところではあるが、せめて豊洲の件に道筋だけでもつけておかないと、「何もしていない」という批判からは逃れることはできまい。

 国政に復帰し首相を目指すのであれば、都知事時代に何か一つでも功績を残し、箔をつけたいところである。よって今回の選挙での小池氏の国政復帰はないと自分は見ている。

 ただ、果たして希望の党に次の選挙、その次の選挙を戦えるだけの力があるのか、という問題点はある。今回の選挙で力を使い果たし、次回の選挙以降では議席を減らし続けるのではないか、そう思っているのは自分だけではあるまい。ならば小池氏にとって、今回の選挙は首相になれる最後のチャンスかも知れない。

 もし小池氏自身がそう思っているのなら、ここで都知事を辞任して衆議院議員選挙に出馬するという大博打に出ることも考えられる。考えられるのだが、まあ7:3で無いな、というのが自分の見方である。さすがにそこまで短絡的ではなかろうと思うのだ。


※ 小池百合子氏は結局衆院選には出馬せず、いまでも東京都知事です。これが都民にとって良かったのか悪かったのか。とりあえず希望の党は衆議院選挙で50議席を獲得したものの、その後はご承知の通り、分裂し消滅してしまいました。徒花にも程がありますね。いま、旧民主党勢力が再合流しようとしていますけど、どうせまた同じことを繰り返すだけでしょう。何の期待もできません。何とかならないものでしょうか。

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